1989年:アーケードゲーム
メーカー:タイトー(TAITO)
タイトル名:ダライアスⅡ(DARIUS2)
曲名:セイパパ(say PaPa)
作曲:小倉久佳(Hisayoshi Ogura)
演奏難易度:☆★★★★(難しい)
※この動画は2021年2月17日に再アップしリメイク版です。旧バージョンはこちらの「旧バージョン・没テイク集」に収録されています。
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第28弾は、ダライアス2より最終ステージ曲「say PaPa」です。
自分は曲を聴いてOGRこと小倉久佳さんを天才と認識するようになりました。
ダライアス2について
ダライアスシリーズは、タイトーが開発したお魚型の戦艦が出てくるシューティングゲームです。
自分は回転寿司に行くとダライアスのお魚戦艦が頭をよぎって(イカとかタコとかウニもあるでよ)、そのBGMが脳内再生されるほどのダライアスファンです。
「say PaPa」はダライアスシリーズの2作目として1989年に稼働開始したアーケードゲーム「ダライアス2」の最終ステージ曲ですね。
音楽は初代ダライアスからGダライアスまでのダライアスシリーズを担当したOGRこと小倉久佳さんです。
自分はダライアス2が出た時代(1989年)、そんなにゲームをやっていたわけではいのですが、たまーにゲーセンでアーケードゲームを冷やかしていました。
そして、1990年ごろフラッと時間潰しに入ったゲーセンでダライアス2をプレイしていた人がいて、めちゃめちゃ上手かったので後ろから見ていたんですが、音楽が気になって気になって。とくに最終ステージの「say PaPa」。
そのゲーセンは空いていて細かいところまで音が聴こえたんですよね。今でもおぼえてます。
初代ダライアスの音楽の素晴らしさは知っていたし、ダライアス2の音楽を聴くためにそのゲーセンに何回か通った記憶があります(←行き付けのレンタルCD屋の帰りに寄るのがルートになってた)。自力ではなかなか最終面までいけませんでしたが。
ダライアスシリーズの音楽シンクロ演出
ダライアス・シリーズの特徴として、ゲーム展開と音楽をシンクロさせた演出というのがあります。
この曲もステージセレクト時から流れはじめて展開とともに曲調が変わっていきます。
この演出はこれ以降のダライアスシリーズでは、さらにブラッシュアップされてトレードマークとなっていきます。
ダライアスシリーズは強制スクロール型なので30年近く前の技術でも秒単位でシンクロ演出できたわけですね。
ラスボス戦は名曲ばかり
ダライアスシリーズは名曲が多数ありますが、とくに最終ステージ→ラスボス戦は鉄板でしょう。
初代ダライアス→「BOSS7」
ダライアス2→「say PaPa」
ダライアス外伝→「SELF」
Gダライアス→「Adam」
とくにこの曲「say PaPa」は音楽構成の複雑さとフレーズの美しさ、そしてOGRさんの独自性、全てが高いレベルで達成されていて、採譜して分析したときも唸らされました。これ1曲で3日くらいかかったし……


「say PaPa」の構成
この曲「say PaPa」は、当時のゲーム音楽としては大作で、演奏動画も4:30ほどになりました。
曲の内容も凝っています。全部で5部構成になっていて、生命の誕生というテーマです。
1.兆し
オルゴールっぽい音でシーケンスパターンのイントロ(演奏では省略)
2.受精
ベースをフューチャーしたゆったりした幻想的なパート
3.成長
ドラムが入ってメインテーマへ
4.誕生
「PaPa」の声をキッカケに始まるもう一つのテーマ
5.未来
3拍子になってオルゴールのエンディング
