現在のゲーム音楽【ゲーム音楽史12】

ゲーム音楽史では、前回までで2012年頃までのゲーム音楽を見てきましたが、今回は、2013年頃以降現在までを「現在のゲーム音楽」と区分してお話していきます。

具体的には据え置きゲーム機ならプレステ4・WiiU・XboxOne以降。モバイルゲーム機ならNintendo3DS・PSvita以降ということになりますね。

また、近年ではiOSやAndroidなどのスマートフォンや、Steamなどのダウンロードプラットフォームが台頭してきて、ゲーム業界の構造も随分と様変わりしてきました。

では、プラットフォーム別に見ていきましょう。

現在のコンシューマーゲーム機

まず、据え置きゲーム機の市場ですが、2013年前後に各社とも新世代機を投入しています。

ただ、音楽再生に関する進化は既に全く無くなっていると言って良いでしょう。ハイレゾなどに対応してみたところで、一般にゲームで使われるような再生機器ではほぼ変化が分からないので、これ以上サウンドにリソースを割く意味はないわけです。というわけで、各機種とも概要のみの解説に止めます。

WiiU

WiiUは、2012年12月発売のWii後継機で、Wiiとは高い互換性があります。Wiiと同様、多彩なインターフェイスが特徴で、とくにファミリー層・ライト層の支持を集めました。

プレイステーション4

プレイステーション4は、2013年11月、プレイステーション3の後継としてソニーから発売されました。オーディオはAMDのDSPチップを搭載。

2022年現在、プレイステーション5との世代交代が進行中ですが、半導体不足によるプレステ5の品薄がなかなか解消せず、結果的に10年近いロングラン商品となっています。

Xbox One

XBoxOneは2014年9月発売(欧米では2013年11月発売)のマイクロソフト社製のゲーム機ですが、ローカライズに時間がかかり、日本含むアジア圏で10か月ほど発売が遅れたことで、Xboxはアジアでのシェアを失いました。Xbox360との互換性は基本的にはありません。

Nintendo Switch

ニンテンドーSwitchは2017年3月発売の任天堂の最新機種となります。モバイルと据え置き機の融合を目指して開発されました。

タブレット状の端末にコントローラをドッキングさせてモバイル機として使うことも可能です。

プレイステーション5

2020年11月12日にプレイステーション5が発売されましたが、2年近く経過した2022年10月現在も品薄状態が続いています。

サウンドに関しては、プレステ4からあまり進歩は無いので、プレステ5の登場でゲーム音楽が大きく変化するということは無さそうですが。

2013年以降のコンシューマーゲームの音楽

2013年以降の据え置きコンシューマー機のゲーム音楽で自分がとくに良いと思ったものをご紹介します。

これはあくまで自分個人の印象だし、今後も続くかはわかりませんが、最近(これを書いた2018年時点の話)のゲーム音楽はモバイル機含む家庭向けゲーム作品では、任天堂が突出しているように思います。

クリプト・オブ・ネクロダンサー(Brace Yourself Games)
ハウス・トランス系中心ですが、メロディが強いのが多くてかなり好みです。「Mausoleum Mash」がイイですね。

ゼノブレイドクロス(任天堂)
澤野弘之さん作品。前作とかなり趣向違いますが、こちらも良いです。ランダム文字列みたいな曲名が多いんですが、自分は「46-ri9」が好きです。

スプラトゥーン(任天堂)
これも音楽は非常に人気がありますね。気分上げる系のドライなロックアレンジ曲が多いですが、自分は「Splattack!」が好きです。

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(任天堂)
ピンポイントで「師匠の詩」が好きです。3拍子泣きのアコーディオン。

