ゲーム音楽の王道的コード進行【ゲーム音楽論04】

ゲーム音楽論では、今までゲーム音楽のメロディーやアレンジと構造的特徴について考えてきましたが、自分はコード進行にも一定の傾向があると感じてます。

今回は初期ゲーム音楽の王道的コード進行についてお話しします。

ただ、コード進行の話を始めると、それたけで膨大な内容になってしまうと思うので、個別には「ギター演奏・コード進行」の記事を見ていただくとして、今回は本当に代表的・特徴的なものに絞って解説を試みたいと思います。

少々専門的内容も出てきますが、イメージしやすいように有名曲の例を挙げながらやっていきます。

ループするという特性

ゲーム音楽は比較的短い区間をループするものがほとんどで、初期は16小節とか32小節、発展期以降も1ループ1分から2分くらいが主流です。

循環コード(2小節から16小節くらいで延々と繰り返すコードパターン)も多用されますが、クラブミュージックとか環境音楽などのパターン系ジャンルも循環コードは多いし、ゲーム音楽に限った特徴ではありません。

むしろ短いなかで転調したり意外なCメロを入れ込んできたり、コンパクトに起承転結をつけてループさせるのがゲーム音楽の真骨頂と思います。

コード進行もそのようにコンパクトにまとまっていているものが多く、音楽の学習にも最適だと思います。

王道的コード進行

では、初期ゲーム音楽の王道的コード進行をあげていきます。

ゲーム音楽のメロディーの特徴などはこちらの記事で解説していますので、予備知識としてご一読をお勧めします。

メジャー3コード+アルファ

これは一般的な基本コード進行であり、ゲーム音楽特有というわけでありませんが、初期の「エンターテイメント型メロディー」は、ほとんどこれで出来ています。

3コードといっても、ほんとうにI、Ⅳ、Vの3コードで完結しているのは以外と少なく、Ⅱ・Ⅲ・Ⅵのコードを組み合わせて平行調の雰囲気も入れつつ起承転結させるものが多いです。典型例は以下のようなものです。

  • リブルラブル
  • パックランド
  • スーパーマリオ地上のテーマ
  • ドラクエ「序曲」
  • バブルボブル

マイナー3コード+アルファ

マイナー版の3コードを中心に作られる進行です。

次に挙げるマイナー下降進行と代理関係にあるので、同じカテゴリーにするか迷ったんですが、バリエーションも多いので分けて解説することにします。

こちらはメロディーの出だし部分が、ⅠmとⅣm(またはⅣ7)もしくはⅠmとⅤ7(またはⅤm7)で始まるパターンです。

応用としてⅠm→Ⅱ7(Ⅴのセカンダリードミナント)というパターンもよく使われます。Ⅰm→Ⅱ7(onⅠ)という音使いがかなり多い印象です。

メジャー3コードより捻り(=臨時記号つきの音)が多いですね。

また、メジャー3コードと同じく、♭Ⅲ、♭Ⅵ、♭Ⅶの使用で平行調の雰囲気が入ってきたりします。この♭Ⅵ、♭Ⅶの使い方によっては下記のマイナー下降進行に近くなります。

この進行を使った典型例は以下のようなものです。

  • 魔界村メインBGM
  • ドラクエ3「冒険の旅」
  • ストリートファイター2「リュウのテーマ」
  • アクトレイザー「フィルモア」(Ⅰm→Ⅳのパターン)
  • 悪魔城伝説「ビギニング」(Ⅰm→Ⅱ7のパターン)
  • ロマンシングサガ2のラスボス戦(Ⅰ→Ⅱ7(onI)のパターン)

マイナー下降進行

トニックマイナー(AマイナーキーならAm)や、サブドミナントマイナー(AマイナーキーならDmなど)からの下降進行を基調にするもの。

例えばAマイナーキーでAmスタートなら、Am→GまたはAm→Fという進行を起点とするものです。

フラメンコでもよくある進行なんですが、ゲーム音楽の場合JMM型の進行といえます。

この進行の典型例は以下のようなものになります。

  • 悪魔城ドラキュラ「Vampire killer」「Bloody tears」
  • シルフィードのタイトル曲
  • ダライアス「Captain Neo」「BOSS7」
  • ロマンシングサガ1「Overture」(タイトル曲ではなくてopデモで流れるほう)
  • Live A Liveメインテーマ
  • 幻想水滸伝2「Reminiscence」
悪魔城ドラキュラ「Vampire Killer」【ギター演奏・コード進行66】
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幻想水滸伝2「回想(Reminiscence)」【ギター演奏・コード進行73】
今回は幻想水滸伝2より「回想(Reminiscence)」を演奏します。オープニングのスタッフロールで流れる曲で、グラディウスの作曲家である東野美紀さんの作。

