スケールとモード【ゲーム音楽論05】

ゲーム音楽論では前回、ゲーム音楽の和音的な特徴をやりましたので、今回は音楽のもう一つの大きな要素である、音階(スケール)、旋法(モード)にも話を広げてみたいと思います。

音楽理論は色んな体系・解釈がある

音楽理論といっても色んな理論体系が存在し、人によって色んな解釈をしています。

これが絶対正しい、みたいのは厳密には無いんですが、ゲーム音楽を分析・アレンジするにあたり「自分はこういう理解・解釈でやってます」というのを知っておいてもらったほうが理解度も上がりますよね。

メジャー・マイナーのスケール(音階)について

西洋音楽を構成する基本的な音階(メジャースケール・マイナースケール)とそれらで形作られる調性について、フラメンコギターブログ「音楽理論ライブラリー」にまとめましたので、次に進む前に、こちらの記事をご覧ください。

ダイアトニックコード

上記4種類の音階の音で作ったコードをダイアトニックコードといって、メジャーキー・マイナーキーを表現する基本要素になります。

ダイアトニックコードについて、フラメンコギターブログ「音楽理論ライブラリー」にまとめましたので、こちらの記事もご覧ください。

メロディックマイナーはメジャーに近いので、メロディックマイナーのダイアトニックコードであるⅡm7、Ⅳ7、Ⅵm7♭5などが同主調転調の橋渡しに使われたりします。ゲーム音楽はこの手法かなり多いと思います。

以上がメジャーキーとメジャースケール、マイナーキーとマイナースケールの大雑把な概要ですが、実際には。そういう基礎的な概念から外れるケースも数多く出て来ますので、以下に解説していきます。

モード(旋法)・コードスケールについて

現代の音楽ではメジャー・マイナーの概念のみでは対応しきれない部分も多く、そうしたものに対応するためのに考案された理論体系が、モード(旋法)やコードスケールの概念です。

モードやコードスケールに関しては以下の記事で詳細解説していますので、ご覧になってください。

ゲーム音楽の作曲でも、バンド系の人はコードバッキング+コードスケール的な発想で作曲する場合が多いです。

1980年代なら川口博史さん、増子司さんあたりがそういう作り方しますね。

逆にクラシック系の人はメロから作って、伴奏を後付けするような作り方が多い印象で、結果的にコード付けが細かくなったりイレギュラーになったりします。

モードを活用したゲーム音楽

通常のダイアトニカルではない方法でモードスケールを活用することがありますが、よく使われるのが以下のようなやりかたです。

  • Ⅰコードにリディアンを当てる(グラディウスの「空中戦」が典型)
  • Ⅰmコードにドリアンを当てる(LIVE A LIVEメインテーマとか)
  • ⅠmやⅠコードにフィリジアンを当てる(スパニッシュぽくなる)
  • 同一コード上でスケールを切り替えて「モードチェンジ」を強調する(ロマサガ3の四魔貴族2はエオリアン、ハーモニックマイナー、フィリジアンのモードチェンジを使用)

ゲーム音楽では、古くはグラディウスが有名です。

採譜してみると他にもたくさんありますが、ゲーム音楽ではマイナーキーのⅠmにドリアンを当てはめるパターンが圧倒的に多いように思います。

西洋音楽理論だけで説明ができないもの

ここまでで解説したように、ゲーム音楽も西洋系の響きのものは、ほとんどがメジャー・マイナーキーやモードで出来ています。

ですが、音楽は西洋音楽だけではありませんし、ゲーム音楽にも、そういう一般的な西洋音楽理論から外れたものも多く存在します。

後半は、一般的な西洋系理論の範囲外のことをお話していこうと思います。

ゲーム音楽は様々な特殊な表現が求められる

ゲーム音楽の独自事情として、ゲームの世界観に合わせたさまざまなカラー・表現が求められる、ということがあります。

いくつか思いつくままに挙げてみます。

  • ファンタジーRPGの中世的世界
  • SF的未来的なモノ
  • エキゾチックな異国風味
  • 和風
  • ホラー
  • 田舎ののどかな情景
  • 都会の洒落た雰囲気
  • 極限状態の表現
  • 特定の宗教的色彩