2011年以降のモバイルゲーム機

モバイルゲーム機は、据え置き型より一足早く2011年頃に世代交代しています。

3DS・PSvita以降は、モバイルゲーム機も波形再生のみとなり、音楽再生では他のプラットフォームと全く差がなくなります。

ニンテンドー3DS

ニンテンドー3DSは2011年2月発売。見た目はDSチックですが、大幅に性能が上がっていて、高性能スマホにコントローラーが付いているというような仕様です。

3Dグラフィック、波形音楽再生、インターネット、内蔵カメラなど、出来る事の範囲が大きく広がりました。

プレイステーションVita

プレイステーションVitaは2011年12月発売のPSP後継機です。これも3DS同様、ほぼスマートフォンのような仕様になっています。

3DS・Vita世代モバイルゲーム機のゲーム音楽

3DSとPSvitaに世代交代した2012年以降のモバイルゲーム機のゲーム音楽で、自分が良いと思ったものを挙げます。

ファイアーエムブレム覚醒(任天堂)
近藤嶺さんと森下弘生さんが音楽を担当。近藤嶺さんの曲良いですねー。自分は「貴様らが…姉さんの言葉を語るな」が一番好きです。

ブレイブリーデフォルト フライング・フェアリー(スクエニ)
Revoさん作品。音楽は熱狂的ファンも多いです。メタルっぽいディストーションギターをフィーチャーした曲が多いですが、アレンジはストリングスやブラスやピアノが沢山入っていたりで独特です。名曲多数ですが、自分は「邪悪なる飛翔」かな。人気曲「地平を食らう蛇」もすごい力作なんですが、最後のほうの曲調がネットで「暴●んぼう●軍」て言われていて、もうそれにしか聴こえなくなってしまった(笑)

ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア(任天堂)
景山将太さん、足立美奈子さんらが音楽を担当。ポケモンシリーズの音楽では自分はこの作品が一番好きです。とくに「天翔ける夢」と、組曲になっているピアノ曲の「エンディングテーマ」が良いですね。

S.T.E.A.M. リンカーンVSエイリアン(任天堂)
これも任天堂だったんですね。近年の任天堂凄まじいな……「Dance and Death “body”」が、かなり気に入ってます。

カービィ ロボプラネット(任天堂)
固定ファンの多いカービィシリーズの中でも音楽の総合点でいったら1、2を争う出来と思います。カービィの音楽はテクノっぽくて海外でも相当な人気があります。音楽担当は石川淳さん&安藤浩和さんのベテランコンビ。

2013年以降のPCのゲーム音楽

PCのゲーム音楽は前回の時代と同様にフリーゲーム系が強いと思います。これからはいろんな意味で個人・アマチュアが活躍する時代でしょうね。

艦隊これくしょん(角川)
音楽は一通りしか聴いてないのですが、音楽のクオリティも高いと思うし、なにより社会現象化したゲームとして取り上げました。これの他にも、前回紹介した洞窟物語とか、東方P、アンダーテールとか、PCというプラットフォームは個性的なゲームが物凄い影響力持つことがあるので目が離せません。

東方輝針城(東方project)
東方projectの近年の作品の音楽ではこれが一番好きです。「輝く針の小人族」が良いと思います。ZUNさんよくこれだけメロが出てきますよね。ほんとに感心します。

ムラサキ(カタテマ)
フリーゲーム。てつ氏と音楽担当のMusMus氏の作品。これは最近ネットで初めて知ったんですが音楽が素晴らしいです。ムラサキでは「Flowers Sprouting on a Charcoal」が良かったです。同じ作者で他にも「いりす症候群」シリーズとか全部音楽が良いのでお薦めいたします。

アンダーテール(Toby Fox)
2015年(日本では2017年)にリリースされたトビー・フォックス氏が音楽から何から、全て一人で作り上げたゲーム。音楽もグラフィックも1980年代後半から1990年代前半レトロゲームのテイスト満載で相当マニアックだな、と思いました。音楽はこの人元々本職なのかな?音楽性も独自のものがあって普通にチップチューンとして聴いても素晴らしい出来です。作者によると、MOTHERや東方Pの音楽の影響を受けているようです。自分のアンダーテール体験はこちらの記事で書いています。

ダウンロードプラットフォームの台頭

光回線が普及したあたりから、PCの世界ではコンテンツのダウンロード販売は一般的なものとなりましたが、ゲームの業界でも2000年代後半頃からゲームのダウンロード販売が模索されてきました。

ゲームハードメーカー謹製のプラットフォームとしては、ソニーのPSストアや任天堂のバーチャルコンソールが代表的ですが、近年はSteamという全世界的な巨大プラットフォームも出現して、従来のゲーム機市場を食ってしまう勢いで発展しています。

ここでは、近年話題になっている2つのダウンロードプラットフォームをご紹介しましょう。

Steam

SteamはValveコーポレーションが開発・運営するPC向けのゲームダウンロード販売プラットフォームで、このサービスによってPCさえあれば世界中のあらゆるプラットフォームのゲームが手軽にプレイできるようになりました。

Steamは2002年頃から開発が始まり、2004年12月に『ハーフライフ2』を配信開始することで正式にスタートしましたが、2010年にMacに対応したあたりから全世界的に普及し始め、近年は日本でも大手ゲームメーカーが続々と参入して活況を呈しています。

