発売年月:1980年5月(パックマン)/1981年2月(ニューラリーX)
機種:アーケードゲーム(Arcade Game)
メーカー:ナムコ(NAMCO)
タイトル名:パックマン(Pac-Man)/ニューラリーX(New Rally-X)
曲名:パックマン&ニューラリーX(Pac-Man & New Rally-X)
作曲:甲斐敏夫(Toshio Kai)/大野木宣幸(Nobuyuki Ohnogi)
演奏難易度:☆☆☆★★(易しい)
今回で100本目のゲーム音楽アレンジ演奏動画となりますが、動画100本達成記念として「ゲーム音楽の源流を弾く」という企画をやろうと思います。
最古のゲーム音楽については諸説あるのですが、今回は国産ゲーム音楽の源流であるパックマンとニューラリーXの楽曲をメドレーにして演奏いたします。
今回の選曲について
2018年5月にゲーム音楽のアレンジ演奏動画を投稿しはじめて約3年11か月が経過しますが、ようやく100本を達成する事が出来ました。これも皆様の応援のお陰です!
そして、100本目には何か企画をやりたいとは思っていましたが、今回は「ゲーム音楽の源流を弾く」という企画にしました。
「ゲーム音楽の源流」「最古のゲーム音楽」については当ブログ「ゲーム音楽史01」で考察していますので、そちらをご覧になってください。
上の記事で書いているように、今回演奏しているパックマンやニューラリーXの音楽は必ずしも「最古のゲーム音楽」では無いのかも知れませんが、その知名度と影響力は最初期のゲーム音楽の中では群を抜いており、我が国のゲーム音楽の重要なルーツであることは間違いありません。
そして、今回パックマンとニューラリーXを組曲にした理由としては、以前から「ニューラリーXのメインBGMはパックマンのコーヒーブレイクミュージックの発展形である」という事が言われており、これらを同じアレンジの中で聴き比べてもらいたい、というのがありました。
以下、今回演奏するパックマンとニューラリーXについて解説いたします。
パックマン作品概要
パックマンは、ナムコが開発して1980年5月に発表(稼働開始は7月)されたアーケードゲームで、1978年のスペースインベーダー(タイトー)と共に、初期のビデオゲームブームを牽引した作品です。
パックマンの開発が始まった頃は、日本のアーケードゲームはインベーダーのコピーゲームを中心としたシューティングゲーム一色の様相でしたが、そこに一石を投ずるべく、女性や低年齢層を狙った新機軸としてカラフルで可愛らしいキャラクターを採用したパックマンが開発されたといいます。
結果として、パックマンは業務用基板だけで7年間で300万枚を売り上げてギネス認定されるなど、スペースインベーダーに匹敵するヒットとなりましたが、これは優れたデザイン性とキャッチーな音楽によるところが大きかったのではないでしょうか。
パックマンは日本国内でも大ヒットしましたが、アメリカではアニメ化されるなど爆発的に人気化し、擬人化されたパックマンのキャラクターは、当時、ディズニーのミッキーマウスと並び称されるほどの人気を獲得しています。
また、ゲーム単体としても後続に与えた影響は大きく、スーパーパックマン、パックランド、パック&パル、パックマニア、パックマンバトルロイヤル、ミズ・パックマンなど、正規の続編や関連作品の他に大量のコピーゲームが生まれ、「ドットイートゲーム」と呼ばれるジャンルが形成されました。
このパックマン人気は現在まで続いており、公式サイトや多数のファンサイトが存在します。まさに、ナムコが生んだ歴史的タイトルと言えるでしょう。
ラリーX & ニューラリーX 作品概要
ラリーXはナムコが開発し、1980年11月に稼働を開始したアーケードゲームで、迷路の中を車で走り回って、敵車を避けながらフラッグを取っていくというものです。
初代ラリーXの稼働開始3か月後、1981年2月にはマイナーチェンジ版の『ニューラリーX』が登場しました。
そして、ラリーXはニューラリーXに置き換えられたため、旧版は出回った台数も少なく、一般的に「ラリーX」といえばニューラリーXのほうを指す場合が多いのです。
ラリーXからニューラリーXになって大きく変わったのが音楽で、旧ラリーXでは単音の6小節ループ(A-B-A構成なので実質4小節)だったメインBGMが2和音16小節に拡張され、チャレンジングステージにも専用のBGMが用意されました。
