ゲーム音楽のリズム要素【ゲーム音楽論07】

前回まででゲーム音楽の和音や音階についてやってきましたが、和音、音階と来たら、残る大きな要素は「リズム」です。

音楽は音程要素と時間要素で表現される芸術ですが、時間要素を受け持つリズムは極めて重要なものと考えます。

ゲーム音楽のリズム要素ですが、曲単位では複雑なものも相当数存在します。
ですが、全体傾向としては明快で分かりやすいものが多いです。

ゲーム音楽らしいメロディーのリズム要素

「ゲーム音楽っぽいメロディー」ということをリズム面から考えてみます。

まず、ノリの良さを演出する常套句として、1拍半、符点音符、2拍3連、3拍4連などの変則符割りの多用があげられます。

ですが、これらは小節感がわかりやすい範囲でやっていることが多いです。

シーケンス演奏ならではの機械的な符割りも多いです。

人間の手では演奏困難なパターンも多く、自分はそういうのを聴くと弾いてみたくなる一種の変態ですが(笑)

生演奏で微妙なリズム感を付加したい

生楽器演奏は人間ならではの微妙な揺らぎや、個人個人違う音色やリズム感を重視するので、ゲーム音楽とはある意味対極にあるものと思います。

ですが自分としては、この点こそがゲーム音楽演奏に興味を持った最大のポイントだったりします。

とくに初期の電子音チックで機械的な曲に、アコースティック楽器の生演奏で人間的なリズム感を加えて補完できたら、というところに一番やりがいを感じます。

ゲーム音楽で多用されるリズムアレンジ

上で扱ったのはメロディーのリズム要素ですが、今度はアレンジ面についてです。

打楽器やベースを組み合わせて特定のリズムパターンを演出する「リズムアレンジ」ですね。

ゲーム音楽でよく使われるリズムアレンジをいくつかあげてみます。

ロック系リズムアレンジ

ドラムスのビートがベースになったリズムアレンジです。

PSG時代はスネアドラムをノイズで表現したりしていましたが、ロック系リズムアレンジが本格的に浸透するのは1985年以降で、PCMリズム音源が使用可能になったあたりで一気に発展します。

具体的にはスペースハリアーあたりからです。

典型的なのは8ビートとその発展型ですが、スカやスラッシュメタルなどで使われる2ビートや3連系のシャッフルビート、さらにはダブルベースドラムを駆使したメタルビートもここに含まれます。

テクノ系リズムアレンジ

打ち込みっぽさを前面に出したメカニカルなリズムアレンジです。

一般音楽でいうとテクノポップ、ハウス、トランス、アシッドジャズなどのいわゆるEDM(エレクトリックダンスミュージック)なんかが該当します。

代表的なのはキックを四分音符で鳴らす、いわゆる「4つ打ちビート」です。

それをベースにハイハットで複雑化させたり、パーカッションを入れたラテンハウスのようなビートもよく使われます。

キックを複雑化させたパターンもありますが、概ね2拍子・4拍子のビート感を強力に出すように作っています。

EDM系の音楽はテクノポップを除くと、もともとがクラブなどで発展してきたダンスミュージックなので、どんな人でもノリやすいビートっていうのは鉄則なんだと思います。

1980年代風のディスコビートもここに含みます。

ロック系と違うのはベードラ+スネアの編成でなくても成立するところです。

ビート感が強く出てるシーケンスパターンを鳴らしておけば打楽器は必須ではないので、PSG時代からテクノ系リズムアレンジは多用されていました。

ラテン系リズムアレンジ

コンガ、ボンゴなどのパーカッションを主体にしたラテン系のビートです。サンバ・ボサノバ系もここに含みます。

ドラムスやテクノ系打ち込みと組合わさることも多く、そうなるとちょっとカテゴリー分けは曖昧になってきます。

ロックやテクノは2拍でのるリズムパターンが多いですが、ラテン系ビートは一拍半のノリが多いのが特徴でしょうか。

小節の頭に強い音が入ってない弱起のパターンが多いのもロック・テクノ系と異なります。

初期ゲーム音楽ではファンタジーゾーン(1986年、セガ)がラテンリズムアレンジを採用していて、強く印象に残っています。

スーパーマリオブラザーズ(1985年、任天堂)も、フレージングなどから判断するとラテン系のアレンジを狙ったものと思われます。

このカテゴリーはシェイカー1本で成立したりもしますが、一般的にはロック・テクノ系より音色バリエーションや強弱が求められるので、本格的にリズムアレンジとしてゲーム音楽に浸透するのはスーファミ時代あたりからです。

