発売年月:1986年8月
機種:ファミリーコンピュータ ディスクシステム(Famicom Disk System)
メーカー:任天堂(Nintendo)
タイトル名:メトロイド(Metroid)
曲名:タイトルBGM(Title BGM)
作曲:田中宏和(Hirokazu Tanaka)
演奏難易度:☆★★★★(難しい)
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第96弾は、初代メトロイドのオープニングタイトル曲です。
初代メトロイドの音楽は全体に劇伴(映像作品や演劇などに付けるBGM)的な作り方で、メロディーで主張するような感じでは無かったのですが、このオープニングテーマはメロディックで非常に印象に残るものでした。
この作品、ゲームとしても非常に面白かったんですが、先日(2021年10月8日)メトロイドシリーズの最新作『メトロイド ドレッド』が発売されて、物凄い気になっているところなんですよね。
そういう事もあって記憶が甦り、今回の選曲となりました。
メトロイド作品概要
メトロイドは、1986年8月6日にファミコンディスクシステム用ソフトとして任天堂から発売されたサイドビュー型の探索アクションゲームで、現在まで続くメトロイドシリーズの第1作です。
1986年当時、弟と2人で夢中になって遊んだ記憶がありますが、自分的には、同じ任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』より、メトロイドのほうにハマっていたくらいだし、ファミコンのゲーム作品として屈指の名作だと思います。
クリアタイムや達成度によってエンディングが変化したり、主人公サムス・アランが実は女性だったりとか、色々楽しめる要素はありましたが、メトロイドの魅力は、その世界観と謎解き要素ですよね。
世界観はSFで、見知らぬ惑星を一人で探索する緊張感がたまりません。
子供心にメトロイドの不気味さはトラウマになるレベルだったし、異形の生物や鳥人族など、敢えて多くは説明せず、プレイヤーの想像力を掻き立てるような世界観の演出は秀逸でした。
そして、アイテムを入手することで出来るアクションが増えて、行動範囲が広がっていくシステムも素晴らしかったです。
海外での人気
メトロイドは日本国内より欧米で人気化していて、これは悪魔城ドラキュラ(Castlevania)シリーズと同様の現象ですが、どちらのシリーズも①サイドビュー探索アクション②シリアスな世界観③リアルな等身のキャラクターなど、共通項が多いですよね。
海外では、このタイプのゲームを指す「メトロイドヴァニア(Metroidvania)」という造語が使われていて、現在ではゲームのカテゴリーの1つとして定着しています。
ちなみに、海外にはディスクシステムが無かったので、メトロイドはNES用のロムカートリッジ版として発売されていて、音源が違うため音楽のアレンジも若干違うようです。
続編について
初代メトロイドは2004年にゲームボーイアドバンス版『メトロイド ゼロミッション』としてリメイクされていて、様々な追加要素がプラスされました。
自分は、ゼロミッションもプレイしましたが、メトロイドⅡ(1992年、GB)、スーパーメトロイド(1994年、SFC)、メトロイドフュージョン(2003年、GBA)も随分ハマってやりこんだものです。
でも、メトロイドプライムシリーズはイマイチのめり込めなくて(3Dゲーム苦手なんですよ……)、それ以降のメトロイドシリーズはプレイしていないんですよね。
そんな感じで、ここ15年間くらいメトロイドシリーズをプレイしていなかったんですが、最新作の『メトロイド ドレッド』は自分の好きな2Dベースだし、完全新作ということで、大変気になるところです。
メトロイドの音楽
メトロイドの音楽は『MOTHER』や『パルテナの鏡』を手掛けた田中宏和さんが担当しました。
ゲーム中のBGMは劇伴的な作り方で、ゲームの世界観を反映して不気味な雰囲気のものが多かったのですが、田中さん曰く、ベトナム戦争をテーマにした映画『バーディ』(1985年、アメリカ)の音楽から影響を受けたといいます。
そんな中で、今回演奏している「タイトルBGM」は幻想的で印象深いものでした。
ちなみに『メトロイド ゼロミッション』のオープニングデモでは、この曲「タイトルBGM」がほぼ原曲のままのアレンジで使われていますが、最新作の『メトロイド ドレッド』でも、タイトル→設定画面の音楽として同曲のアレンジバージョンが使用されています。
中間部をトレモロでアレンジ【ソロギター演奏】
この曲は「循環コード+アルペジオ+シンプルなメロディー」という作りなので、分業すれば簡単に演奏出来そうですが、「ギター1本で」となると、かなり難儀な部類じゃないでしょうか。
オリジナルのキーはDメジャーキーとDマイナーキーの混合調ですが、ギターでの演奏キーを色々試した結果、Eメジャーキー/Eマイナーキーが解放弦がフル活用出来て再現度も高く出来そうだったので、Eメジャーキー/Eマイナーキーに移調して演奏しています。
では、曲の頭からポイントを解説していきましょう。
まず、イントロは機械的な持続低音がキールートで鳴っている劇伴的なセクションで、重苦しく不気味な雰囲気ですよね。
