ゲーム音楽史第5回は「第一次黄金期」中編で、1987年のことをお話していきます。
今回はプラットフォーム別に見ていきましょう。
ファミコンのゲーム音楽の大発展
今まで取り上げるタイトル数も少なめだったファミコン含むコンシューマー勢ですが、1987年から大発展を遂げています。
ファミコンが発売されて3年半以上が経過していますが、スーパーマリオとドラクエ以降ファミコンは売れに売れて社会現象にまでなり、PCやアーケードのゲームメーカーも、我先にとファミコン市場に雪崩込んできました。
1987年発売の自分が音楽が良いと思うファミコンオリジナル作品のタイトルを発売順に挙げてみます。
ドラゴンクエスト2(エニックス)
すぎやまさんのポップス作家としての面が強く出た作品。
リンクの冒険(任天堂)
ゼルダシリーズ第2弾。タイトル曲と神殿のテーマは名曲です。
火の鳥(コナミ)
ファミコンとMSXでゲーム内容も音楽も異なりますが、どちらも凄く良くできていました。エンディング曲は渡辺典子さんが歌う映画『火の鳥 鳳凰編』のテーマ曲で、作者は宮下富実夫さん。喜多郎とも一緒に活動していたプログレやヒーリングミュージックの人です。
エスパードリーム(コナミ)
これの音楽好きです。とくにネーム入力の時のアルペジオ。
月風魔伝(コナミ)
ラスボス戦演奏しましたが、フィールド曲、エンディングも良いですよね。和音階+ロックなアレンジでした。
ファルシオン(コナミ)
ザ・ゲームミュージック!強制的にテンション上げられてしまいます。
ボンバーキング(ハドソン)
ボンバーキングのテーマはクサメロ系名曲ですね。
悪魔城ドラキュラ2(コナミ)
ドラキュラ三大名曲の一つ「Bloody Tears」を擁する悪魔城シリーズ第2作。
ふぁみこん昔話 新・鬼が島(任天堂)
近藤浩治さんの作曲。佳曲揃いです。
わんぱくダック夢冒険(カプコン)
月面ステージのテーマが一部では有名曲。
女神転生(ナムコ/アトラス)
元ネタの小説や日本テレネットのPCゲームはあるけれど、RPGシリーズとしてのメガテンの歴史はここから始まりました。音楽は第1作から増子節炸裂!
ファイナルファンタジー(スクウェア)
植松伸夫さんのゲーム音楽デビュー作品。プレリュードとメインテーマは永遠の名曲でしょう。
――コナミが大量に来てますねー。この年からコナミがファミコンとMSXで大攻勢をかけています。
PCエンジンの発売
1987年10月にNECとハドソンが共同開発したゲーム機、PCエンジンが発売されます。
当時としてはかなり高性能で後発のメガドライブ(セガ)やスーパーファミコン(任天堂)とも競合してきました。
サウンドは6チャンネルの波形メモリ音源でしたが、PCエンジンの最大の強みは翌年発売されるCD-ROMです。
これにより、カートリッジやフロッピーディスクと比較にならない大容量と、CDDAによる生録音でのサウンドが可能となったのです。
CD-ROMはPCの世界でもまだ普及しておらず、かなり早い段階での導入でした。
このCD-ROM存在によって、プレステやサターンの発売までの間、PCエンジンは特異な立ち位置を保持することになります。
1987年のアーケードゲーム
大発展したコンシューマーに対し、アーケードゲームは爛熟期をむかえています。
アーケードゲームは1987年ごろまでが商業的にはピークで、コンシューマー機の高性能化に伴って徐々にその座を明け渡していきます。
ゲーム音楽的にはハードや一つのタイトルにかける開発費の面などで、まだまだアーケード優位な面もあり、良い音楽がたくさん生み出されています。
1987年のアーケードゲームで音楽が良いと思うタイトルを発売順にあげていきます。
ダライアス(タイトー)
1980年代のゲーム音楽で一番濃い影響を受けているのがダライアスです。小倉久佳さんの作曲センスも好きですが、その独特の金属をひっかくような音色とアレンジがツボに入りました。テクノぽい無機質さと、いい意味で日本人的なメロディーセンスのバランスが良くて、未だに聴くと中毒性が甦えります。