1984年には、MSX・FM-7・X1といった国産PCにニューラリーXが移植されましたが、タイトルは「ラリーX」でした。紛らわしいですよね(笑)
自分は主にMSX版(音楽はニューラリーXのもの)で遊んでいたので、ずっとラリーXとニューラリーXを混同していて、初代ラリーXは音楽が違うらしい、という事を知ったのは最近の事です。
一般的にも「ラリーXの音楽」と言えば、ニューラリーXのものをイメージされる方が大半なのではないでしょうか。
ちなみに、ファミコン版ラリーXも作られる予定だったのが、複合スクロール(メイン画面と全体マップ)のプログラムが難航して発売タイミングを逃したため中止になったそうです。ファミコン版が出ていればもっと知名度が高かったでしょうね。
パックマン・ラリーX・ニューラリーXの作曲者
パックマン・ラリーX・ニューラリーXの作曲者は以下の通りです。
パックマン(1980年5月)
甲斐敏夫さん
ラリーX(1980年11月)
甲斐敏夫さん、大野木宣幸さん(ハイスコアBGMのみ)
ニューラリーX(1981年2月)
大野木宣幸さん
甲斐敏夫さん
甲斐敏夫さんについては、このブログでは未紹介ですが、ギャラクシアン、パックマン、ラリーXという初期ナムコ重要作品の音楽を担当したということで、ゲーム音楽史的にかなり重要な人物ですので、ここでご紹介したいと思います。
本名:甲斐敏夫(かい としお)
生年月日:1943年
代表作品:パックマン、ラリーX
甲斐敏夫さんは戦時下の広島に生まれ、幼少時に原爆被爆という体験をしています。
大学では美術・デザインを学び、1970年にナムコの前身である中村製作所に入社。中村製作所ではグラフィックデザイナーとして活躍し、デザイン部門の主任を務めていました。
甲斐さんはデザインが専門でしたが、当時のナムコにはまだサウンド専任スタッフが居なかったということもあって、ギャラクシアン(1979年11月)、パックマン、ラリーXのサウンドを担当されています。
その後、ラリーXの時にサウンドを共作した新人の大野木宣幸さんがサウンド専任スタッフに抜擢され、ニューラリーX以降のサウンドに関しては大野木さんに一任される事となりました。
甲斐さんから大野木さんへと受け継がれたもの
大野木宣幸さんについては、この後「ゲーム音楽の父」としてナムコで大活躍することになりますが、詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
ニューラリーXの音楽は、ブルーノートを多用していたりして、オールドアメリカンミュージックのカラーが強いですよね。
このオールドアメリカンスタイルは大野木さんの十八番ですが、源流を辿るとパックマン→ラリーX→ニューラリーXという流れで甲斐敏夫さんから大野木宣幸さんに引き継がれたものではないか?とも考えられます。
マンガ・ミュージックは4拍子化【ソロギター演奏】
今回の演奏では、以下の曲順でメドレー演奏しています。
- パックマン ゲームスタート(オリジナルはCメジャーキー)
- ニューラリーX メインBGM(オリジナルはAメジャーキー)
- ニューラリーX チャレンジングステージBGM(オリジナルはAメジャーキー)
- パックマン コーヒーブレイク(マンガ・ミュージック、オリジナルはFメジャーキー)
今回の演奏は、ニューラリーXのオリジナルキーであるAメジャーキーに統一しました。
1.のパックマンのゲームスタートジングルは凄く有名なものです。作りはシンプルなのですが、リズムが微妙に不均等だったり、ラストの上りフレーズに細かい前打音が入っていたりして、演奏はそんなに簡単ではありません。
2.のニューラリーXのメインBGMは今回のメインとなるセクションですが、ブルーノートが効いていて、なんとも味のあるメロディーですよね。
3.のチャレンジングステージBGMは、M7とブルーノートの音程が混在していて、ちょっとぶっ飛んだ感じのフレージングです。
そして、4.のパックマン「マンガ・ミュージック」を使ったエンディング部分ですが、ここが一番悩みました。
「マンガ・ミュージック」は、もともと5/4拍子で作られたようですが、ここはちょっと特殊なリズムです。
ニューラリーXメインBGM(4/4拍子)の5小節目から8小節目(下のコード譜のAメロ2段目)と似たメロディーですが、なんというか、16分音符1つ分ずつ後ろにズレていって結果的に5拍になる、みたいな感じで、めちゃめちゃとりずらいんですよね……。
