第二次黄金期【ゲーム音楽史08】

ゲーム音楽史では前回、スーパーファミコン登場と対戦格闘ゲームブームの始まりあたりまでをみてきました。

その後、スーパーファミコンを中心にゲーム音楽が素晴らしく充実した時代がありました。クロノトリガー メインテーマの記事でも触れていますが、1994年から1995年頃の事です。

この時代をゲーム音楽の「第二次黄金期」として、今回の記事を書いていこうと思います。

スーパーファミコン後期の充実期

1990年末に発売されたスーパーファミコンは、ファミコンのシェアを引き継ぐことに成功して初期段階からゲーム内容も音楽もかなり充実していましたが、特にゲーム音楽に関して1994年ごろから充実ぶりが加速、1995年にピークを迎えます。

おそらくゲーム業界が一番儲かった時代であり、ゲームソフト単価も高騰。ゲームバブルの様相を呈していました。

ゲームメーカーも音楽の重要性は十分に認識していたので、スーパーファミコンソフトの売り上げ利益による潤沢な資金で優秀な人材を発掘育成することができました。

ゲーム音楽の発展にとっては理想的な状況だったと思います。

そんな時代「第二次黄金期」のゲーム音楽を紹介していきますが、まずは立役者となったスーパーファミコンを中心としたコンシューマー機のタイトルから見ていきましょう。

※MD=メガドライブ、SFC=スーパーファミコン、PCE=PCエンジン、ここではプレステとサターンのタイトルは除外。発売順に列挙。

バンパイアキラー(MD、コナミ)
山根ミチルさんの悪魔城作品第1弾。FM音源ですが、楽曲は個人的に悪魔城シリーズの中でも1、2を争う出来だと思います。この作品聴いて山根さんファンになりました。

ファイナルファンタジー6(SFC、スクウェア)
音楽はもちろん植松伸夫さん。SFC版FFシリーズの音楽は4、5、6全て良いですよね。6も「ティナのテーマ」「仲間を求めて」「甦る緑」など名曲多数ですが、大作「妖星乱舞」が聴きごたえあります。

天使の詩2(PCE、日本テレネット)
なるけみちこさん作品。ラスボスのテーマは良いです!

ライブアライブ(SFC、スクウェア)
下村陽子さんのワールドワイドな音楽性が如何なく発揮された名作。

ヘラクレスの栄光4(SFC、データイースト)
隠れたゲーム音楽名作。「Descendents of Atlantis」が好きです。

かまいたちの夜(SFC、チュンソフト)
ゲーム音楽としては超名作。チュンソフトのサウンドノベルは『弟切草』もかなりはまりましたが、音楽は第2作の『かまいたちの夜』のほうが印象に残っています。ゲームの舞台が冬なので、全体に冬のイメージの曲が中心ですね。以前演奏した「懐かしいあの風景」は個人的には晩夏のイメージですが。

エストポリス伝記2(SFC、タイトー)
塩生康範さん作品。クサメロ好きにはたまらないですね。

魔神転生2(SFC、アトラス)
魔神転生シリーズは女神転生の派生作品でシミュレーションRPGです。1も結構やったんですが、2のほうがはまりました。音楽は故・青木秀仁さんで、スーファミのテクノ系作品としては最高峰のものと思います。「Devil Dance」など、1からの曲も登場していて、アレンジの進化を楽しめました。

クロノトリガー
(SFC、スクウェア)
光田康典さん作品。ゲーム音楽史に輝く永遠の金字塔でしょう。

ラストバイブル3(SFC、アトラス)
ややマイナーですが個人的にゲーム音楽名作と思います。簗田裕之さんが作曲。ラストバイブルシリーズはもともとはゲームボーイで出ていたものですが、3だけはスーファミで発売されました。女神転生の外伝的作品で、低年齢層向けのライトなメガテンということで、後のデビル・チルドレンシリーズの前身的な位置付けでしょうか。

聖剣伝説3(SFC、スクウェア)
聖剣2とこれは菊田裕樹さんの代表作。楽曲クオリティが凄まじいです。

タクティクスオウガ(SFC、クエスト)
ゲーム自体も不朽の名作といえます。音楽は崎元仁さんと岩田匡治さんのコンビで、とくにオーケストラサウンドが秀逸でした。崎元さんは同時期にドラクエ6のサウンドエンジニアもやっているので、タクティクスオウガとドラクエ6の音源ドライバプログラムは同じものかもしれません。