曲名からもわかるように、小倉さんの娘さんの誕生が作曲の動機になったようです。
「誕生」パートの入りのキッカケとなる「PaPa」という赤ちゃんの声は、小倉さんの娘さんの声のサンプリングだそうです。
今までで一番時間をかけた曲【ソロギター演奏】
今回は撮影も今までで一番大変でした。
やっぱり1分の動画を撮るのと4分半の動画を撮るのでは、かかる労力がちがいますね。詳しくは次の項でお話します。
この曲は組曲形式でドラマチックな展開をするので、前々回の「決戦!サルーイン」同様、リズムトラックのプログラムをしました。
構成も凝っていますがコード進行もかなり複雑で覚えるのも一苦労でした。
原曲のキーは♯が6つとか7つとか調号が多いですが、ギターアレンジの結果、結構解放弦が使えることが判明したので、原曲どおりのキーで演奏しています。
イントロ「兆し」について
先週録画のバージョンはイントロの「兆し」の部分も演奏していたのですが、この部分はどうもアレンジが上手くいきませんでした。
曲の頭という重要なポイントだし、いろいろ試した結果、いっそ無いほうがいいのでは?という判断で新バージョンでは思いきってカットしました。
ちなみにイントロとエンディングは3拍子(正確には2分の3拍子)です。
say Papa コード進行
「兆し」イントロ(演奏では省略)
F♯M7
「受精」テーマ1
BM9 BM9 F♯7 F♯7
G♯m7 G♯m7 F♯M7 F♯M7
BM7 BM7
BM7 Bm7 F♯M7 D♯(onG)
BM7 Bm7 F♯M7 D♯(onG)
C♯sus4
「成長」テーマ2
B69 B69 B69 B69
BM7 BM7 E7 E9
BM7 BM7 E7 E9
A A FM7 G7
BM7 BM7 E9 E9
BM7 BM7 E9 E9
D Dm6 E7(13) E7(13)
D Dm6 E7(13) E7(13)
D D Dm E7
D D Dm E7
AM7 AM7 AM7 AM7
ブリッジ
G♯add9 G♯add9 E7(♯11) E7(♯11)
G♯add9 G♯add9 E7(♯11) E7(♯11)
E69 E69 E69 E69
E69 E69 E69 E69
E69 ※このへん演奏では短縮
「誕生」テーマ3
F♯ F♯9 F♯ F♯
F♯ F♯9 F♯ F♯
G♯7sus4 G♯7 B BM7
EM7 EM7 C♯7 C♯7
F♯ F♯9 F♯ F♯
F♯ F♯9 F♯ F♯
G♯7sus4 G♯7 B BM7
EM7 EM7 C♯7 C♯7
D♯m7 D♯m7 C♯7 C♯7
D♯m7 D♯m7 C♯7 C♯7
BM7 BM7 G♯7 G♯7
D♯m7 D♯m7 D♯m7 D♯m7
BM7 BM7 G♯7 G♯7
D♯m7 D♯m7 D♯m7 D♯m7
BM7 BM7 E7 E7
A9 A9 FM7 G7
A A
F♯madd9 Gadd9 F♯madd9 Gadd9
F♯madd9 Gadd9 F♯madd9 Gadd9
F♯madd9 Gadd9 ※このへん演奏では短縮
「未来」オルゴールエンディング
F♯ F♯ G♯m7 G♯m7
G♯m7 G♯m7 F♯ F♯
D♯m7 D♯7 G♯m7 C♯7
コード進行分析
「兆し」イントロ(演奏では省略)
■F♯メジャー
ⅠM7 ⅠM7 ⅠM7 ⅠM7
「受精」テーマ1
ⅣM7 ⅣM7 Ⅰ7 Ⅰ7
Ⅱm7(Ⅳ代理)Ⅱm7 ⅠM7 ⅠM7
ⅣM7 ⅣM7
ⅣM7 Ⅳm7 ⅠM7 Ⅵ7
Ⅴ7sus4(BメジャーのⅡ7と共用)
「成長」テーマ2
■Bメジャー(下属調)
Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ
ⅠM7 ⅠM7 Ⅳ7 Ⅳ7
