前回までに第一次ゲーム音楽黄金期(1986年~1989年ごろ)の話をしましたが、アーケードゲーム主導で始まったゲーム音楽の発展も最終的にはファミコンの爆発的ヒットでコンシューマーに集約されていきます。
それを決定づけたのがスーパーファミコンでした。
スーファミの登場
スーパーファミコンはファミコンの後継として、任天堂が1990年11月に発売した家庭用ゲーム機です。
グラフィック解像度はテレビに接続するという仕様上、PCには及びませんが、色数・スプライト数などファミコンと比較にならない進化をします。
そしてサウンドはPCM音源8chと、当時の家庭用ゲーム機としては強力なものでした。
セガのメガドライブも性能は良かったのですが、ファミコンのタイトルが1992年ごろまで良いものが出続けたこともあって、ファミコンユーザーは後発のスーパーファミコンへ移行、任天堂はシェアの維持に成功します。
スーパーファミコンの普及によりアーケードやPCとの性能差は小さくなり、わざわざゲーセンに通ったり、高いPCを買わなくてもハイクオリティなゲームが家庭で出来るようになったのです。
また、スーパーファミコンのPCM音源は独特の音質で、これを今の基準で単に低音質と言ってしまえばそれまでですが、ゲーム音楽としては絶妙にマッチしていて、この音質が好き、というファンもたくさんいます。
なんというか、コンプレッサーを強くかけたような音圧感は中毒性があります。
1991年~1993年ごろのコンシューマーお薦めタイトル
スーパーファミコンはファミコンのシェアを引き継いで、初期から優秀なタイトルが多数発売されています。
ゲーム音楽という面で印象に残っているタイトルを紹介します。
F-ZERO(スーパーファミコン 任天堂)~スーファミ本体と同時発売。BGMは全て良曲。自分は『Big Blue』が好き。
アクトレイザー(スーパーファミコン エニックス)~古代祐三さん作品。これを聴いた植松伸夫さんがファイナルファンタジー4の音楽を作り直した、という逸話は有名。それほどスーファミ初期作品としては突出していた。
ファイナルファンタジー4(スーパーファミコン スクウェア)~自分はFFシリーズ全作品を通してこれが一番印象に残っている。植松さん作品の中でも映画音楽色が濃い。
ロマンシングサガ(スーパーファミコン スクウェア)~なんだかんだでこのシリーズが一番採譜数が多かった。一作目からイトケンサウンドは確立されている。
天外魔境2(PCエンジン ハドソン)~久石譲さんが音楽を担当。『Lマップ通常』が名曲。
スーパーマリオカート(スーパーファミコン 任天堂)~マリオシリーズでは一番好きだったりします。『ノコノコビーチ』『レインボーロード』がいい。
ドラゴンクエスト5(スーパーファミコン エニックス)~すぎやまファンの間では賛否あるようだけど、自分はかなり好き。『王宮のトランペット』『街は生きている』『愛の旋律』そして『結婚ワルツ』 名曲多いと思う。
真・女神転生(スーパーファミコン アトラス)~『銀座』の解説で書いたとおり、増子司さんの音楽はこれをもって完全体になったと思う。『銀座』以外にも『自宅』『邪教の館』『四天王の館』『廃墟』『エンディング』などが好き。
ウィザードリィ5(スーパーファミコン・PCエンジン アスキー)~なんといっても羽田健太郎さん作のオープニングは名曲。
ファイナルファンタジー5(スーパーファミコン スクウェア)~4とまた雰囲気が違うが、『メインテーマ』『飛龍のテーマ』『古代図書館』『四銃士のテーマ』『ビッグブリッヂの死闘』『新しき世界』など個性的で印象深い曲が多かった。
イーハトーヴォ物語(スーパーファミコン ヘクト)~マイナータイトルですがタイトル曲は名曲であり、一聴の価値あり。
スターフォックス(スーパーファミコン 任天堂)~音楽は平澤創さんが担当。自分は『コーネリアのテーマ』すごい好き。
聖剣伝説2(スーパーファミコン スクウェア)~これのタイトル曲、フラミンゴが飛んでいくところは鳥肌。他にも『少年は荒野を目指す』『子午線の祀り』『危機』など名曲多数で、これと次作の聖剣3は菊田さんの代表作。
悪魔城ドラキュラX(PCエンジン コナミ)~アレンジがバブル時代から90年代初頭の雰囲気で他の悪魔城シリーズとカラーが違うが、『乾坤の血族』『SLASH』『op.13』など良曲多数。
ロマンシングサガ2(スーパーファミコン スクウェア)~ロマサガ三部作では一番落ち着いた雰囲気の音楽だが、自分は伊藤さんのバラード系、オーケストラ系大好きなので歓迎。
これでもかなり厳選したんですが、スーファミは紹介したいタイトルが非常に多いです。