アフターバーナー(セガ)
音楽は川口博史さんですが、この作品はハードロック色が強い。映画『トップガン』を意識している気がします。
1943(カプコン)
良曲多し。行進曲風だけどちょっと哀愁があるのが良いです。
ドラゴンスピリット(ナムコ)
細江慎治さんのデビュー作。タイトル→ゲームスタート→エリア1の流れがテンション上がります。エリア6も名曲。
Rタイプ(アイレム)
金属的な音質がいい味出してました。
忍者くん 阿修羅の章(ジャレコ)
洞窟ステージは名曲ですよねー。
1987年のPCゲーム
PCの世界では日本のガラパゴス的8ビット機は最盛期を迎えます。まずは8ビット向けのゲーム音楽良作からご紹介します。
エルスリード(日本コンピューターシステム)
シミュレーションゲームの名作で、音楽も良かったです。
ジーザス(エニックス)
すぎやまこういちさん作品。
ガンダーラ(エニックス)
すぎやまこういちさん作品。
イース(日本ファルコム)
古代祐三さん初期の代表作。この時代、古代さんの作風はわりとハイテンポなロックアレンジ+JMM (ジャパニーズ・メランコリック・メロディー)のものが多く、イース1&2やソーサリアンの音楽も主流はそういう曲ですが、自分は「Feena」に代表されるような静かな曲が好きでした。
女神転生(日本テレネット)
PC版女神転生の音楽は増子司さんではないですが「Romantic Hell」など良曲多し。
ソーサリアン(日本ファルコム)
古代祐三さん作品。自分はエンディングが好きです。
――この後、1988年ごろより急激に16ビット機に主役が移っていきます。
PCメーカーもゲーム音楽の重要性は意識していて、それまでビジネス用ととらえられていて音源を搭載してこなかった16ビット機にFM音源を搭載しはじめます。
PC-9801Uシリーズ(NEC)、そして次に紹介するX68000(シャープ)などです。
X68000の登場
1987年3月、シャープからX68000という革新的なPCが発売されます。
X68000は16ビットのCPUとそれまでのPCとは桁違いのグラフィック性能を有し、サウンドにはFM音源8チャンネルとADPCM(PCM音源の簡易なもの)が搭載されていました。
1986年の終わり頃に発表があり、すぐに雑誌に特集が組まれて、みんなワクテカしながら待っていた夢のPCでした。
何がそんなにワクテカだったのかというと、シャープからの発表時にグラディウスの画面写真が出たんですが、これが標準で付属するということで、当時のゲーマーや開発者の悲願だった「アーケードゲーム完全移植」が可能な、まさに「夢のPC」だったわけです。
そして3月、発売はされましたが注文に出荷が追いつかず、ずっと入手困難な状況が続きました。
これ、自分は楽器に興味が移っていって買うには至りませんでしたが、憧れたなぁ。
コナミのMSX用SCC音源
コナミは1986年ごろから、ファミコンとMSXのゲーム開発に力を入れています。
普及台数は多いものの音源が貧弱だったこれらに対し、カートリッジに音源チップを実装するという力技でサウンドの増強をするようになりました。
とくにMSXではSCC音源と呼ばれる波形メモリー音源が使用されました。
音質からいうと「バブルシステム」の音源の応用でしょうか。
1987年8月のグラディウス2、10月のF1スピリットを皮切りに、王家の谷エルギーザの封印、スペースマンボウ、メタルギア2、スナッチャー(※以上4タイトルは1988年以降の発売)などのゲーム音楽の良作をどんどん発表します。
これによって下火になっていたMSXの人気が再活性化しています。
MSX(主にMSX2ですが)は8ビットPCが16ビットPCにとって変わられたあとも、低価格の強みを生かし、しばらくはファミコンとともに1990年前後までそれなりの勢力を保つことになります。
――次回はゲーム音楽第一次黄金期後編として1988年から1989年のことをやります。
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