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西洋音楽理論で説明しきれないもの【ゲーム音楽論11】

前回は音階を中心に、一般的な西洋音楽理論を解説しました。
ゲーム音楽も一般的な音楽同様、大半が一般的な理論に基づいて作られているということもお話したとおりです。

ですが、いろいろと例外も存在します。
一般のメジャー・マイナーやモードでは説明しきれない部分、これが結構面白いと思うので、今回取り上げたいと思います。

ゲーム音楽は様々な特殊な表現が求められる

ゲーム音楽の独自事情として、ゲームの世界観に合わせたさまざまなカラー・表現が求めらる、ということがあります。

例えば、思いつくままにあげてみると
ファンタジーRPGの中世的世界、SF的未来的なモノ、エキゾチックな異国風味、和風、ホラー、田舎ののどかな情景、都会の洒落た雰囲気、極限状態の表現、特定の宗教的色彩、などなど。

さまざまなジャンルのフレーズやアレンジを駆使して、こういう表現をしていかなければなりません。

民族音楽系音階

ゲーム音楽に求められる様々な表現に使われる素材のなかで、メジャーマイナーやモードなどの一般的理論だけでは説明できないものの代表が民族音楽系です。
これには日本の伝統音楽やブルース系カントリー系のアメリカ伝統音楽も含まれます。

世界には多くの民族音階が存在していて、それらは独自の楽器やフレージングとセットになっています。

ある特定のカラーを表現するにはゼロから創造するより、そういう伝統的なものを取り込むほうが自由度が高いゲーム音楽には適したやりかたであり、主流になっています。

代表例をいくつかあげていきます。

インド・アラブ音楽・スパニッシュの系統

インド音楽・アラブ音楽・フラメンコ及びアンダルシア民謡の音階を使った曲です。

共通の特徴は♭2ndを含むフィリジアン系の音階が使われます

他の民族音階は5音階=ペンタトニックが多いですが、これは西洋と同じ7音階に近いです。
『近い』というのは、経過音、修飾音が多く、アラブでは微分音(半音のさらに半音)を使ったりするので。

インド音楽とアラブ音楽は異なった系統で、それぞれ独自の理論体系があって、深入りすると、とんでもない文章量になるので、ここではそこまで突っ込まずフィリジアン系の音階を使ったエスニックな表現ということでまとめさせていただきます。

スパニッシュ=フラメンコの音階についてですが、これもインドを起源としてアラビア経由でスペインまで伝わった音楽の系統です。

ロマ(ジプシー)の移動に伴って数百年かけてインド北部からスペイン・アンダルシアまで到達しています。

ちなみにジプシー系の音楽はヨーロッパ各地へと波及していますが、スペイン以外の多くのジプシー音楽は意外と普通のマイナーキーが主体だったりします。

インド・アラブ系の音楽をとりいれたゲーム音楽をあげると、古くは『ピラミッドの謎 エルギーザの野望』とか、ドラクエ3のピラミッドのテーマとか。

スパニッシュ系は♭Ⅱ→Ⅰの進行がベースになりますが、ロマサガバトルなどメタル系の表現と組み合わされたりします。

和音階系

坂本龍一さん、久石譲さんなども自分の音楽に取り入れていますが、日本古来の音階を取り入れたものです。
J-POPでもうまく取り入れてヒットした曲はたくさんありますよね。

和音階は主に五音階(ペンタトニック)です。

  • 陽音階(陽旋、半音を含まない和音階)
  • 陰音階(陰旋、半音を含む和音階)
  • ヨナヌキ音階(メジャー・マイナースケールから4thと7thを抜いた民謡・演歌系の音階)

などが使われます。

ペンタトニックといっても、ロックやブルースで使われるブルーノートペンタトニック、マイナーペンタトニックとは構成が異なります。

ゲーム音楽では

  • 影の伝説
  • 奇々怪々
  • 源平討魔伝
  • 月風魔伝
  • がんばれゴエモン シリーズ

などなど、古くから和風世界観のゲームの必須要素です。

『東方プロジェクト』シリーズでは、和音階+テクノ要素の組み合わせをしていますが、これもまたゲーム音楽らしい表現の典型例ですね。

ブルーノート系

黒人霊歌からブルース、ジャズへと進化していった音楽系統です。
カントリー、ブルーグラスといったジャンルとも密接な関係にあります。

ゲーム音楽では思ったほど使用されてないかな、という印象なんですが、ロック、ソウル、R&Bなどアメリカルーツの音楽では欠かせないもので、一般の音楽では物凄く多用されます。
むしろ民族系音階というには一般的すぎるかもしれません。

ブルーノートとは直訳で『憂鬱な音』ですが、メジャースケールに対して(正確にはM7は経過的にしか使わないのでミクソリディアンのほうがが近い)♭3と3の中間音、♭5、♭7などが混ぜて使われるのが特徴です。
コードスケール的には

  • ブルースメジャー
  • ブルーノートペンタトニック
  • マイナーペンタトニック
  • メジャーペンタトニック
  • ドリアン
  • ミクソリディアン

などが適合します。

そしてコードはドミナント7th化した3コードが基本になり、メジャーにもマイナーにもとれる、という少々特殊な構造になってます。

モダンジャズはこれを複雑化させたもので、ビバップ以降様々な手法が編み出されて先鋭化していきます。

  • ブルーノート
  • 半音でのアプローチ
  • 細かいリハーモナイズ(コードの付け替え)
  • モード奏法

これらを駆使していくと、使える音的にはなんでもアリの様相になってきますが……

ゲーム音楽では自分が採譜した中だと、セガのヒロ師匠(川口博史さん)がブルーノート使いが多い印象です。

民族音楽系の独自音階は世界中に多数存在する

代表的な民族系の音楽・音階をあげてきましたが、他にもたくさんあります。

フォルクローレだとか、中国の伝統音楽だとか、民族系音階は総じてペンタトニック(+アルファ)が多いですよね。

民族音楽とその独自音階は数えきれないくらいあるので、個別には説明しきれません。
ここでは概要だけ理解してもらっておいて、そういう曲を演奏したときに個別解説しようと思います。

ゲーム音楽論 前回

スケール(音階)とモード(旋法)【ゲーム音楽論10】
ゲーム音楽論 第10回。コード進行についてやってきましたが、今回はスケール(音階)とモード(旋法)という面からゲーム音楽の特徴を考えます。

ゲーム音楽論 次回

ゲーム音楽のリズム要素【ゲーム音楽論12】
ゲーム音楽論 第12回です。ゲーム音楽の特徴を解明すべくコード進行・音階とやってきましたが、今回は残る要素『リズム』について考えます。

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