同主調混在メジャーキー

メジャーキーを基調としながら同主調マイナーのコードが出てくるもの。いわゆるコナミ進行などが代表格。

メジャーキーなんだけど切ない感じもする進行でJMMとの相性も良いです。

I→♭Ⅶ、I→bⅥ、I→♭Ⅲなどから始まるのが多いです。

これがゲーム音楽に浸透したのは1985年頃からですが、非常に多用されたため、最もゲーム音楽らしい進行の一つで、典型例は下記のものがあります。

  • スターソルジャー メインBGM
  • スペースハリアー メインBGM
  • ツインビー メインBGM
  • グラディウス1面、4面、7面BGM
  • ゼルダの伝説タイトル曲
  • ドラゴンスピリット1面
  • バハムートラグーンのタイトル曲と「ファーレンハイトのテーマ」
スペースハリアー「メインテーマ」【ギター演奏・コード進行15】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第15弾は、スペースハリアーのメインテーマをフラメンコアレンジで。この曲は自分の原点であり、自分らしさが出せた演奏だと思います。
ツインビー「TwinBeeメドレー」【ギター演奏・コード進行75】
今回の演奏はツインビーの音楽をメドレーにしてお届けします。ツインビーは1985年3月に稼働開始し、ゲーム音楽全盛期のきっかけとなった作品の一つです。
ゼルダの伝説「メインテーマ」【ギター演奏・コード進行07】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第7弾は、ゼルダの伝説のオープニングタイトル曲。ボサノバ+フラメンコなアレンジでお届けします。
ドラゴンスピリット「AREA1」【ギター演奏・コード進行62】
ドラゴンスピリットは1987年にナムコから発売されたアーケードゲームですが、音楽がとても印象に残っています。今回は代表曲「AREA1」を演奏します!
バハムートラグーン「ファーレンハイトPart1&オープニング」【ギター演奏・コード進行29】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第29弾は、バハムートラグーンより「ファーレンハイトPart1」「オープニング」を組曲にしてお届け。アレンジも今までで屈指の出来と思います!

今回挙げた4種類の進行はキャッチーなメロを作りやすく、応用・汎用性も高い進行で、ユーザーやメーカーにも受け入れられやすいと思います。

また、これらの基本進行を複数組み合わせたり、同主調を混在させたり転調を入れることで複雑な音楽性も出すことができます。

有名曲の実例をあげたとおり1980年代後半から1990年代前半あたりは、これら4種類の進行(+亜流・応用)を上手く使った名曲が非常に多いです。

時代によるコード進行の変化

時代による変化も少し触れておこうと思います。

専任作曲家の少なかった1984年頃までは、1ループも短く単調な展開のものがほとんどでしたが、1985年頃から徐々にコード進行も起承転結のある凝ったものが増えていきます。

そしてファミコン全盛期の1987年から1988年頃には「コンパクトに起承転結を入れ込んでループさせる」という技術は完成の域に達します。

スーファミ時代に入るとゲーム音楽作家も増えて、コード進行もバラエティーに富んでくるので上記のゲーム音楽王道進行の比率は相対的に下がっていきます。

それでも1980年代からの流れとして「失敗の少ない定番の作り方」としてずっと受け継がれていき、「ゲーム音楽らしさ」の一つの大きな要素を形成している、と感じます。

ゲーム音楽で特徴的なコードテクニック

ここまでで解説してきたのは、先駆者たちが作り上げた「こういうシーンならこういう進行でいけば間違いない」という王道的なコード進行でした。

ここからはもう少し細かい内容で「メロディーがこうきたら、こういうオチを付ければ上手くループできる」「こういうコード進行はこうすればゲーム音源に適したアレンジにできる」という、ゲーム音楽でよく出てくる慣用句みたいなものを解説していきます。

sus4ケーデンスの多用

古典的なゲーム音楽では、sus4コード(メジャートライアドコードのド、ミ、ソがド、ファ、ソに変化したもの)を使った解決パターンを多用します。

主にドミナント7th(CメジャーキーならG7)やトニック(CメジャーキーならC)での同主調転調がらみの使用や、メロディーの終盤でオチを付けるのに使われます。

マイナーキーで最後だけメジャーに

マイナーキーでずっと進行してきて最後だけ同主調メジャーのⅠに行くパターン。

曲中ずっと「切ない、重い」感じできて、最後の最後で少し希望を持たせる明るい抜け感、みたいな。

RPGとかの展開をそのまま音にしたような感じで、ゲーム音楽作家に好まれる展開です。

先ほどのsus4ケーデンスとこのマイナー/メジャー切り替えの2つは、ベース音がルート(根音、CメジャーコードならC=ド)で鳴っていれば、3度の音の変化(ファ、ミ、ミ♭)のみで成立するので、少ない音数での微妙な調性表現がやりやすいんだと思います。

