今回から新連載『ゲーム音楽論』をスタートいたします。
これまで当ブログ連載シリーズ第一弾としてやってきた『ゲーム音楽史ではゲーム音楽が誕生してから現在までの全体的な流れをみてきました。
今回からは『ゲーム音楽史』の内容を踏まえたうえで、もっと細かいゲーム音楽の話を『ゲーム音楽論』として展開していこうと思います。
この『ゲーム音楽論』は音楽の中身の話がメインになるので、多少専門的な話も多くなると思いますが、なるべく分かりやすい言葉で書いていきたいです。
ゲーム音楽・ゲームミュージックというジャンル
まず、ゲーム音楽というジャンルの実体について自分なりの考えを述べます。
『ゲーム音楽』という言葉はクラシックやロックなどという音楽の特徴で分けた音楽ジャンルではなく、ゲームに使用されている音楽全般のことをさすので、言葉としては用途で分けられるジャンル、例えば映画音楽・環境音楽などに近いでしょうか。
時代によってかなり異なりますが、中身は多様な音楽の集合体です。
まあ一般論としては上記の通りなんですが、自分は『ゲーム音楽っぽい音楽』というのも確実に存在して、音楽的な特徴もあると思うわけです。
これからそのへんを考えていきたいです。
日本のゲーム音楽のルーツ
まず、ゲーム音楽に影響を与えた音楽ということを考えていくと、非常に多様であり、作曲家個人個人それぞれのルーツミュージック・作曲の特徴ということにもなってきます。
例えばナムコの大野木さんならオールドファッションなアメリカの音楽、すぎやまこういちさんならクラシックと歌謡曲、植松伸夫さんや桜庭統さんならプログレッシブロック、という具合です。
そろそろ今回の本題に入りますが、上記のような作曲家の個人的なものとは別に、ゲーム音楽の形成に対して濃い影響をもつ音楽カテゴリーがいくつか存在していると感じます。
テクノミュージックとYMO
まず一つ目は、クラフトワークなどからのテクノミュージックの流れと、YMO(イエローマジックオーケストラ)の存在。
いわゆるテクノミュージックとは、厳密に言うと二種類あります。
- 1970年代ごろから電子楽器の進化とともに誕生して1980年代にはテクノポップと言われていた音楽ジャンル
- 1980年代終わりごろアメリカのデトロイトで生まれた電子楽器を駆使したクラブミュージック
これらは別物なんですが、現在の一般的な認識としては、テクノ=テクノポップを含む電子楽器を駆使した機械的シーケンスをベースに作られる音楽、ということで良いかと思います。
YMOは日本のテクノポップの代表格ですが、ゲーム音楽のCDをプロデュースしたり、いわゆるチップチューンのはしりのようなアプローチもやっていました。
ゲーム音楽の発生・発展年代も考えると、テクノミュージック、とくにYMOの音楽は初期のゲーム音楽の形成に絶大な影響を及ぼしていると思います。
ゲーム音楽側をみてもテクノミュージックを源流とした流れは1980年代から結構な勢力がありました。
ファミコンのピコピコ音との相性も良かったです。
テクノポップからクラブミュージック、EDMへの流れ
1990年代に入るとハウス・トランス・アシッドジャズなどのクラブミュージックが一般化し、他のジャンルと盛んにクロスオーバーします。
クラブミュージックとしてのテクノと従来のテクノポップとの境界も曖昧になり、そのあたりのジャンルは渾然一体となっていきます。
このクラブミュージック化の流れはゲーム音楽にもとりいれられます。
古代祐三さんも『ベアナックル』(1991年)でいち早く取り入れてましたね。
そのあとはタイトーやケイブのシューティングがこの流れの本流でしょうか。
現在はテクノ、トランス、ハウスなどの音楽ジャンルは、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)ということで統合されつつあり、現在のゲーム音楽もEDM的なモノは相当数あります。
テクノ・クラブミュージック系の外部音源を切り貼りして作る制作方法はコンピューターで制作されるゲーム音楽とも相性がいいんでしょう。
映画音楽の影響
二つ目はジョン・ウィリアムズ(スターウォーズとかスーパーマンの作曲家)をはじめとした映画音楽の影響です。
とくに1960年代~1980年代でクラシック寄りのもの。
これらの影響もかなり大きいと思います。
例えばドルアーガの搭とかFFの一部の曲とか、それっぽいです。
日本の作家では久石譲さん。
久石さんの影響はジブリ作品が浸透した90年代以降になりますが、和製インストゥルメンタル音楽ということで考えると、ゲーム音楽との親和性も良く、影響を受けただろう曲は大量にあります。
古代祐三さんが師事していた話が有名ですが、古代さんの場合は久石さんの直接的影響はそれほど感じません。
昭和までの日本の大衆音楽~日本人の心『クサメロ』
そして三つ目になりますが、実はこれが一番重要かもしれません。
日本独特の『クサメロ』
当ブログでこれは誉め言葉なんですが、日本人の心象を表すちょっと切ないメロディーをもつ音楽ですね。
大衆的な民謡など→軍歌・昭和前半までの唱歌→演歌・歌謡曲→ニューミュージックという流れの日本の庶民が親しみ愛してきた大衆音楽には『クサメロ』は必須のものです。
ゲーム音楽が誕生する少し前、同じような特異なジャンルとして初期アニソンと戦隊モノ主題歌がありますが、同じ流れから派生してるんじゃないでしょうか。
こちらはゲーム音楽に比べると唱歌・軍歌の要素が強いですが。
ゲーム音楽とクサメロの関係についてはまた触れたいですが、とくに初期の和音数や音色が貧弱な時代に絶大な効果を発揮し、ゲーム音楽の1つの重要要素として確立した、ということを申し上げておきたいです。
ゲーム音楽は日本古来の大衆音楽とテクノロジーの融合ということで、1980年代からの日本の大衆文化を最も的確に表現しているのかもしれません。
次回はもっと具体的なゲーム音楽の構造的なことに話を進めていきたいと思います。
ゲーム音楽論 次回

コメント