ソード・ワールドSFC「The Omen of Maelstrom」【ギター演奏・コード進行113】

ソード・ワールドSFC「The Omen of Maelstrom」
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発売年月:1993年8月
機種:スーパーファミコン(Super Nintendo)
メーカー:T&Eソフト(T&E SOFT)
タイトル名:ソード・ワールドSFC(SWORD WORLD SFC)
曲名:The Omen of Maelstrom
作曲:CHAKA-POCO(詳細不明)
演奏難易度:☆☆★★★(普通)

今回の演奏は、1993年に発売されたスーパーファミコンのRPG『ソード・ワールドSFC』のオープニングタイトル曲「The Omen of Maelstrom」です。ややマイナーなタイトルと思われますが、自分はかなりハマったゲームで、とくにこの曲は印象に強く残っています。

ソード・ワールドSFC 作品概要

ソード・ワールドSFC(以下、本作)は、1993年8月にT&Eソフトから発売されたスーパーファミコン用のRPGです。

T&Eソフトは1982年設立のPCゲームの老舗メーカーで、黎明期のPCゲームの業界において、スターアーサー伝説シリーズ、3Dゴルフシミュレーション、ハイドライド、DAIVAなどのヒット作を世に出し、PCゲームの発展に重要な役割を果たしましたが、1990年代からは徐々にPCからスーパーファミコンなどのコンシューマー機向けゲームソフトをメインに制作するようになりました。

2001年にディズニーと資本提携する形で株式会社ディーワンダーランドとなりましたが、ゲーム開発事業は株式会社ディープが引き継ぎ、現在はD4エンタープライズが知的財産権を持っています。

本作のベースになったのはグループSNEが制作し、1989年より発売開始されたテーブルトークRPG(以下、TRPG)『ソード・ワールドRPG』です。TRPGについては後述しますが、本作は、この『ソード・ワールドRPG』のルールを基にT&Eソフト(元々開発していたのはT&Eソフトに吸収合併されたクリスタルソフト)がコンピューターRPG化したものです。

本作が発売される前年に、PC9801シリーズ向けの『ソード・ワールドPC』(1992年11月、クリスタルソフト/T&Eソフト)が先行して発売されましたが、本作はソード・ワールドPCのスーパーファミコン向けのアレンジ作品という位置付けでしょうか。

PC98とスーパーファミコンではハードの特性がかなり違うのでシステムやシナリオもかなり変更され、移植というよりはアレンジ作と言った方が良いかと。

本作が発売された翌年には、続編である『ソード・ワールドSFC2 いにしえの巨人伝説』が発売されました。自分は2もプレイしましたが、2でも本作と同様のシステムが採用されていて、詳細は分かりませんが音楽を含む開発スタッフも本作と同じなのでは?と思います。

TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)について

自分はこのゲームのTRPG的なノリが気に入ってやりこんだのですが、実はその少し前にTRPGにハマって、家族や友達と『ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)』や『指輪物語RPG』をプレイしていた事があるんですよね。

このTRPG、今の若い世代は知らない人も多いと思うので、これについて少しお話しようと思います。

TRPGはアメリカで生まれたテーブルゲームの一種で、ルールブックをもとに、紙・鉛筆・サイコロ・会話・イメージといった人力のみで進行させるコンピューターRPGの祖先です。

1974年に世界初の完全なシステムを備えたTRPG『ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)』が発売されました。

「経験値」とか「レベル」といった概念もここからスタートしたわけです。

日本ではD&Dの日本語版が発売される(1985年)より前に、国産コンピューターRPGのヒット作である『ブラックオニキス』や『ハイドライド』が世に出ているので、RPGと言えば最初からコンピューターRPGのイメージが大勢なのですが、コンピューターRPGの元祖とされる『ウルティマ』(1979年)や『ウィザードリィ』(1981年)なども、本を正せばこのD&Dのシステムをアレンジしてコンピューター上で一人でプレイ出来るようにしたものだったりします。