Steamは、古今東西の様々なゲームが安価で入手出来る、ある意味、最強のプラットフォームなのですが、PC自体の普及率が既に頭打ちなのがネックになるのではないかと。

2022年2月に「Steam Deck」というSteamのタイトルがプレイ出来るモバイル端末が発売されましたが(日本版は2022年末発売)、果たしてこれがどの程度普及するのか推移を見守りたいです。

アーケードアーカイブス

アーケードアーカイブスは2014年にサービスを開始したハムスターと日本一ソフトウェアによるゲームのダウンロード販売プラットフォームで、レトロ系アーケードゲームのタイトルを中心に取り扱っています。

当初はプレイステーション4のみのサービスでしたが、その後、XboxOne、ニンテンドーSwitch、PC(Windows10)、スマートフォン(iOS/Android)でも供給されるようになりました。

現在、アーケドアーカイブスには往年のアーケードゲームの版権を持っている大手メーカーの多くが参入していて、週に1タイトルのペースで新作がリリースされています(2022年時点で200タイトル以上)。

アーケドアーカイブスはSteamの国内レトロ系特化版といったイメージですが、対応プラットフォームが多彩で、スマホにも対応しているのが大きなポイントだと思います。

いずれにせよ、こういうダウンロードプラットフォームのお陰で、このブログで紹介しているような往年のゲーム音楽にも再評価の機会が与えられる事になるわけで、大変良い事なのではないでしょうか。

スマートフォンという新しい形態

もう一つ、スマートフォンについても触れておかなければならないでしょう。

ご存知のように、2010年頃から携帯電話に置き換わる形でスマートフォンが急激に普及し、現在ではスマートフォンを持っていない人のほうが珍しいくらいになっています。

普及度合いで言えば、PCやゲーム機の比ではないですよね。

当然ながらゲーム業界でも、スマートフォンというプラットフォームが重要視される流れは非常に強く、また、iPhone・Androidのアプリゲームは個人で制作して簡単に流通させられるシステムなので、現在では凄まじい数のスマホゲームタイトルが出回るようになりました。

当然、スマホゲームにも星の数ほどのゲーム音楽が存在します。

スマートフォンは音楽再生やグラフィックなどは3DSやVitaなどの携帯ゲーム機とそんなに変わりませんが、以下のような特徴があります。

  • 原則、画面タッチによる操作なのでゲーム性に大きな制約がある
  • 通信やコミュニケーションの機能は優れているのでMMOなどの形態に適している
  • 高機能なGPSやカメラを内蔵するのでそれを利用した新しいゲーム形態が生まれている
  • バッテリーや操作性などの問題で長時間の操作は適さないので「放置系」など短時間の操作で成立するゲームが人気
  • 音楽は基本的にスマホ内蔵のショボいスピーカーで再生されるが、レトロ系ゲーム音楽の音質やアレンジとは相性が良い

こんな要因があるので、ゲーム性は従来のゲームと大きく異なったものが多いのも事実です。

ゲーム音楽ということで言うと、大きな会社がリリースする作品は、ゲーム音楽作曲家含めた有名音楽作家に制作を依頼したりもしますが、なにしろ数が多すぎて、いつの間にかサービスが終わって消えてしまうゲームも多いし、音楽も「大量に作られて、使い捨て的に大量消費されている」というイメージが拭えません。

そういう理由で、自分は今ひとつスマホゲームの音楽に興味が持てていなくて、今はこれくらいの事しか書けないのですが、スマートフォンというプラットフォームはレトロ系ゲーム音楽と相性が良かったりするし、個人が作ったアプリを手軽に配信出来るシステムもさらなる広がりを予感させます。

ゲーム音楽歴史 あとがき

こうしてゲーム音楽の歴史を俯瞰してみると、ゲーム音楽はプレステ時代あたりから質的に変わりはじめましたが、現在は1周回って、レトロ系手法の再評価なんかの過程も経て、なんでもアリの感じがします。

ゲーム音楽というのは、昔から特異な立ち位置の音楽でしたが、映画音楽とか一般的な劇伴と比べて強烈な個性が出せるジャンルだし、インストゥルメンタル音楽という括りで考えると、ゲームは数少ない商業的需要源の一つであり、まだまだ面白い可能性を秘めていると思います。

自分はゲーム音楽とは趣味での演奏・執筆という形での関わりですが、ずっと追い続けたいです。

――今後の執筆活動ですが、次回からはゲーム音楽史の補完記事として、このゲーム音楽史を踏まえた、『ゲーム音楽論』の展開を考えています。

今後ともよろしくお願いいたします!

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