発売年月:1987年1月
機種:ファミリーコンピュータ(NES)
メーカー:エニックス(ENIX)
タイトル名:ドラゴンクエストⅡ(Dragon Warrior2)
曲名:この道わが旅(My Road,My Journey)
作曲:すぎやまこういち(Koichi Sugiyama)
難易度:☆☆☆★★(易しい)
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第50弾は、ドラゴンクエスト2よりエンディング曲「この道我が旅」。記念すべき50曲目の演奏は、鉄板の名曲にしました。
50曲演奏するまで思ったより時間かかりましたが、次は100曲目指して頑張ります!
なお、この動画はブログ4周年企画の一環として、2022年春にリメイク・修正したものです。
ドラクエ2からは初選曲
今回演奏する「この道我が旅」は『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』のエンディング曲で、単体でもかなりの有名曲ですよね。
後から歌詞が付いたりして「鉄板の卒業式ソング」という側面もあります。
この曲は少し前に公開したドラゴンクエスト3「村のテーマ」と同時にアレンジしたものですが、テンポやリハーモナイズがすぐに決まらず、少し寝かせていました。
考えてみると、このブログではドラクエ「2」の曲は初出ですので、まずはドラクエ2の解説からいきましょう。
ドラゴンクエスト2作品概要
『ドラゴンクエスト2 悪霊の神々』は1987年の1月にファミリーコンピュータ用のソフトとして発売されました。
前作からわずか8か月後という異例のスピードでリリースされましたが、前作は徐々に人気が出たのに対して、本作は前作の評判を引き継いで最初から売れに売れて、入手が困難なほどでした。
前作は一人旅だったのがパーティー制になったり、マップが6倍の広さになったりと、前作から格段にスケールアップしています。
主な制作スタッフは前作同様、堀井雄二・すぎやまこういち・鳥山明の最強トリオです。
この開発期間の短さを考えると、前作制作中から構想はあったのだろうな、と思います。
前作に入りきらなかった要素を再構築して本作に入れたという話もありますし。
ここでは今回演奏している「この道我が旅」を中心に、ドラクエ2の音楽面について書いてみようと思います。
ドラクエ2の音楽
ドラゴンクエスト2の音楽ですが、ドラクエ全作品中でも異色なものと思います。
ドラゴンクエストシリーズの音楽イメージはクラシックをベースにした格調高いものですが、ドラクエ2の音楽は、すぎやまこういちさんのポップス作家の面が強く出ているものです。
すぎやまこういちさんは、元々は「亜麻色の髪の乙女」に代表されるような歌謡曲や、CM音楽等を手掛けていた職業作曲家です。
なので、本来はポップス系の作曲も得意分野なのですが、ドラゴンクエストシリーズではクラシック寄りの表現が中心で、すぎやまさんのポップス作家としての面は影を潜めています。
ドラクエ2では、恐らく意図的・実験的にポップスの作曲手法を積極的に使っていっているものと思われます。
ですが、全編ポップス寄りかというと、そういうわけでもなく、クラシック寄りのものと半々くらいのバランスでしょうか。
ドラクエ2の中で印象に残っている曲を例にあげてみます。
クラシック寄り
「城」「遥かなる旅路」など
ポップス寄り
「LoveSong探して」「果てしなき世界」「この道わが旅」など
こんな感じですが、「クラシック寄り」「ポップス寄り」の相違点は以下の3点と思います。
コード進行の作り方
ポップス系はコード進行を先に作ることが多いので、パターン化している。クラシック系は後からコードを付ける場合が多いのでイレギュラーになりやすい。
メロディーのフレージング
ポップスのメロディーは裏拍に重要な音を持ってきたり、7度音やテンションを積極活用する傾向。クラシックは表リズムとコードトーンが主体。
アレンジ
ポップスはドラムスとベースによるハッキリしたリズムセクションとメロディーの担当が明確なアレンジが多い。クラシックは重奏的な旋律同士が絡むアレンジが多い。
この曲「この道わが旅」はポップス寄りの作りですが、アレンジによってはクラシックぽくもなる曲です。