つまり、ドラクエもFFも、全てはTRPG=D&Dから派生・進化してきたものなんですね。

自分はD&Dより指輪物語RPG(ロールマスターというTRPGのシステムを使っている。現在も再販版が入手可能)が好みだったのですが、この人力とイメージだけでやる長い長い(数年がかり)遊びの思い出は忘れられません。またやりたいなぁ。

ちなみに、指輪物語RPGのルールブック(自分が持っているのは1987年版)は、眺めているだけでトールキンの原作小説『指輪物語』では語られなかった細かい設定が判明したりして大変興味深く、今でも捨てずに持っています。実はこれ、元々は弟のものだけど、完全に借りパクしてます(笑)

なお、本作の元ネタである『ソード・ワールドRPG』は国産TRPGとしては初の大ヒット作品で低年齢層まで普及し、その後の『ロードス島戦記』『ドラゴンランス戦記』等のファンタジー小説・TRPGのブームを牽引しました。

その後、TRPGはトレーディングカードゲームに押される形で下火になっていきますが、2010年代にはニコ動などでアニメやゲームのキャラを用いた『クトゥルフ神話TRPG』のプレイ動画・解説動画が一大ブームとなり、(局地的にですが)盛り上がりを見せています。

――ついついTRPGの話に力が入ってしまいましたが、本作は国産TRPGの決定版『ソード・ワールドRPG』のシステムを採用しているということで、TRPG好きとしてはかなり気になる存在でした。

ソード・ワールドSFCの音楽

以上、ソードワールドとTRPGの概要を解説しましたが、ここからは本作の音楽と「The Omen of Maelstrom」についてお話しようと思います。

本作の音楽は良く作り込まれていて聴きごたえがあり、ゲームファンからの評価も高いものでした。

音楽を担当したのは当時のT&Eソフト所属のサウンドスタッフの面々でしたが、クレジットには、木下ゆみ・下條勇三郎・釜木茂一・Yoshiya Takayama・榎村大典の各氏の名前が確認できます。なお、木下ゆみさんと釜木茂一さんは『ソード・ワールドPC』にも参加しています。

楽曲の内容としては、こういう正統派RPGでは王道であるクラシック的な曲もあるのですが、どちらかというと、プログレ・フュージョン・ニューエイジミュージックの色彩が強く、ドラムスとベースでガッチリとビートを打ち出している曲が多いですよね。また、音色も特徴があって大変良く出来ていると思います。

そして本作の楽曲の中で一番印象に残っているのが今回演奏したオープニングタイトル曲「The Omen of Maelstrom」です。

この曲は3拍子のリズムとシンセっぽいプログレ・ニューエイジミュージック的なアレンジが特徴ですが、重厚・荘厳かつ美麗なメロディーに加えてヒーリングミュージックの要素も感じさせる佳曲ですよね。

作曲者についてですが、スーパーファミコンマガジン1993年9月情報号特別付録CDにこの曲が収録されていて、その作曲者クレジットに「CHAKA-POCO」の記載があるようです。CHAKA-POCOがチーム名なのか、前述の5名のうち誰かのニックネームなのかは不明ですが、ここではこの情報に従って作曲者名はCHAKA-POCOとしました。

6連符の駆け上がりフレーズが難関【ソロギター演奏】

ここからは「The Omen of Maelstrom」の演奏とギターアレンジについて解説いたします。

原曲はストリングス&ホーン系のシンセによる分厚いアレンジで、ギター1本で再現するにはかなり手ごわい感じでしたが、ある程度割り切って隙間を作ることでギターの味を生かす方向で考えました。

メロディーは繰り返しが多いので、Cメロ・C’メロの部分は繰り返し部分をオクターブ上で演奏して変化をつけるアレンジにしています。

演奏難易度としては、コードチェンジもそれほど忙しくないし、メロディーの音使いも(センスは感じますが)複雑ではないのですが、曲中何か所か出てくる6連符の駆け上がりフレーズがテクニック的な難関です。このせいで難易度が星一つ分以上は上がっている感じですね。