ⅠM7 ⅠM7 Ⅳ7 Ⅳ7
■Aメジャー(全音転調)
Ⅰ Ⅰ ♭ⅥM7 ♭Ⅶ7
■Bメジャー(全音転調)
ⅠM7 ⅠM7 Ⅳ7 Ⅳ7
ⅠM7 ⅠM7 Ⅳ7(AメジャーのⅤ7と共用) Ⅳ7
■Aメジャー(全音転調)
Ⅳ Ⅳm6 Ⅴ7 Ⅴ7
Ⅳ Ⅳm6 Ⅴ7 Ⅴ7
Ⅳ Ⅳ Ⅳm Ⅴ7
Ⅳ Ⅳ Ⅳm Ⅴ7
ⅠM7 ⅠM7 ⅠM7 ⅠM7
ブリッジ
■G♯メジャー(半音転調)
Ⅰ Ⅰ ♭Ⅵ7 ♭Ⅵ7
Ⅰ Ⅰ ♭Ⅵ7 ♭Ⅵ7
♭Ⅵ(F♯メジャーの♭Ⅶと共用) ♭Ⅵ ♭Ⅵ ♭Ⅵ
♭Ⅵ ♭Ⅵ ♭Ⅵ ♭Ⅵ
♭Ⅵ
「誕生」テーマ3
■F♯メジャー(全音転調)
Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7
Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7
Ⅱ7sus4 Ⅱ7 ⅣM7 ⅣM7
♭ⅦM7 ♭ⅦM7 Ⅴ7 Ⅴ7
Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7
Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7 Ⅰ7
Ⅱ7sus4 Ⅱ7 ⅣM7 ⅣM7
♭ⅦM7 ♭ⅦM7 Ⅴ7 Ⅴ7
Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅴ7 Ⅴ7
Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅴ7 Ⅴ7
ⅣM7 ⅣM7 Ⅱ7 Ⅱ7
Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅵm7
ⅣM7 ⅣM7 Ⅱ7 Ⅱ7
Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅵm7 Ⅵm7
ⅣM7 ⅣM7 ♭Ⅶ7(AメジャーのⅤ7と共用) ♭Ⅶ7
■Aメジャー(短3度上)
Ⅰ Ⅰ ♭ⅥM7 ♭Ⅶ7
Ⅰ Ⅰ
■F♯マイナー(平行調)
Ⅰm ♭Ⅱ Ⅰm ♭Ⅱ
Ⅰm ♭Ⅱ Ⅰm ♭Ⅱ
Ⅰm ♭Ⅱ
「未来」オルゴールエンディング
■F♯メジャー(同主調)
Ⅰ Ⅰ Ⅱm7 Ⅱm7
Ⅱm7 Ⅱm7 Ⅰ Ⅰ
Ⅵm7 Ⅵ7 Ⅱm Ⅴ7
非常に複雑な難曲【コード進行のポイント】
コード分析、めちゃめちゃ大変でした。
音取ってコード付けてみても、キーがどこでやってるのかわからないので、コードネームも正しいのかわからない、という状態でした。
こういう難曲の分析・アレンジに取り組む時は、曲中の分かりやすい進行を探して、まずその部分だけコード付けと調性の分析をして、そこを起点に前後に広げていきます。
キーの決定は前回のFF5メインテーマ同様、部分演奏しながらそこのキーの中心であるⅠコードを判断しました。
この曲の最大の特徴として、同音ルートのメジャー・マイナー切り替えをとても効果的に使っています。
それから小倉さんの作曲の特徴として、同じフレーズを3度違うコード上で繰り返すのがあります。第一弾として取り上げたCaptain Neoでも出てきましたが、この曲でも使ってますね!
あとポイントになるところは2箇所あります。
- 「成長」のBM7→E7が続いた後、唐突に出てくるA→G7→FM7
- 「誕生」の冒頭Ⅰ7→Ⅱ7sus4
どちらも変態的かつ美しいですね。
キーはF♯とメインテーマのBが軸になっていまが、いろんなキーが入り乱れます。分析も複数成り立ちそうですが、最もシンプルと思われる形でまとめました。
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