Ⅳm(onⅤ)をドミナントコード代理に使うのは日本のポップスの常套句ですが、すぎやまさんはこれを使うのが非常に上手いです。
他にも同主調の音の混ぜ方、転調の仕方など、すぎやまこういちさんの作曲手法が良く表れている曲だと思います。
原曲の雰囲気を大事に【ソロギター演奏】
ギターアレンジ中に演奏キーは幾つか試しましたが、結局そんなに難易度に差が無かったので、原曲キーのまま演奏しています。
前半はCメジャーキーなので弾きやすいですが、後半のE♭メジャーキーは管楽器や鍵盤だと良くあるキーなんですが、ギターだと開放弦があまり使えないため少し弾きにくいです。
曲中は適宜、音階やアルペジオなどで隙間を埋めてギター的に味付けしました。
ちなみに最後(原曲はトリルでやってるところ)は最初ラスゲアードでやってたんですが、うるさくてバランス悪く感じたので細かいアルペジオに変更しました。
この道わが旅 コード進行
イントロ
|C|C G7|
Aメロ
|C|CM7|Dm|DmM7|
|Dm7|DmM7|G7|C CM7 C7|
|FM7|FmM7|Em7|A7|
|Dm7|DmM7|F(onG) Fm(onG)※1|C|
Bメロ
|C C7(onB♭)|F(onA)|FmM7|C|
|Bm7 E7|AmM7|D9|G7|
A’メロ
|C|CM7|Dm|DmM7|
|Dm7|DmM7|G7|C CM7 C7|
|FM7|FmM7|Em7|A7|
|Dm7|DmM7|F(onG) Fm(onG)|C B♭7|
A’メロ転調版
|E♭|E♭M9|Fm|FmM7|
|Fm7|FmM7|B♭7|E♭ E♭M7 E♭7|
|A♭M7|A♭mM7|Gm7|C7|
|Fm7|FmM7|
|A♭(onB♭) A♭m(onB♭)|E♭|
コーダ
|Fm FmM7|Fm7 Fm6|
|A♭(onB♭)|A♭m(onB♭)※2|
|E♭|A♭|A♭m|E♭M7|
|E♭M7|
※1 構成音はG7(♭9)と同じ
※2 構成音はB♭7(♭9)と同じ
コード進行分析
イントロ
■Cメジャー
|Ⅰ|Ⅰ Ⅴ7|
Aメロ
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱm|Ⅱm|
|Ⅱm|Ⅱm|Ⅴ7|Ⅰ Ⅰ7|
|Ⅳ|ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅵ7|
|Ⅱm|Ⅱm|Ⅳ Ⅴ7|Ⅰ|
Bメロ
|Ⅰ Ⅰ7|Ⅳ|ⅣmM7|Ⅰ|
|Ⅶ7sus4 Ⅲ7※1|Ⅵm|Ⅱ7|Ⅴ7|
A’メロ
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱm|Ⅱm|
|Ⅱm|Ⅱm|Ⅴ7|Ⅰ Ⅰ7|
|Ⅳ|ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅵ7|
|Ⅱm|Ⅱm|
|Ⅳ Ⅴ7|Ⅰ ♭Ⅶ7※2|
A’メロ転調版
■E♭メジャー(短3度転調)
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅱm|Ⅱm|
|Ⅱm|Ⅱm|Ⅴ7|Ⅰ Ⅰ7|
|Ⅳ|ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅵ7|
|Ⅱm|Ⅱm|Ⅳ Ⅴ7|Ⅰ|
コーダ
|Ⅱm|Ⅱm7|Ⅳ|Ⅴ7|
|Ⅰ|Ⅳ|Ⅳm|ⅠM7|
|ⅠM7|
※1 次のⅥmに対するⅡ7-Ⅴ7
※2 E♭メジャーキーのⅤ7と共用
メジャーキーの中に同主調の音が混在【コード進行のポイント】
この曲はメジャーキーの中に同主調マイナーキーの音を微妙に入れていってるのがポイントですが、この手法、すぎやまさんの曲にはかなり多用されています。
Aメロ3段目のFmM7とか、めちゃめちゃ効いてますね。
AメロとCメロの締めくくりのドミナントにⅣ(onⅤ)→Ⅳm(onⅤ)を使ってるのも、すぎやまさんぽいと思います。
コーダのFmのところは、ベース半音進行を追加するアレンジをしました。
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