天地創造(SFC、クインテット/エニックス)
小林美代子さんと曳地正則さんが音楽を担当。エンディングのなんとも言えない余韻(感動とは少し違う虚無感みたいなもの)と音楽の素晴らしさが強烈なインパクトで記憶されています。詳しくは「帰路」の演奏の時に書いてますのでご一読を。

スーパードンキーコング2(SFC 任天堂)
イージーリスニング・環境音楽系の作り方ですが、非常にセンスが良いですね。主人公ゴリラなのに幻想的すぎ(笑)

ロマンシングサガ3(SFC スクウェア)
ロマサガシリーズ最高傑作の声も高い作品。音楽も非常に充実していてメタル調の「四魔貴族2」「ラストバトル」など、伊藤賢治さんは一枚殻を破ったように思います。

ロマンシングサガ3「四魔貴族バトル1」【ギター演奏・コード進行35】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第35弾は、ロマンシングサガ3より「四魔貴族バトル1」。数あるロマサガバトル曲の中でもインパクトのある曲です。
ロマンシングサガ3「ミューズのテーマ」【ギター演奏・コード進行40】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第40弾は、ロマンシングサガ3より「ミューズのテーマ」。とても綺麗なコード進行の癒し系の曲です。
ロマンシングサガ3「グレートアーチ」【ギター演奏・コード進行45◆2019年夏曲】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第45弾は、ロマンシングサガ3より「グレートアーチ」。2019年夏曲2曲目はカリビアン・キューバっぽい曲を。
ロマンシングサガ3「ポドールイ」【ギター演奏・コード進行53◆冬曲】
今回は「冬曲その1」として、ロマンシングサガ3よりポドールイのテーマを演奏。ゲーム世界では北端の小さな街のBGMですが、ロマサガ屈指の名曲として知られています。
ロマンシングサガ3「ラストバトル」【ギター演奏・コード進行67】
今回はロマンシングサガ3より「ラストバトル」を演奏。伊藤賢治さんは、この作品から純メタルアレンジのバトル曲を作るようになりましたが、今回はフラメンコギターで挑戦しました。
ロマンシングサガ3「エピローグ~新たな旅へ~」【ギター演奏・コード進行104】
今回の演奏動画は、ロマンシングサガ3より「エピローグ~新たなる旅へ」。エンディングのエピローグシーンで流れる曲で、ロマサガシリーズ屈指の名曲だと思います。

テイルズ・オブ・ファンタジア(SFC、ナムコ)
桜庭統さんが音楽を担当。自分はロック調の「Fighting of the spirit」が桜庭さんらしくて好きです。

ドラゴンクエスト6(SFC、エニックス)
6は全体的に叙情的・幻想的な曲が多いですよね。自分は「ぬくもりの里に」「哀しみのとき」「精霊の冠」「時の子守歌」あたりが好きです。音楽はもちろんすぎやまこういちさんですが、上記の通り、崎元仁さんがサウンドエンジニアリングを担当していて音質も抜群でした。

風来のシレン(SFC、チュンソフト)
トルネコの大冒険に続く不思議のダンジョンシリーズ第2弾です。音楽はすぎやまこういちさんで、聴くと一発でわかるすぎやま節です。めちゃくちゃハマってプレイ時間が長いからか、すごい耳に残ってます。とくにセーブデータ読み込み画面と1面の杉並街道のBGMですねー。

――以下は1996年のタイトルですがSFC末期のゲーム音楽良作です。

バハムートラグーン(SFC、スクウェア)
音楽は松枝賀子さん。いかにもスクウェアらしいグラフィックスと世界観のシミュレーションRPGです。自分的にはクロノトリガーや聖剣伝説2に匹敵する音楽でした。

星のカービィ スーパーDX(SFC、任天堂)
音楽は石川淳さんと宮川弾さんで、これの「スタッフロール」がカービィシリーズでは一番好きな曲です。

ルドラの秘宝(SFC、スクウェア)
笹井隆司さんが音楽を担当。「The flame and the arrow」など熱い曲が多数あります。

ファイアーエンブレム聖戦の系譜(SFC、任天堂)
「アグストリアの動乱」はクサメロ系ゲーム音楽の最高傑作の一つではないでしょうか。

――この密度、おわかりいただけるでしょうか?厳選に厳選を重ねてこの数です。

この短期間にこれだけの名曲群が量産されたのは、やはりゲームバブルパワーでしょうか。熱い時代でした。

プレステ・サターンなど次世代機の登場

スーパーファミコンが全盛を極める中、1994年11月にセガサターン、1994年12月にプレイステーションが発売されています。

これら次世代機は3Dグラフィックを扱える表示能力とCD-ROMを搭載し、性能は一気に跳ね上がっていましたが、発売後しばらくはスーパーファミコンが勢いが強かったのでシェアも小さく、発売タイトルもそれほど多くありませんでした。