今回はフラメンコギター色が強めのアレンジになったのもあり、リズムトラックにはフラメンコ形式のソレアのリズムパターンを採用していますので、そういう所の面白味も感じていただけたら幸いです。

The Omen of Maelstrom コード進行

イントロ
|Em9|Em9|Em9|Em9|

Aメロ
|Em|Em|D|D6|
|C|D|Em|Em|
|D|D|C B|

Bメロ
|Emadd9|Emadd9|Em69※1|Em11※1|
|Emadd9|Emadd9|CM7※2|CM7※2|
|Emadd9|Emadd9|Em69※1|Em11※1|
|Emadd9|Emadd9|CM7※2|CM7※2|

Cメロ
|C♯m7|C♯m7|C♯m7|B(onC♯)|※3
|AM7|AM7|AM7|B7(onA)|※4
|C♯m7|C♯m7|C♯m7|B(onC♯)|※3
|AM7|AM7|A|A|※4

B’メロ
|Emadd9|Emadd9|Em69※1|Em11※1|
|Emadd9|Emadd9|CM7※2|CM7※2|
|Emadd9|Emadd9|Em69※1|Em11※1|
|Emadd9|Emadd9|CM7※2|CM7※2|

C’メロ
|C♯m7|C♯m7|C♯m7|C♯m7|※3
|AM7|E(onA)|F♯m(onA)|G♯m(onA)|※4
|C♯m7|C♯m7|C♯m7|C♯m7|※3
|AM7|AM7|AM7|AM7|※4

エンディング(Aメロと同じ)
|Em|Em|D|D6|
|C|D|Em|Em|
|D|D|C B|
|Em9|Em9|

※1 原曲はEmadd9
※2 原曲はCadd9
※3 原曲はこの段全てC♯madd9
※4 原曲はこの段全てAadd9一発

コード進行分析

イントロ
■Eマイナー
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|

Aメロ
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ|♭Ⅶ|
|♭Ⅵ|♭Ⅶ|Ⅰm|Ⅰm|
|♭Ⅶ|♭Ⅶ|♭Ⅵ Ⅴ|

Bメロ
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅵ|♭Ⅵ|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅵ|♭Ⅵ|

Cメロ
■C♯マイナー(短3度転調)
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|

B’メロ
■Eマイナー(短3度転調)
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅵ|♭Ⅵ|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅵ|♭Ⅵ|

C’メロ
■C♯マイナー(短3度転調)
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅵ|

エンディング(Aメロと同じ)
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ|♭Ⅶ|
|♭Ⅵ|♭Ⅶ|Ⅰm|Ⅰm|
|♭Ⅶ|♭Ⅶ|♭Ⅵ Ⅴ|
|Ⅰm7|Ⅰm7|

短3度転調が妙手【コード進行のポイント】

「The Omen of Maelstrom」のコード進行を解説します。

まず、AメロとエンディングはシンプルなⅠmからの下降進行です。

Bメロ(B’メロ)はⅠmと♭Ⅵの2コード展開ですが、Cメロ(C’メロ)は短3度上に転調して、やはりⅠmと♭Ⅵの2コードというシンメトリーな構成となっています。

こうして種明かしをすると意外と単純なのですが、この短3度転調が超絶効果的で、Cメロ(サビ)に入った瞬間、一気に視界が開ける感じがしますよね。

なお、ギター演奏ではBメロとB’メロ、CメロとC’メロは微妙にコード使いを変えています。

このBメロ(B’メロ)とCメロ(C’メロ)の部分、原曲はⅠmadd9と♭Ⅵadd9のコードアルペジオの上に別のコードや副旋律が重なってポリコード的な状態になっていて、これをギター1本で再現しようとした結果、そういうアレンジになったのですが、ベースのコードはⅠmと♭Ⅵの2コードと捉えていただいて大丈夫です。

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