ここの重さが欲しくて、6弦解放が使えるEメジャー/Eマイナーのキーを選択したというのもありました。
次のAメロは一気に雰囲気が変わって幻想的なアルペジオ(というかオクターブのメロディー)になりますが、ベースラインを弾きながらオクターブのメロディーを弾いて行くのがえらく難しかったです。
ここは折角苦労して練習したし、1回だと少しもの足りない感じがするので、リピートして2回弾いています。
Bメロは原曲ではAメロと同じパターンにロングトーンのメロディーが乗ったセクションですが、今回のアレンジでは、このロングトーンのメロディーをトレモロ奏法で再現することにしました。ギターっぽい曲展開ということで。
こんなに長い区間をトレモロ奏法でアレンジするのって、2019年2月にやったクロノトリガー「風の憧憬」以来ですねー。
「風の憧憬」の時は、クラシックギターで一般的な4連符のトレモロでしたが、今回はフラメンコギター独特の5連符のトレモロを使っています。
トレモロ奏法については、こちらの記事で解説していますので興味がある方はご覧になってください。
このトレモロ奏法のセクションも、オンコードが多かったり、メロディーがテンションになっていたり、ポジション移動が大きかったりで、綺麗に弾くのが難しかったです。
そして、次のCメロでリズムが3拍子に変わります。
Cメロはメロディーが上行、アルペジオのラインは下行しているので、どちらを弾くか迷いましたが、今回はメロディーのほうのラインを弾きました。
ラストのエンディングは、原曲ではイントロで鳴っていた持続低音が再現されていますが、ギターアレンジもそのイメージで弾いています。
今回のアレンジは、実際に弾いてみてAメロとBメロがかなり難易度高めに感じたので、星4つとしました。
メトロイド「タイトルBGM」コード進行
オリジナルのDメジャーキー/DマイナーキーをEメジャーキー/Eマイナーキーに移調しています。
イントロ
|Em|CM7(onE)|Em|Em|
|Em|Em7|CM7(onE)|Em|
|Em|CM7(onE)|Em|Em|
|Em|Em7|CM7(onE)|Em|
Aメロ(演奏では2回リピート)
|E|E7(onD)|AM7(onC♯)|Am(onC)|
|E(onG♯)|E7(onD)|Am(onC)|AM7|
Bメロ(演奏ではトレモロ)
|E|E7(onD)|AM7(onC♯)|Am(onC)|
|E(onG♯)|E7(onD)|Am(onC)|AM7|
|E|E7(onD)|AM7(onC♯)|Am(onC)|
|E(onG♯)|E7(onD)|Am(onC)|AM7|
Cメロ(3拍子)
|E|E|CM7|CM7|
|FM7|FM7|F♯7sus4|F♯7sus4|
|F♯7|F♯7|
エンディング
|Em|Em|Em|Em|
コード進行分析
イントロ
■Eマイナー
|Ⅰm|♭ⅥM7|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm7|♭ⅥM7|Ⅰm|
|Ⅰm|♭ⅥM7|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm7|♭ⅥM7|Ⅰm|
Aメロ(演奏では2回リピート)
■Eメジャー
|Ⅰ|Ⅰ7|ⅣM7|Ⅳm|
|Ⅰ|Ⅰ7|Ⅳm|ⅣM7|
Bメロ
|Ⅰ|Ⅰ7|ⅣM7|Ⅳm|
|Ⅰ|Ⅰ7|Ⅳm|ⅣM7|
|Ⅰ|Ⅰ7|ⅣM7|Ⅳm|
|Ⅰ|Ⅰ7|Ⅳm|ⅣM7|
Cメロ(3拍子)
|Ⅰ|Ⅰ|♭ⅥM7|♭ⅥM7|
|♭ⅡM7|♭ⅡM7|Ⅱ7sus4|Ⅱ7sus4|
|Ⅱ7|Ⅱ7|
エンディング
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
同主調混在メジャーキーの典型【コード進行のポイント】
コード進行のポイントを、移調後のEメジャーキー/Eマイナーキーで解説いたします。
この曲は、メジャー/マイナーの複合調、または、ゲーム音楽論04「ゲーム音楽の王道的コード進行」で解説した「同主調混在メジャーキー」ですよね。
イントロはEマイナーキーで、基本的にはEmコード一発ですが、上に重なる付加音が動いていって、C音(♯5=m6=♭13)が出てきます。
ここの解釈は、Em(♯5)、E7(♭13)、CM7(onE)の3通りが考えられますが、バックで鳴っている持続低音を良く聴くと、完全5度の音(このキーだとB音)が鳴っているので、Em(♯5)は除外。
あとは実際に弾いてみて、ここにG♯音(メジャー3rd)を入れると違和感があるので、E7(♭13)も除外して、消去法でCM7(onE)としました。
BメロとCメロはEメジャーキーに転調して、8小節の循環コードをひたすら繰り返しますが、この循環コードのベースラインは、Ⅰ→♭Ⅶ→Ⅵ→♭Ⅵという「同主調混在メジャーキー」の王道パターンです。
このベースラインへのコード付けは様々な可能性が考えられますが、今回の場合は以下の2パターンが基本で、これらの混合パターンも考えられます。
- E→D→C♯m→C
- E→E7(onD)→A(onC♯)→Am(onC)
こういうのがあるので、音楽理論ってかなり曖昧なものだと思うのですが、メロディーの動きや構成音から判断して、今回は上のコード進行表で示したようなコード付けにしました。
コメント