スナッチャー「Twilight of NEO KOBE City」【ギター演奏・コード進行42】

スナッチャー Twilight of NEO KOBE City
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発売年月:1988年11月
機種:
PC(PC-8801mkⅡSR、MSX2)
メーカー:
コナミ(KONAMI)
タイトル名:スナッチャー(Snatcher)
曲名:Twilight of NEO KOBE City
作曲:深見誠一(Seiichi Fukami、コナミ矩形波倶楽部)
演奏難易度:☆☆☆☆★(初心者向け)

ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第42弾は、スナッチャーより「Twilight of NEO KOBE City」です。

自分は、スナッチャーというゲームとその音楽には1980年代のカルチャーを強く感じるので、今回はそのへんの事も語っております。

PC88版・MSX版のオープニングタイトル曲【曲紹介】

スナッチャーは1988年にコナミから発売されたアドベンチャーゲームです。

ゲーム音楽史などでも何回か書いていますが、この年代のゲーム音楽はコナミが一番勢いがありました。

1980年代後半のコナミ作品はゲーム音楽的に外れ作品は一つもないと言っても良さそうです。

この作品『スナッチャー』も音楽は素晴らしかったです。

この曲「Twilight of NEO KOBE City」は、最初に発売されたPC88版とMSX2版のタイトル曲です。

これ以降の移植作(PCエンジン・メガドライブ・プレイステーション・サターン)のタイトル曲はサックスをフューチャーした「ONE NIGHT IN NEO KOBE CITY」に変更になっていて、こちらも味わい深い曲ですが、自分はやはり「Twilight of NEO KOBE CITY」のほうが馴染みがあります。

このスナッチャーという作品と、タイトル曲「Twilight of NEO KOBE CITY」ですが、色んな意味で1980年代後半という時代が凝縮されているように感じますので、今回は1980年代というテーマでお話しようかと思います。

アドベンチャーゲームというジャンル

スナッチャーはアドベンチャーゲームですが、多分、今の若い世代はあまり馴染みがないジャンルかもしれません。

アドベンチャーゲームは、簡単に言うと「選択肢分岐つき紙芝居」ですかね。

1980年代初頭からアメリカのAppleⅡ向けのアドベンチャーゲームが発売されていて、かなりの人気がありました。

当時のPCの性能では動画やアニメーションは無理でしたから、一枚絵とテキストを主体にしたアドベンチャーゲームはPCゲームの主力ジャンルとなっていきました。

日本でも1983年から1986年あたりにかけてハドソンやエニックスが沢山のアドベンチャーゲームタイトルを出していました。

アクションゲーム主体のアーケードゲームやファミコンとまた違った流れです。

アドベンチャーゲームの中でも人気作品はファミコンに移植されたりしましたが、文字入力と細かいグラフィックが不得手なファミコンには適しませんでした。

アドベンチャーゲームの衰退

PCゲームの世界で一時は一大ジャンルを形成していたアドベンチャーゲームですが、1987年ごろを境に徐々に衰退していきます。

PCの性能が増して動きのある表現が進歩、新しいタイプのゲームが台頭してきたためです。

アドベンチャーゲームはゲーム性の面で、1985年ごろから日本でも人気化してきたRPGや、より本格的な思考力を使うシミュレーションゲームに押されていきます。

スナッチャーはそうしたアドベンチャーゲームが栄えた時代の最後のほうに出された名作であり、アドベンチャーゲームの一つの到達点と言えます。

一枚絵スタイルのアドベンチャーゲームは、1980年を象徴するゲームジャンルでしたが、1990年代以降は『弟切草』『かまいたちの夜』などのサウンドノベルに形を変えたり、PCの恋愛・アダルト系ゲームというフィールドで生き残っていくことになります。

サイバーパンクという世界観

スナッチャーの世界観ですが、これも1980年代の一つのトレンドだった「サイバーパンク」です。

サイバーパンクのムーブメントは、映画『ブレードランナー』『マッドマックス』あたりに始まり、日本では、漫画『AKIRA』北斗の拳』などに象徴されるような、荒廃した近未来が舞台になった映像作品や漫画・文学を「サイバーパンク」とカテゴライズしていました。

このサイバーパンクという世界設定は、1980年代を通して確立されて一つの流れとして定着、それ以降の多くの作品に多大な影響を与えています。

ゲームでは初期のものだとザ・スクリーマーなどがありましたが、真・女神転生もサイバーパンクの流れを汲むものです。

スナッチャーの舞台は近未来の神戸で、人間になりすます殺人アンドロイドとそれを追う捜査官の話です。

スナッチャーは世界観という意味でも1980年代を象徴しています。

1980年代を感じる音楽

そして、今回演奏している「Twilight of NEO KOBE City」をはじめとしたスナッチャーの音楽も1980年代のカラーが際立っていますよね。

「Twilight of NEO KOBE City」に関して言うと、コード進行・フレージング・アレンジ・使用音色などの全てが、少し洒落たニューミュージックや、1980年代前半から中頃に流行したインストのフュージョン音楽を彷彿とさせます。

音色については、PC88版(FM音源)とMSX2版(SCC音源)で違いますが、どちらもエレクトリックピアノとシンセベース的な音色がメインになっていて1980年代の雰囲気を伝えています。