ご本人直筆らしき譜面もネットに上がっていて、それも5/4拍子で書いてあるので、恐らく意図的にそういう不均等なリズムにしたんだと思われますが。
そして、その譜面を見ながら小一時間チャレンジしてみましたが、譜面通りに弾けるようになるまでには物凄い時間がかかりそうだし、出来たとしてもカッコ良くアレンジして弾ける自信はありませんでした。
そこで、このセクションは意訳アレンジすることにして、それまでのニューラリーXの感覚とテンポを引き継ぐ形で、4/4拍子にして演奏した次第です。
ですので、この部分は「ニューラリーXのマンガ・ミュージック風アレンジ」という感じで捉えて頂けるとありがたいです。「おーい、リズム違うよー」っていう突っ込みはご勘弁ください(笑)
パックマン&ラリーX コード進行
キーは全てAメジャーキーで演奏しています。
パックマン ゲームスタート(イントロ)
|A|B♭|A|E7 A|
ニューラリーX メインBGM Aメロ
|A|A|A|E7|
|A|A|A|D E7 A|
ニューラリーX メインBGM Bメロ
|A|A|DM7|A|
|A|A|DM7|A|
ニューラリーX メインBGM Aメロ繰り返し
ニューラリーX チャレンジングステージ
|Am7 AM7|Am7 AM7|D|AM7|
|Am7 AM7|Am7 AM7|D|AM7|
ニューラリーX メインBGM Bメロ繰り返し
パックマン マンガ・ミュージック(エンディング)
|A|A|A|E7 A|
|A7|
コード進行分析
パックマン ゲームスタート(イントロ)
■Aメジャー
|Ⅰ|♭Ⅱ|Ⅰ|Ⅴ7 Ⅰ|
ニューラリーX メインBGM Aメロ
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅴ7|
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅳ Ⅴ7 Ⅰ|
ニューラリーX メインBGM Bメロ
|Ⅰ|Ⅰ|ⅣM7|Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅰ|ⅣM7|Ⅰ|
ニューラリーX メインBGM Aメロ繰り返し
ニューラリーX チャレンジングステージ
|Ⅰm7 ⅠM7|Ⅰm7 ⅠM7|D|AM7|
|Ⅰm7 ⅠM7|Ⅰm7 ⅠM7|D|AM7|
ニューラリーX メインBGM Bメロ繰り返し
パックマン マンガ・ミュージック(エンディング)
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅴ7 Ⅰ|
|Ⅰ7|
ブルーノートや経過音を多用した3コード【コード進行のポイント】
演奏キーのAメジャーキーでコード進行の解説をいたします。
今回、コード進行は超シンプルで、ほとんど3コード(Ⅰ・Ⅳ・Ⅴ)で完結していますが、上に乗っているフレーズがブルーノートや半音アプローチが多くて、ベースラインを出しながらだと多少弾きにくさを感じました。
イントロの「パックマン ゲームスタート」は唯一、3コード以外のコード(B♭=♭Ⅱ)が登場しますが、これはⅤ7(=E7)の裏コードです。
「ニューラリーX Aメロ」は3コードですが、ブルーノート(m3・♭5・m7)や半音アプローチを多用しています。ゆっくり演奏するとブルーズ風ですが、このテンポだとカントリー風に聴こえますよね。
「ニューラリーX Bメロ」はⅠとⅣのアルペジオで出来ていますが、メジャー7thの音程を使っていたりして、ブルージーなAメロと雰囲気が変わります。
「チャレンジングステージ」も、ベースはIとⅣの2コードですが、マイナー→メジャーの細かい切り替えが特徴です。m3やM7の使い方がブルーノートっぽくなくて、なんというか浮遊感のあるフレージングですよね。
最後の「マンガ・ミュージック」のセクションは、「ニューラリーX Aメロ」の変奏という形で演奏しましたが、「ニューラリーX Aメロ」は4拍目のロングトーンがマイナー3rd(ブルーノート)なのに対して、こちらはメジャー3rdだったりして、ラインが微妙に違います。
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