ゲーム音楽のメロディーやアレンジと構造的特徴について考えていますが、自分はコード進行にも一定の傾向があると感じてます。
今回は初期ゲーム音楽の王道的コード進行についてお話しします。
コード進行の話をはじめるとそれたけで膨大な内容になってしまうと思うので、個別にはコード進行分析の記事を見ていただくとして、今回は本当に代表的・特徴的なものに絞って解説を試みたいと思います。
少々専門的内容も出てきますが、イメージしやすいように有名曲の例をあげながらやっていきます。
ループするという特性
ゲーム音楽は比較的短い区間をループするものがほとんどで、初期は16小節とか32小節、発展期以降も1ループ1分~2分くらいが主流です。
循環コード(2~16小節くらいで延々と繰り返すコードパターン)も多用されますが、クラブミュージックとか環境音楽などのパターン系ジャンルも循環コードは多いし、ゲーム音楽に限った特徴ではありません。
むしろ短いなかで転調したり意外なCメロを入れ込んできたり、コンパクトに起承転結をつけてループさせるのがゲーム音楽の真骨頂と思います。
コード進行もそのようにコンパクトにまとまっていているものが多く、音楽の学習にも最適だと思います。
王道的コード進行
初期ゲーム音楽の王道的コード進行をあげていきます。
メジャー3コード+アルファ
これは一般的な基本コード進行であり、ゲーム音楽特有というわけでありませんが、初期の『エンターテイメント型メロディー』は、ほとんどこれで出来ています。
3コードといっても、ほんとうにI、Ⅳ、Vの3コードで完結しているのは以外と少なく、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵを組み合わせて平行調の雰囲気も入れつつ起承転結させるものが多いです。
典型例は以下のようなものです。
- リブルラブル
- パックランド
- スーパーマリオ地上のテーマ
- ドラクエ『ロトのテーマ』
- バブルボブル
マイナー3コード+アルファ
マイナー版の3コードを中心に作られる進行です。
次に挙げるマイナー下降進行と代理関係にあるので、同じカテゴリーにするか迷ったんですが、バリエーションも多いので分けて解説することにします。
こちらはメロの出だし部分が、ImとⅣm(またはⅣ7)もしくはImとV7(またはVm7)で始まるパターンです。
応用としてIm Ⅱ7(Vのセカンダリードミナント)というパターンもよく使われます。
Im Ⅱ7(onI)という音使いがかなり多い印象です。
メジャー3コードより捻り(=臨時記号つきの音)が多いですね。
また、メジャー3コードと同じく、bⅢ、bⅥ、bⅦの使用で平行調の雰囲気が入ってきたりします。
このbⅥ、bⅦの使い方によっては下記のマイナー下降進行に近くなります。
典型例は
- 魔界村メインBGM
- ドラクエ3『冒険の旅』
- ストリートファイター2『リュウのテーマ』
- アクトレイザー『フィルモア』←Im Ⅳのパターン
- 悪魔城伝説『ビギニング』←Im Ⅱ7のパターン
- ロマンシングサガ2のラスボス戦←I Ⅱ7(onI)のパターン
マイナー下降進行
トニックマイナー(AマイナーならAm)や、サブドミナントマイナー(AマイナーならDmなど)からの下降進行を基調にするもの。
例えばAマイナーキーでAmスタートなら、Am→GまたはAm→Fという進行を起点とするものです。
フラメンコでもよくある進行なんですが、ゲーム音楽の場合JMM型の進行といえます。
典型例は
- 悪魔城ドラキュラ『Vampire killer』『Bloody tears』
- シルフィードのタイトル曲
- ダライアス『Captain Neo』『Boss7』(鯨のテーマ)
- ロマンシングサガ1『Overture』(タイトル曲ではなくてopデモで流れるほう)
- Live A Liveメインテーマ
- 幻想水滸伝2『Reminiscence』
同主調混在メジャーキー
メジャーキーを基調としながら同主調マイナーのコードが出てくるもの。
いわゆるコナミ進行などが代表格。
メジャーキーなんだけど切ない感じもする進行でJMMとの相性もいいです。
I→bⅦ、I→bⅥ、I→bⅢなどから始まるのが多いです。
これがゲーム音楽に浸透したのは1985年頃からですが、非常に多用されたため、最もゲーム音楽らしい進行の一つです。
典型例は
- スターソルジャー メインBGM
- スペースハリアー メインBGM
- ツインビーメインBGM
- グラディウス1面、4面、7面BGM
- ゼルダの伝説タイトル曲
- ドラゴンスピリット1面
- バハムートラグーンのタイトル曲と『ファーレンハイトのテーマ』
これら4種類の進行はキャッチーなメロを作りやすく、応用・汎用性も高い進行です。
ユーザーやメーカーにも受け入れられやすいんだと思います。
また、これらの基本進行を複数組み合わせたり、同主調を混在させたり転調を入れることで複雑な音楽性も出すことができます。
有名曲の実例をあげたとおり1980年代後半~1990年代前半あたりは、これら4種類の進行(+亜流・応用)を上手く使った名曲が非常に多いです。
時代によるコード進行の変化
時代による変化も少し触れておこうと思います。
専任作曲家の少なかった1984年ごろまでは、1ループも短く単調な展開のものがほとんどでしたが、1985年頃から徐々にコード進行も起承転結のある凝ったものが増えていきます。
そしてファミコン全盛期の1987年~1988年頃には『コンパクトに起承転結を入れ込んでループさせる』という技術は完成の域に達します。
スーファミ時代に入るとゲーム音楽作家も増えて、コード進行もバラエティーに富んでくるので上記のゲーム音楽王道進行の比率は相対的に下がっていきます。
それでも1980年代からの流れとして『失敗の少ない定番の作り方』としてずっと受け継がれていき、『ゲーム音楽らしさ』の一つの大きな要素を形成している、と感じます。
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