最盛期の1994年~1995年は次回扱います。
対戦格闘ゲームブームの始まり
スーパーファミコンの登場によって完全にシェアを奪われたかに見えたアーケードゲーム業界ですが、ところがどっこい、劇的に復活します。
『ストリートファイターⅡ』(1991年カプコン)からの対戦格闘ゲームブームです。
このブームは、プレイヤーが自分の技術を高め、家庭内では不可能な不特定多数の対戦相手とプレイする、ということに着目したシステムが大成功し、再びゲーセンに人が集まるようになりました。
大会なども盛んに行われ、各社とも対戦格闘型のゲームを出してきています。
代表的なものをあげると
- SNKの『餓狼伝説』(1991年)
- セガの『バーチャファイター』(1993年)
- ナムコの『鉄拳』(1994年)
このブームは長く続き90年代後半にピークを迎えますが、2000年以降も『ギルティギア』シリーズや『BLAZBLUE』シリーズなど一定数のヒット作が出続けています。
この時代のアーケードゲームの音楽に関しては格闘ゲーム以外にもいいものがあります。
自分の趣味ですが、タイトーのシューティングゲームは非常に音楽素晴らしいです。
すべてZUNTATAのメンバーが音楽を作っています。
- メタルブラック~渡部 恭久さん初期の代表作
- グリッドシーカー~古川典裕さん作品
- ダライアス外伝~ZUNTATAのラスボスOGRさん作。OGRさん作品の中でもトップ3と思う
SNK ネオジオ(NEO・GEO)
対戦格闘ゲームブームのもう一方の立役者、SNKですが『ストリートファイターⅡ』の登場と前後してネオジオ(NEO・GEO)というプラットフォームを出しています。
ネオジオはアーケードゲームと家庭用で同じ基盤を使用し、アーケードゲームと全く同じものが家庭でもプレイできる、というのが売りでした。
価格は本体58000円、ROMカートリッジが30000円~とかなり高額でしたが、家で練習してゲーセンで対戦する、というヘビーユーザーの需要でそこそこヒットしました。
PCのゲーム音楽の状況【1990年代前半】
同時代(1990年代前半)のPCは1991年ごろから普及し始めたDOS/Vパソコン(windowsPC)と、NECのPC-98シリーズがシェアを2分することになります。
ホビー用途ではX68000、FM-TOWNSも生き残っていますが、次第にシェアを失います。
ゲームのほうは、アダルト系や高度なシミュレーションが中心となり、あまり一般向けではありませんでした。
自分もあまり詳しくないので、音楽のいいタイトルは『X68000版悪魔城ドラキュラ』くらいしか挙げることができません。
サウンドはFM音源中心からPCM音源へ、さらにはデータを音源チップで再生する形でなく、現在のようなwav(CDなどのリニアPCMをデータファイル化したもの)などの波形を直接再生するオーディオファイル形式へと移り変わっていきます。
携帯型ゲーム機市場の動向【1990年代前半】
1989年に発売されたゲームボーイはロングヒットを続けます。
90年代前半はゲームボーイタイトルも音楽はかなり充実しています。
1990年~1993年ごろのお薦めゲームボーイタイトル
この年代のゲームボーイのタイトルのうち、音楽が素晴らしいものをあげていきます。
Saga2秘宝伝説(スクウェア)~伊藤賢治さんの初期作品。『伝説は始まる』は『RisingSun』と対をなす名曲
ネイビーブルー90(USE)~音楽がいいのは一部では有名
聖剣伝説(スクウェア)~これも伊藤賢治さんの初期作品。詳しくはRisingSunの解説を参照
カエルのために鐘は鳴る(任天堂)~『王子の冒険』は有名曲
他に『ウィザードリィ外伝』シリーズ(アスキー)
『ラストバイブル』シリーズ(アトラス)などもいいですね!
ゲームギア
1990年10月にセガからゲームボーイに対抗した携帯ゲーム機『ゲームギア』が発売されます。
ゲームギアはSTNカラー液晶を採用し、セガマークⅢと同等の性能がありました。
ただ、当時の技術ではカラー液晶はまだ時期尚早だったようで、価格が19800円と高額になったのと、電池持ちが致命的に悪く、ゲームボーイのシェアを奪うには至りませんでした。
サウンドはPSG3音+ノイズで、こちらはゲームボーイのほうが優れていました。
ゲームギアオリジナルのゲーム音楽としては、コンパイルの『GGアレスタ』シリーズなどが有名です。
――次回はスーパーファミコンの全盛期でゲーム音楽第二次黄金期といえる、1995年前後のお話しです。
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