フラメンコのリズム(おまけ)

ラテン系がらみの余談になりますが、ゲーム音楽でたまに使われるフラメンコ風の音楽は純フラメンコのリズムではなく、上にあげたラテンビートの一種がベースになっています。

時の傷痕」しかり、「熱情の律動」しかりです。

ジプシーキングスなどのジプシーロック、ジプシールンバのリズムですね。

ちなみにフラメンコのルンバは弱起でシンコペーションが多く、4拍目の表か裏にアクセントやコードチェンジが来たりします。

後期のパコ・デ・ルシア、トマティートやビセンテ・アミーゴ、スペインのバンド「ケタマ」などを聴くとよく出てきます。

こちらは一般的な認知度も低いし、ゲーム音楽では聴いたことがないです。

あと、純フラメンコのリズムは3拍子系が半分以上です。

クラシック系リズムアレンジ

クラシック系は楽器編成上、上記の3種類のリズムアレンジほどハッキリしたビートがなく、メロディーと伴奏一体になったリズム表現になります。

ロック・テクノ・ラテン系は打楽器によるハッキリしたビートの上で、メロディーは裏拍で乗っていったりして遊びも多いですが、クラシック系は表リズムと白玉音符(ロングトーン)主体のメロディーが多いです。

これ、自分的にはソロギターでアレンジするの逆に難しいんですよね。

オーケストラが厚く支えてくれるわけではないし、変にリズミックにしてしまうと別物になってくるし。

クラシック系は3拍子、6/8拍子も多いですね。

鼓笛隊・マーチングバンド的なアレンジは比較的ハッキリしたリズムセクションがありますが、ここに含みます。

ジャズ系の4ビートについて

以上のロック系、テクノ系、ラテン系、クラシック系がゲーム音楽でよく使われるリズムアレンジですが、逆にあまり使われないのがジャズ系の4ビートでしょうか。

理由を考えてみたんですが、ジャズの4ビートはスイングビート(ハネたリズム)でのインプロビゼーションに特化した演奏スタイルで、リズムパターンと作曲されたメロディーだけを再現しても片手落ちです。

ジャズのインプロビゼーションをそれっぽくアレンジしてシーケンス演奏で再現する、というのも手間がかかるし、ウォーキングベースも気が利いたラインをアレンジで作るのに時間かかりそうです。

あと、4ビートってスイング(リズムの跳ねかた)の具合がリアルタイムに微調整されるので、そんなものをプログラムで再現するは難儀な事だし、そもそも構造的にコンピューターでの演奏に適してないんでしょう。

和音・フレーズ単位でみるとジャズぽい要素の曲はゲーム音楽にも沢山ありますが、ほぼフュージョン系のアレンジです。

4ビートのストレートアヘッドなジャズのゲーム音楽はレコーディングによる制作が当たり前になった現在ですら極小数です。

変拍子の活用、リズムの複雑化

ゲーム音楽は「ノリやすい」「分かりやすい」リズムが主流ですが、場合によっては複雑化が求められることもあります。

ゲーム音楽でのリズム複雑化というと変拍子が多用される傾向があります。

変拍子はプログレの常套手段であり、変拍子を好んで使う作家はプログレ好きが多かったりするのですが、変拍子はクラシック音楽でも多用されてます。

作家でいうと植松伸夫さん、菊田佑樹さんあたりのプログレ派はかなり多用します。

あと思いつくのは、ドルアーガの塔とか、真・女神転生「廃墟」の5拍子とか。

変則的なビートを使った曲は結構ありますね。

その他、シーケンス演奏ということを逆手に取った、人間では演奏困難なほどカオスなリズムの曲も存在します。

ただ、そういう「複雑系」は一つ一つがレアケースであり、共通の傾向を理論的に解説するのは難しいです。

ゲーム音楽論 前回

スケールとモード【ゲーム音楽論06】
ゲーム音楽論では前回、コード進行についてお話しましたが、今回はスケール(音階)とモード(旋法)という面からゲーム音楽の特徴を考えます。

ゲーム音楽論 次回

ゲーム音楽らしさの変容【ゲーム音楽論08】
ゲーム音楽論 第13回。今回で最終回です。最後に現在のゲーム音楽の特徴と、未来の予想などを書きました。AIやインタラクティブ音楽についても触れています。

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