発売年月:2009年8月
機種:PC(Windows)
メーカー:上海アリス幻樂団
タイトル名:東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.(Undefined Fantastic Object, Touhou Star Lotus Ship)
曲名:春の湊に(Spring of Dreams)
作曲:太田順也(Junya Ota “ZUN”)
演奏難易度:☆★★★★(難しい)
今回の演奏は、当ブログでは初となる東方Projectからの選曲で、2009年に公開された第12弾作品『東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.』より、1面BGM「春の湊に」をお届けします。
東方Project作品には好きな曲が沢山あるのですが、中でもこの曲は一番のお気に入りです。ただ、ギターで弾くのはかなり難しかったです(詳細は記事本文で)。
東方星蓮船 作品概要
東方Projectは、1996年から現在に至るまでZUNこと太田順也さんが主宰する(というか、ほぼ一人でやっている)同人サークル「上海アリス幻樂団」が制作しているシューティングゲームシリーズです。
東方Projectは、登場キャラクター達がネットの世界で大人気の「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」「ゆっくりボイス」などの「ゆっくり系」コンテンツの元ネタになっていたり、コミケ(コミックマーケット=同人誌即売会)では、毎年数えきれないほどの二次創作が出品されたりと、サブカルチャー系メディアを中心とした超ロングランの人気コンテンツとなっています。
ZUNさんと東方Projectについてはこちらの記事で詳しく書きましたので是非ご一読下さい。
今回は、東方Projectの第12弾作品『東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.』(以下、本作)からの選曲となります。
本作は2009年3月の同人イベント「博麗神社例大祭6」で体験版CD-Rが販売され、同年8月に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット76」で完成版が販売されました。
現在、製品版はAmazonなどで入手出来る他、Steamでの配信もされていますが、公式サイトにて体験版を無料配布(右クリックからでないとダウンロード出来なかったり、古いDirectXが無いと動かなかったりするので注意)しています。
ゲームの内容としては、女の子が自機となった弾幕シューティングという、いつもの東方Projectスタイルなのですが、本作では「ゆっくり」コンテンツでお馴染みの博麗霊夢と霧雨魔理沙に加えて東風谷早苗が自機として選択出来るようになりました。
自分の東方Project体験
自分が東方Projectを知ったのは2008年頃のことです。
自分は2002年から2007年頃までゲーマーとしては引退状態となっていたのですが、その後、2008年から2009年頃にPCやモバイルゲーム機でゲームを再開。結構色んなタイトルに手を出して遊んでいた時期がありました。
この時期には先日紹介した洞窟物語などをやっていたのですが、当時ネット界隈で話題になっていた東方Projectにも興味をそそられ、当時最新作だった東方星蓮船をやってみたのが自分にとって初めての東方Project体験となりました。
ですが、正直に言うと弾幕シューティングって苦手だし(弾幕を凝視していると酔ってしまう)、それほどゲーム性や登場キャラや世界観にのめり込んだわけでもないんですよね。「ゆっくり」の生首キャラは可愛いと思いますが……。
では、東方Projectのどこに魅力を感じたかというと、自分の場合、音楽ですね。ZUNさんが生み出す高インパクトな楽曲はめちゃめちゃ刺さってきました。
そんなわけで、自分にとって東方Projectは音楽がメインであり、ZUNさんの新曲を聴くために新作のチェックを続けているという状況がここ15年ほど続いているわけです。
「春の湊に」について
今回の演奏曲である「春の湊に」は東方星蓮船の1面BGMですが、最初にやった作品ということもあり、自分的には東方Projectの中で最も印象に残っている曲です。
ZUNさんの紹介記事で書いた通り、東方Projectの音楽は以下の3つの要素の組み合わせが特徴となっています。
①アップテンポのテクノロック系ビート
②ピアノによる細かいバッキングプレイ
③金管楽器系の音色で奏でるJMM(ジャパニーズメランコリックメロディー)
「春の湊に」については、序盤こそピアノ中心ですが、中盤から金管系音色のメロディーも登場していて、見事にこのスタイルを踏襲している楽曲と言えるでしょう。
ZUNさん曰く「窓から飛び出したくなるくらい爽やかな曲」ということですが、軽快なピアノのイントロ→哀愁を帯びたAメロ→転調込みのブリッジを挟んで突き抜けるような(それこそ窓から飛び出しそうなw)Bメロと、大変盛り上がる構成になっています。
とくに、このBメロ(サビ)は少し風変りな音使いもあって、一度聴いたら忘れられない旋律ですよね。
細かいフレージングがムズい【ソロギター演奏】
ここからは今回のギターアレンジについて解説いたします。
まず、イントロからして大変細かいフレージングで、一聴してギターでの再現は難しそうなのを感じました。
そこで、音域をギターに最適化させ、なお且つ開放弦が活用できるキーに移調させる作戦にし、オリジナルから1音下げたEマイナーキーをチョイスしました。