などなど。さまざまなジャンルのフレーズやアレンジを駆使して、こういう表現をしていかなければなりません。

民族音楽系音階

ゲーム音楽に求められる様々な表現に使われる素材のなかで、メジャーキー・マイナーキーやモードなどの一般的理論だけでは説明できないものの代表が民族音楽系です。

これには日本の伝統音楽やブルース系・カントリー系などのアメリカ伝統音楽も含まれます。

世界には多くの民族音階が存在していて、それらは独自の楽器やフレージングとセットになっています。

ある特定のカラーを表現するにはゼロから創造するより、そういう伝統的なものを取り込むほうが自由度が高いゲーム音楽には適したやりかたであり、主流になっています。

民族音階の解説はこちらの記事でやっていますので、まずはご一読を。

以下に、ゲーム音楽での使用例をあげていきます。

インド・アラブ音楽・スパニッシュの系統

インド・アラブ系の音楽を採り入れたゲーム音楽をあげると、古くは「ピラミッドの謎 エルギーザの野望」とか、ドラクエ3のピラミッドのテーマとか。

スパニッシュ系は♭Ⅱ→Ⅰの進行がベースになりますが、ロマサガバトル曲のようにメタル系の表現と組み合わされたりします。

和音階系

次は日本古来の音階を使ったものを考えてみますが、和音階を使った古典的なゲーム音楽を挙げてみましょう。

  • 影の伝説
  • 奇々怪々
  • 源平討魔伝
  • 月風魔伝
  • がんばれゴエモン シリーズ

などなど、古くから和風世界観のゲームの必須要素ですよね。

東方Projectシリーズでは、和音階+テクノロック要素の組み合わせをしていますが、これもまた「ゲーム音楽らしい」と感じる表現の典型例ですね。

ブルーノート系

ブルーノートはアメリカに奴隷として連れてこられた黒人の音楽を起源とするメジャーでもマイナーでもない音階です。

現在ではロックやジャズを媒介として、世界中でブルーノートの入った音楽が演奏されていますが、もともとはアフリカ起源の民族音階と言えるものです。

ブルーノート系の音階は、黒人霊歌を起源とし、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、ファンク、さらには白人文化であるカントリーやロックンロールなど、アメリカ起源の音楽全般に使われていて、アメリカが文化や経済でリーダーシップをとるようになると同時に全世界に波及しました。

ゲーム音楽では、クラシック系の勢力が強いのでブルーノートの使用は意外と少ないのですが、自分が採譜した中だと、セガの川口博史さんがブルーノート使いが多い印象です。

民族音楽系の独自音階は世界中に多数存在する

代表的な民族系の音楽・音階を挙げてきましたが、他にもたくさんあります。

フォルクローレだとか、中国の伝統音楽だとか、民族系音階は総じてペンタトニック(+アルファ)が多いですよね。

民族音楽とその独自音階は数えきれないくらいあるので、個別には説明しきれません。ここでは概要だけ理解してもらっておいて、そういう曲を演奏したときに個別解説しようと思います。

ゲーム音楽論 前回

ゲーム音楽の王道的コード進行【ゲーム音楽論04】
ゲーム音楽論第4回は、ゲーム音楽に使われるコード進行について。300曲採譜した管理人BGMが感じたゲーム音楽の王道的コード進行を解説します。

ゲーム音楽論 次回

ゲーム音楽のリズム要素【ゲーム音楽論06】
ゲーム音楽論では、ゲーム音楽の特徴を解明すべくコード進行・音階などの考察をしてきましたが、今回はもう一つの大きな要素である「リズム」について考えます。

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