同主調のサブドミナント活用

上と同じようなメジャー・マイナーの切り替え手法の一つですが、以下のようなコードを活用して同主調の音を織り込むことがあります。

  • メジャーキーでのサブドミナントマイナーコード(CメジャーならDm7♭5、Fm、A♭M7など)
  • マイナーキーでのサブドミナントコード(CマイナーならDm7、F7、Am7♭5など)

これらはゲーム音楽以外でも一般的な手法であり、上で紹介した王道進行の一つ「同主調混在メジャーキー」は、これが絶対に出てくるので使用頻度は非常に高いです。

ベース音指定コード

ベース音指定コードは、いわゆるオンコードでコードネームの後に(onA)などの表記がついてベース音が指定されてるものです。

オンコード・分数コードの解説

ゲーム音楽で特徴的なオンコードは、ドミナント7thコードで3度・7度の音をベース音にしたボイシングでしょうか。

3度ベースの場合は次に解説するパッシングディミニッシュと同様で、ベース音の跳躍を減らしてを滑らかにする効果があります。

7度ベースのコードも結構特徴的だと思います。

例えば前回取り上げたⅠm→Ⅱ7(onⅠ)の場合は、Ⅰmからベース音は変えずにコードチェンジするんですが、Ⅰm→Ⅰdim(いわゆるトニックディミニッシュ)に近い響きです。

あと、これもよく出てくるんですが、Ⅰ→Ⅰ7(on♭Ⅶ)という進行があります。

これはⅠのベース以外は固定してベースだけ1音下に行くんですが、Ⅰ→♭Ⅶ7の代理的に使われたりもします。流れ的にⅣにも♭ⅥにもⅥmにも行きやすいです。

このあたりは上で解説した王道進行とセットになってます。

パッシングディミニッシュ

ゲーム音楽ではパッシングディミニッシュも多用されます。

パッシングディミニッシュの解説

ゲーム音楽の場合、以前解説したようにベースラインに制約が多かったため、ベースラインの跳躍を避けて半音進行に置き換えた結果そうなってると思われます。

そうやってディミニッシュ変換をすると短3度平行移動が可能になるので、そこを起点にまた違った展開が生まれたり、作曲上凄く使い勝手がいいんですよね。

テンションノートの活用と新型JMM

JMM(ジャパニーズ・メランコリック・メロディー、自分が作った造語)の進化について少しお話します。

これはメロディーの話にもなりますが、コード進行と密接に関係することなので、ここで補足的にやっておきます。

JMMについてはこちらの記事をお読み下さい。

JMMをマイナー3コードや下降進行でコードトーン主体に作ると、演歌・ムード歌謡チックになってきます。

それはそれで魅力もあるのですが、ゲーム音楽は若い世代がターゲットだったので、そこはかなり工夫され、「新型JMM」と呼べるようなものに進化していきます。

コード的にはテンションノートの多用です。

  • メジャーコードならM7th、9th、sus4、♯11th、13th
  • マイナーコードなら6th、m7th、M7th、9th、11th

こういった音をメロの重要ポイントに組み込んで、演歌・ムード歌謡化を回避。先進的な響きを獲得していきます。

JMM解説のとき書きもらしたものを補足する形になりましたが、自分はあれこれ考えながらこの「ゲーム音楽論」を執筆する中で、この新型JMMがゲーム音楽の特徴を語る上でかなり重要なんでは?と感じています。

音楽理論系の話について

今回はコード進行の話をしましたが、こういう話はこれ以上掘り下げるとどんどん専門的になってくるので、基本をおさえたところで次に行こうと思います。

音楽理論系の話題はどこまで突っ込むかが難しいところですが、詳細なことは個別のコード進行分析記事でやるとして、ここではゲーム音楽共通の基本的なところをおさえるにとどめたいと思います。

音楽理論に興味がある方は、自分が本名でやっている「後藤晃のフラメンコギターブログ」の「音楽理論ライブラリー」というコーナーにまとめてありますので、ご覧いただけたらと思います。

ゲーム音楽論 前回

ゲーム音楽の作編曲手法【ゲーム音楽論03】
ゲーム音楽論第3回は、厳しい制約があった初期のゲーム音楽制作環境に対応するために発達してきた、ゲーム音楽独自の作編曲手法についてお話します。

ゲーム音楽論 次回

スケールとモード【ゲーム音楽論05】
ゲーム音楽論では前回、コード進行についてお話しましたが、今回はスケール(音階)とモード(旋法)という面からゲーム音楽の特徴を考えます。

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