ちなみに、採譜時は2フレットにカポを付けてオリジナルと同じキーにして採譜しましたが、それだとハイポジションがきつい所があるので、実際の演奏はカポを付けずに実音もEマイナーキーとなっています。
移調した結果、何とかイントロは弾き切れましたが、何気にAメロも2拍毎にコードチェンジしていたり、2周目をオクターブ下げていたりしてポジショニングにかなりの工夫が必要でした。
オクターブ下げる部分はフルコードでは弾けないので、フラメンコギターでよくやる2和音か3和音の親指奏法中心に頑張っています。
後半戦のBメロもコードチェンジが激しく、オンコードも多用している(これをノーマルコードに変えてしまうと雰囲気が全然変わってしまうので……)ので指がおぼえるまでゆっくりテンポから練習する必要がありました。
そして、リズム面も16分音符のシンコペーションが多用されていたりして指弾きで正確に弾いていくのは大変なことでした。
そんな感じで、劇的な難関は無いのですが、全体的に高難易度で「星3つ寄りの星4つ」というところでしょうか。
春の湊に コード進行
※オリジナルのF♯マイナーキーをEマイナーキーに移調
イントロ
|CM7|CM7(onD) Bm7(onD) Em(onD)|
|Bm7|Em|
|Am7|Bm7|Em|Em|
|CM7|CM7(onD) Bm7(onD) Em(onD)|
|Bm7|Em|
|Am7|Bm7|Em|Em|
Aメロ
|C♯m B7|C♯m B7|AM7 B7|C♯m7|
|C♯m B7|C♯m B7|AM7 B7|C♯m7|
|C♯m B7|C♯m B7|AM7 B7|C♯m7|
|C♯m B7|C♯m B7|AM7 B7|C♯m7|
ブリッジ
|AM7|AM7|C♯m|C♯m B7|
|CM7|CM7|Em|Em GM7|
Bメロ
|CM7|D7|Em B7(onD♯)|Em|
|CM7(onG) D7(onA)|Em(onB) D|
|CM7 B7(onA)|Em|
|CM7|D7|Em B7(onD♯)|Em|
|CM7(onG) D7(onA)|Em(onB) D|
|CM7 B7※1|Em|
エンディング(イントロと同じ)
|CM7|CM7(onD) Bm7(onD) Em(onD)|
|Bm7|Em|
|Am7|Bm7|Em|Em|
|CM7|CM7(onD) Bm7(onD) Em(onD)|
|Bm7|Em|
|Am7|Bm7|Em|Em|
|Emadd9|Emadd9|
※1 オリジナルはB7(onA)
コード進行分析
※オリジナルのF♯マイナーキーをEマイナーキーに移調
イントロ
■Eマイナー
|♭ⅥM7|♭ⅥM7 Ⅴm7 Ⅰm|
|Ⅴm7|Ⅰm|
|Ⅳm7|Ⅴm7|Ⅰm|Ⅰm|
|♭ⅥM7|♭ⅥM7 Ⅴm7 Ⅰm|
|Ⅴm7|Ⅰm|
|Ⅳm7|Ⅴm7|Ⅰm|Ⅰm|
Aメロ
■C♯マイナー
|Ⅰm ♭Ⅶ7|Ⅰm ♭Ⅶ7|
|♭ⅥM7 ♭Ⅶ7|Ⅰm7|
|Ⅰm ♭Ⅶ7|Ⅰm ♭Ⅶ7|
|♭ⅥM7 ♭Ⅶ7|Ⅰm7|
|Ⅰm ♭Ⅶ7|Ⅰm ♭Ⅶ7|
|♭ⅥM7 ♭Ⅶ7|Ⅰm7|
|Ⅰm ♭Ⅶ7|Ⅰm ♭Ⅶ7|
|♭ⅥM7 ♭Ⅶ7|Ⅰm7|
ブリッジ
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|Ⅰm|Ⅰm ♭Ⅶ7|
■Eマイナー
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|Ⅰm|Ⅰm ♭ⅢM7|
Bメロ
|♭ⅥM7|Ⅱ7|Ⅰm Ⅴ7|Ⅰm|
|♭ⅥM7 Ⅱ7|Ⅰm Ⅱ|♭Ⅵ7 Ⅴ7|Ⅰm|
|♭ⅥM7|Ⅱ7|Ⅰm Ⅴ7|Ⅰm|
|♭ⅥM7 Ⅱ7|Ⅰm Ⅱ|♭Ⅵ7 Ⅴ7|Ⅰm|
エンディング(イントロと同じ)
|♭ⅥM7|♭ⅥM7 Ⅴm7 Ⅰm|
|Ⅴm7|Ⅰm|
|Ⅳm7|Ⅴm7|Ⅰm|Ⅰm|
|♭ⅥM7|♭ⅥM7 Ⅴm7 Ⅰm|
|Ⅴm7|Ⅰm|
|Ⅳm7|Ⅴm7|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|
匠みな転調とペンタトニックなメロディー【コード進行のポイント】
移調後のEマイナーキーで「春の湊に」のコード進行を解説いたします。
イントロはEマイナーキーのダイアトニックコードのみで構成されていますが、Ⅴ7ではなくⅤm7を使っているのがポイントでしょうか。
イントロが終わったところで短3度下方への転調をしてC♯マイナーキーのAメロに入りますが、ここの転調、はっとさせられる意外感があって良いですよね。
Aメロのコード進行はⅠm・♭Ⅵ・♭Ⅶの変則マイナー3コードですが、実質的にはⅠm一発と考えても良いでしょう。
その後のブリッジ部分で今度は上方への短3度転調が入って、元のEマイナーキーに戻しています。
そのままサビのBメロに突入しているのですが、Bメロ冒頭の♭Ⅵ→Ⅱ7の展開がぶっ飛んだ効果を上げていて気持ちいいです。
そして、これはZUNさんの曲の大きな特徴なのですが、メロディーの作り方がペンタトニック(5音階)ぽい動きをしている部分が多く、和音階的に聴こえるので(邦楽古典の陽旋・陰旋や民謡・演歌で使うヨナ抜き音階も5音階)、そのへんが日本人の心の琴線に触れるのかな?と思います。
このように、基本的にはダイアトニックコードを中心にしたシンプルな構成なのですが、短3度転調の使い方が匠みだったり、メロディーの作り方が個性的だったりして、ZUNさんの音楽の魅力が凝縮されたような曲に仕上がっていますよね。
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