本格的に世代交代するのは1996年頃からですが、プレステ世代のものは次回から紹介したいと思います。

この世代のゲーム機は内蔵音源のPCM音源(SFCよりグレードが高く、同時に24和音音から32音和音くらい出せる)と、CD-ROMによるオーディオ再生を併用することが出来るようになり、現在の音楽再生環境とそれほど変わらなくなってきます。

この進化でゲーム音楽も大きく変化するのですが、また次回以降お話します。

今回のテーマである1995年前後の時期は、他社からも続々と次世代機が登場してきています。

3DO

1994年3月にアメリカの3DO社とライセンス契約を結んだ松下電器が「3DO REAL」を発売しています。

第4世代(後述)の先発隊でしたが、本体価格が5万円以上と高額で、発売タイミングもスーパーファミコン全盛期ということもあり、高性能であったものの売り上げは伸びませんでした。

1994年の年末商戦にはサターン・プレステも参戦してきて、性能的なアドバンテージもなくなって歴史に埋没してしまいます。

PC-FX

PC-FXは、PCエンジンの後継として1994年12月にNEC・ハドソンが発売した第4世代機です。

PC-98シリーズとの連携を売りにしていましたが、3Dグラフィックに対応していなかったことが致命傷となり、プレステ・サターンに淘汰されてしまいます。

サウンドもADPCM2ch+波形メモリー音源6chと時代遅れ感が否めない感じでした。

1995年前後のアーケードゲーム

スーパーファミコン全盛の1990年代中盤、アーケードゲームの世界に目を移してみると、対戦格闘ゲームブームが佳境に入ろうとしている時期でした。

  • スーパーストリートファイター2
  • 真サムライスピリッツ
  • 餓狼伝説3
  • キングオブファイターズ
  • バーチャファイター2
  • 鉄拳

ゲーセンでは、このあたりの対戦格闘タイトルがヒットしていました。

ゲーム音楽としても、アーケードゲームは対戦格闘タイトル向けのものが集中的に作られていたと思います。

この時期、格闘ゲーム以外のアーケードゲームの音楽として印象に残ったものとして電脳戦機バーチャロンを挙げておきたいです。

1990年代中盤の携帯ゲーム機

ゲームボーイを中心とした携帯ゲーム機ですが、今回の時代である1990年代中盤も低年齢層中心に一定の売れ行きはありました。

この時期のモバイルゲーム機向けタイトルは、ゲーム音楽的に言うと、さすがに音源の周回遅れ感もあり、あまり目新しいものは無いように思います。

しかし、スーパーファミコンのシェアに陰りが見え始めた1996年2月に歴史的タイトル、ポケットモンスター(赤・緑)が登場します。

自分も少し後になりますが、これをやるためにゲームボーイポケットを購入しました。

でも、その時はまさか、ポケモンがこれほどのロングヒット・社会現象になるとは想像もしていませんでしたが。ポケモンのことはまた次回書きます。

PCの世界ではWindows95が登場

1995年11月、Windows95の日本語版が発売されました。当時はニュース番組でも特集され、発売前夜からお祭り騒ぎでしたよね。

これにより、PC業界ではPC/AT互換機勢がPC-98シリーズにとどめを刺すことになり、国内でもPCのOSはWindowsが圧倒的シェアを占めるに至ります。

サウンド機能は1992年発売の「Sound Blaster16」というサウンドカードが業界標準となり、ソフト音源(PCM音源)によるMIDI再生とオーディオファイル再生が主流になってFM音源は廃れてしまいました。

この年代になると、PCにおいてはゲーム音楽云々ではなく、DTMやもっと広いものを扱うようになるので、ゲーム音楽のプラットフォームとしての意味合いは薄くなっていきます。

――次回はプレイステーション・サターン世代が中心になった時代、1990年代後半をのことをお話します。

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