発売年月:1991年3月
機種:アーケードゲーム(Arcade Game)
メーカー:カプコン(CAPCOM)
タイトル名:ストリートファイターⅡ(Street Fighter2)
曲名:バルログのテーマ(Vega Theme)
作曲:下村陽子(Yoko Shimomura)
演奏難易度:☆☆★★★(普通)
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第84弾は、ストリートファイター2よりより「バルログのテーマ(Vega Theme)」です。スペインステージの曲ですね。
バルログとVegaについて
海外版のスト2は色んな事情からキャラクター(サガット以外の四天王)の名前が入れ替わっていて、日本だとバルログと呼ばれている、あの爪を使う仮面のキャラも海外では「Vega」になっていたりして紛らわしいです。
ここでは、基本的にスペインステージのテーマは「バルログのテーマ」としますが、海外ではバルログ=Vegaで通っているので、英語表記の場合のみ「Vega Theme」と記載します。
ストリートファイター2は1991年2月から稼働したアーケードゲームですが、その後1990年代のゲームシーンを席巻した対戦格闘ゲームブームのきっかけとなったタイトルです。
スト2の概要と対戦格闘ゲームブームに関しては、一昨年、スト2の「リュウのテーマ」を演奏した時に詳しく書きましたので、こちらをご覧ください。
スト2の音楽はワールドワイド
ストリートファイターシリーズのゲーム内容は、前作『ストリートファイター』(1987年)の時から「世界中を旅して各地の格闘家と対戦する」というもので、音楽も世界各国の民族音楽・民族楽器を採り入れたりしてワールドワイドなことになっていて、それがストリートファイターシリーズの魅力の一つにもなっています。
中でもスーパーファミコンをはじめ、様々なハードに移植されて空前のヒットになった「ストリートファイター2」の音楽は最も有名で、皆さんにも馴染みのあるものかと思います。
作曲は下村陽子さんで、『LIVE A LIVE』(1994年、スクウェア。このタイトルも世界中が舞台となって、色んな国の音楽の要素が散りばめられている)に代表されるように、ワールドワイドな音楽性を持ちながら、勇ましい戦闘曲を得意とする彼女の音楽性はスト2の世界観にバッチリはまって、ゲームの魅力を高めています。
下村陽子さんについてはこちらの記事で紹介しています。
スト2の舞台となるのは以下の国です。
日本(リュウ、ホンダ)
アメリカ(ケン、ガイル、バイソン)
中国(春麗)
ブラジル(ブランカ)
ロシア(ザンギエフ)
インド(ダルシム)
スペイン(バルログ)
タイ(サガット、ベガ)
このうち、バイソン、バルログ、サガット、ベガの四天王は、無印のスト2では操作できませんでしたが、ストリートファイター2ダッシュ(1992年)からプレイヤーキャラクターとして選択可能になりました。
自分が主にプレイしていたスーファミ版のストリートファイター2ターボは12人全員選択可能で、スピード調整機能が付いていました。
そしてスーパーストリートファイター2(1993年)では4人の新キャラクターと新ステージが追加されています。
各ステージの音楽はその国の民族音楽の雰囲気が採り入れられていますが、全体に軽快なテンポになっていて、メロディーは下村節です。
スペインステージ
ワールドワイドな魅力のストリートファイター2の音楽ですが、今回はスペインステージで流れる「バルログのテーマ」(Vega Theme)を演奏します。
スペインステージはバックが全面金網になっていて、バルログは金網に張り付いて登ることもできましたよね。
金網の向こうではフラメンコが演奏されています。
ここは大きなタブラオ(フラメンコを見せる飲食店)の中の特設ステージなのか、格闘イベント会場にタブラオブースみたいなのが併設されているのか?とか、どうでも良いことを考えてしまいますが(笑)
フラメンコよりパソドブレに近い音楽
そんな感じでバックの絵とか演出は「スペインといえばフラメンコ!」というノリで作られてそうなんですが、音楽のほうはフラメンコというよりは、パソドブレに近いものです。
パソドブレは闘牛をテーマにしたスペイン風の社交ダンスで、その音楽は闘牛場で楽団が演奏していた音楽が元になっています。
パソドブレはブラスバンドで演奏されることが多く、2拍子や4拍子の勇ましいメロディーが特徴です。