――このように、自分が感じるスナッチャーの印象は「1980年代の成果物の塊のような作品だなー」というものなのです。

88版とMSX2版のアレンジの違い

  • PC88版はFM音源+SSG音源(PSGとほぼ同じ)
  • MSX2版はSCC音源(波形メモリ音源)

という違いがあり、曲は同じですが音源に合わせてアレンジが変えられています。

このあたり芸が細かくて、いかにコナミが音楽を重視していたかがうかがえます。

PC88版のアレンジも捨てがたいですが、MSX2版のアレンジは音色の少なさを補った上で厚みを持たせていて素晴らしいですね。

ちなみに、MSX2版はゲームのものと別に音源カートリッジが付属していて、これが単体で動いたため、後々MSX2での音楽制作に流用されて、本来の用途と別の形で大活躍することになります。

深見誠一さん【作曲者】

この時代のコナミのゲーム音楽を作っていたコナミ矩形波倶楽部は大所帯のうえ、一つの作品に数人が参加していたり、スタッフクレジットも大雑把だったりで、誰がどの曲担当だったか不明な場合も多いです。

スナッチャーのメインコンポーザーは碇子正広さんですが、クレジットを調べてみると、この曲は深見誠一さんの作となっていますので、今回は深見誠一さんを紹介いたします。

深見誠一さんは「プロフェット深見」の通称で知られています。

コナミ入社前はプログレバンドをやっていて、コナミではアーケードゲームが主な担当だったようです。

主な担当作品はグラディウス2、グラディウス3、サンダークロスなど。

コナミ退社後はIT企業に転職されて、それ以降ゲーム音楽は作っていないようですが、近年になってコナミ矩形波倶楽部の同僚である吉川もとあきさんらとバンドを結成するなど、音楽活動は続けておられるようです。

初級向けシンプルアレンジ【ソロギター演奏】

まず最初に、この曲は演奏予定では無かったんですが、取り組んでいた別曲のアレンジ(というか、練習・暗譜の問題ですが)が難航して、まとまめるのに時間がかかる感じになったので、急遽、短時間でまとまりそうな曲を選曲してアレンジ・録画しました。

スピーディーにアレンジできる選曲

取り組んでいる曲のアレンジが難航して、急遽代わりの曲を用意するような状況はかなり頻繁にあるんですが、そういう場合の緊急選曲基準は以下の通りです。

  • コード進行がシンプルでおぼえやすそう
  • 難しそうなフレーズが出てこない
  • リズムトラックも無しか超シンプルなもので行けそう

この3つの条件で選べば、だいたい星1つか2つくらいの難易度でおさまって、2、3日で仕上がる選曲ができます。

結果として、この曲もシンプルで初心者でも取り組みやすい内容になったと思います。

アレンジがシンプルだからといって音楽的にダメかというと全くそんなことはなく、むしろ余裕が出ていい演奏になることが多いんではないでしょうか。

アレンジの上手さというのも、難易度を抑えつつ最大の演奏効果を上げるということと思います。

フラメンコカラーも

このアレンジはフラメンコギターのファルーカタンゴ・デ・マラガの感じも入れつつ演奏しています。

イントロはたっぷり間をあける感じでフェルマータからAメロへ導入、徐々にテンポ感を出して弾いていきます。

エンディングに細かいアルペジオが出てきたりしますが、こういうところは手癖でやっているだけなので重要ではなく、無理に弾かなくても構いません。

Twilight of NEO KOBE City コード進行

イントロ
|Amadd9|Amadd9(onG)|
|Amadd9(onF)|Esus4 Em7|
|Amadd9|Amadd9(onG)|
|Amadd9(onF)|E7|

Aメロ
|Am|E7(onG♯)|C(onG)|D7(onF♯)※1|
|FM7|Em7(onG♯)|Am7|E7|
|Am|E7(onG♯)|C(onG)|D7(onF♯)※1|
|FM7|Em7|Am7|A7|

Bメロ
|Dm7|G7|CM7|Am7|
|Dm7|G7|CM7|Em7 E7(♭9)|

※1 演奏ではベースがルート音

コード進行分析

イントロ
■Aマイナー
|Ⅰm|♭Ⅶ|♭Ⅵ|Ⅴm7|
|Ⅰm|♭Ⅶ|♭Ⅵ|Ⅴ7|

Aメロ
|Ⅰm|Ⅴ7|♭Ⅲ|Ⅳ7|
|♭Ⅵ|Ⅴm7|Ⅰm7|Ⅴ7|
|Ⅰm|Ⅴ7|♭Ⅲ|Ⅳ7|
|♭Ⅵ|Ⅴm7|Ⅰm7|Ⅰ7|

Bメロ
|Ⅳm7|♭Ⅶ7|♭ⅢM7|Ⅰm7|
|Ⅳm7|♭Ⅶ7|♭ⅢM7|Ⅴm7 Ⅴ7|

Aメロはベースが半音下降【コード進行のポイント】

コード進行はシンプルですが、細かい味付けが効いていて味わいのある仕上がりになっています。

AメロはベースがキールートのA音から半音ずつ下がっていく王道進行です。

D7(onF♯)のところ、本当はベースをF♯にして半音進行を維持したかったのですが、メロディーと演奏性を優先してベースはルートのD音に変更しました。

あと、Ⅴコードにドミナント(Ⅴ7)ではなくドミナントマイナー(Ⅴm)を多用してるのもポイントで、くどくなりすぎるのを回避してスッキリ風味になっています。

Bメロは5度進行中心で、いたってシンプルです。

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