「バルログのテーマ」の主旋律は哀愁を帯びたメロディーでヨーロッパのジプシー音楽的な色彩もありますが、曲の作り方はパソドブレが一番近いかと。
フラメンコで軽快なテンポの2拍子と言えばタンゴ(アルゼンチンタンゴとは別物)ですが、この曲はフラメンコのタンゴとはだいぶ違います。
フラメンコ化より原曲再現を優先【ソロギター演奏】
自分はフラメンコ奏者だし、スペイン系の音楽ということで、当然フラメンコ化は意識はしますが、前々回の「時の傷痕」同様、なかなか難しいものがありました。
あまりフラメンコ化にこだわって裏リズムを増やしたりしすぎると、どんどん原曲から離れていくという。
なので、今回はあまりあれこれやらず、原曲イメージを大事にして演奏しています。
フラメンコギターのタッチでスペイン風のメロディーとコード進行を演奏すれば、嫌でもスパニッシュ・フラメンコ的な雰囲気は出ると思いますので。
まず、イントロのチャンチャカチャンチャカチャンチャカチャンチャン♪っていうリフ(イントロだけでなく1曲通してこのパターンのバッキングが入ってます)はラスゲアードぽいんですが、普通にラスゲアードで演奏すると、なんかダサくなってしまうんですよね。自分の主観ですが、ベタすぎるというかね。
そこで、ここだけは少しイメージを変えて、シンコペーション入りのセコのパターンで弾いています。
Aメロはもう1オクターブ低く演奏するか迷いましたが、高音でメロディーを強く出すことにして、シンプルにメロディー+ベースにコードを絡める形で、わりと原曲通りに演奏。
Bメロはオクターブ下げてAメロと落差をつけつつ、フラメンコ色を増量してゴリゴリ弾いています。
フラメンコカラーを付加するためにリズムトラックにパルマ(手拍子)を入れていますが、これもやり過ぎるとうるさい感じだったので、徐々に削って最低限の使用にしました。
なお、この曲には複数のバージョンが存在しますが、自分が採譜したのは一番馴染みがあるスーパーファミコン版のものです。
バルログのテーマ コード進行
イントロ
|Am|Dm(onA)|Am|Dm6(onA)|
|Am|Dm(onA)|Am|Dm6(onA)|
Aメロ
|Am|Dm(onA)|Am|Dm6(onA)|
|Am|Dm(onA)|Am|E7|
|FM7|Dm7|E7|E7|
|FM7|G7|A|A|
Bメロ
|Am|E7|C(onG)|D7(onF♯)|
|Dm(onF)|Am|B7|E7sus4 E7|
|Am|E7|C(onG)|Dm(onF)|
|E7|E7|
アウトロ
|Am|Dm(onA)|Am|Dm6(onA)|
|Am|Dm(onA)|Am|Dm6(onA)|
|Dm6(onA)|
コード進行分析
イントロ
■Aマイナー
|Ⅰm|♭Ⅵ|Ⅰm|Ⅳm|
|Ⅰm|♭Ⅵ|Ⅰm|Ⅳm|
Aメロ
|Ⅰm|ⅣmⅠm|Ⅳm|
|Ⅰm|Ⅳm|Ⅰm|Ⅴ7|
|♭Ⅵ|Ⅳm|Ⅴ7|Ⅴ7|
|♭Ⅵ|♭Ⅶ|Ⅰ|Ⅰ|
Bメロ
|Ⅰm|Ⅴ7|♭Ⅶ7|Ⅳ7|
|Ⅳm|Ⅰm|Ⅱ7|Ⅴ7|
|Ⅰm|Ⅴ7|♭Ⅶ7|Ⅳm|
|Ⅴ7|Ⅴ7|
アウトロ
|Ⅰm|♭Ⅵ|Ⅰm|Ⅳm|
|Ⅰm|♭Ⅵ|Ⅰm|Ⅳm|
|Ⅳm|
大枠はゲーム音楽王道進行【コード進行のポイント】
この曲はAマイナーの3コード(Am・Dm・E)が主体になって作られていて、それにEスパニッシュ的な動き(コードで言うとFとかG)が絡んできます。
イントロとAメロ前半は普通にAマイナーの調性です。
Aメロのラストでコナミ進行的なF→G→Aというのが出て来て一瞬Aメジャーキーぽくなりますが、次のBメロ頭ですぐにAマイナーキーに戻しています。
BメロではC(onG)やD7(onF♯)をうまく絡めつつ、最後だけスパニッシュっぽくEへ解決していますが、ループ後、次にすぐAmコードが来るので、ここのEコードはEスパニッシュのⅠというより、AマイナーのⅤという感じが強いです。
BメロのB7の部分は打ち込み間違えではないか?という指摘もあるみたいですが、ドミナントコードで♯9と♭9を絡めた動きって良くあると思うし、自分は普通に有りなんでは?と思います。
こうしてみると、曲のフィーリングはスパニッシュ=パソドブレの雰囲気ですが、コード進行は王道的なゲーム音楽進行(マイナー3コードとかコナミ進行とか)に少しスパニッシュな動きをプラスしている作り方ですね。
なんでも、この曲は20分くらいで作られたらしいし、得意なコード進行をスペインぽい雰囲気に寄せて、ささっと作った結果、こうなったんではないでしょうか。
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