澤野弘之【ゲーム音楽作曲家列伝番外編19】

今までゲーム音楽作曲家列伝では、ゲーム音楽がメインの国内作曲家を紹介してきましたが、番外編としてゲーム音楽の活動がメインではない作曲家や外国人作曲家を紹介しています。

番外編の第19回は、主にTVドラマ・アニメ・映画や、アーティストへの楽曲提供で活躍する作曲家、澤野弘之さんです。

澤野さんは、アニメ版『進撃の巨人』などの音楽を担当するなど、劇伴分野を中心に若手・中堅トップクラスの作曲家として活躍中ですが、ゲーム音楽も『ゼノブレイドクロス』(2015年)を全曲担当するなど力を入れられています。

澤野弘之さん プロフィール・略歴

本名:澤野 弘之(さわの ひろゆき)
生年月日:1980年9月12日
ゲーム音楽作曲家デビュー:2014年10月(三国志英歌)
ゲーム音楽代表作品:ゼノブレイドクロス

澤野弘之さんは幼少時からピアノを習っていましたが、17歳の頃、小室哲哉さんに影響を受けて作曲家を志望するようになり、坪井伸親さんに師事。高校卒業後は音楽の専門学校に進学して作曲を学びました。

影響を受けた作曲家として小室哲哉さんの他に、久石譲さん、坂本龍一さん、菅野よう子さん、ハンス・ジマーさんの名前を挙げています。

2005年頃からプロ作曲家活動を行い、TVドラマ『牙狼-GARO-』の劇伴でデビュー。翌2006年に放送されたTVドラマ『医龍-Team Medical Dragon-』の音楽が高い評価を受けた事がきっかけとなり、TV・映画などの仕事を数多く手掛けるようになりました。

映画では『キャッチ・ア・ウエーブ』『自虐の詩』『彼岸島(実写版)』『陰日向に咲く』『プラチナデータ』『ボックス』などを、TV番組では、NHKの『サンデースポーツ』『サンデーNEXT』『サイエンスZERO』『連続TV小説「まれ」』のテーマ曲などを手掛けています。

アニメの領域でも活躍されていて、代表作品の一つである『進撃の巨人』の他、『機動戦士ガンダムUC』『青の祓魔師』『キルラキル』『アルドノア・ゼロ』『七つの大罪シリーズ』『キングダム(第3シリーズ以降)』『甲鉄城のカバネリ』『プロメア』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『群青のファンファーレ』『俺だけレベルアップな件』などを担当しました。

2014年にはボーカル楽曲を中心としたユニット、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキ・ヌジーク)を立ち上げ、以後は作詞にも注力。秋川雅史、スキマスイッチ、Do As Infinity、西川貴教、Hey! Say! JUMP、ポルノグラフィティ、岡崎体育(各アーティスト敬称略)などアーティストへの曲提供も盛んに行っています。

2017年に長年在籍したLegendoorとの契約が終了して、VV-ALKLINE(ウォークライン)に移籍。直近では、2022年にNAQT VANE(ナクトベイン)という音楽とアートのプロジェクトを立ち上げるなど精力的に活動されています。

ゲーム音楽との関わり

2010年代に入ってから、澤野さんはゲーム作品にも積極的に曲提供するようになりました。

澤野さんの楽曲がゲーム作品に使われたのは、2012年の『ギルティクラウン ロストクリスマス』(PC、ニトロプラス)が最初ですが、これはアニメ版の既存曲提供という形でした。

ちなみに、『ギルティクラウン』『キルラキル』『甲鉄城のカバネリ』等のメディアミックス作品も原作アニメの音楽を担当した流れでゲーム版に参加・曲提供したものと思われ、アニメ版既存曲の再利用が中心である事が多いのです。

そういったメディアミックス作品以外でゲームのためだけに新規で楽曲を制作したタイトルは『ゼノブレイドクロス』(2015年、任天堂/モノリスソフト)が最初だということですが、ゼノブレイドクロスはリリースに時間がかかり、その次に手掛けた『三国志英歌』(2014年、スクウェア・エニックス)のほうが先に世に出ています。

本連載「ゲーム音楽作曲家列伝」では「作曲で参加したゲーム作品が最初にリリースされたタイミング」をゲーム音楽作曲家デビュー年月日としているので、ここでは2014年10月リリースの『三国志英歌』をゲーム音楽作曲デビュー作品とさせていただきました。

澤野弘之さんの音楽

TVや映画の仕事もそうなのですが、ゲーム音楽に関しても、ボーカル曲(主題歌等)、インスト曲(BGM等)の両方をこなせるのが澤野さんの強みですよね。

澤野さんの音楽は、クラシックベースのオーケストラ曲からハードロック・テクノなど様々なジャンルの要素を網羅していますが、曲の作り方は非常に洗練されていて、複雑な転調や工夫を凝らしたアレンジ手法を駆使しつつ、それを感じさせない熱い楽曲に仕上げるのが澤野さんの真骨頂でしょうか。

自分個人的には、インストベースの劇伴やゲームBGMにボーカルや肉声のコーラスを取り入れていくテクニックが秀逸だと思います。――必ずしも歌詞がハッキリした歌ものではないけれど、インスト曲とボーカル曲のハイブリッドというか。ゲーム曲では、そういう所に澤野さんの作曲家としての特徴が色濃く現れているように感じます。

また、澤野さんのゲーム音楽にはランダム英数字みたいな謎の曲名が付いてるのも特徴で、曲のテーマが分かりにくい反面、曲名を見ただけで「ああ、澤野さんの曲か」と判別出来るのは良いですよね。

澤野弘之さんのゲーム音楽作曲作品

2012年

ギルティクラウン ロストクリスマス(PC、ニトロプラス、既存曲提供)

2013年

進撃の巨人〜人類最後の翼(3DS、スパイク・チュンソフト、既存曲提供)

2014年

三国志英歌(iOS、スクウェア・エニックス)

2015年

ゼノブレイドクロス(WiiU、モノリスソフト/任天堂)

2016年

ヴァルハイトライジング(Android/iOS、バンダイナムコ、主題歌/バトル曲)

ソウルリバース ゼロ(Android/iOS、セガ・インタラクティブ、主題歌)

2017年

進撃の巨人〜未来の座標(3DS、スパイク・チュンソフト、既存曲提供)

PS4版 BORDER BREAK(セガ、主題歌)

2018年

PS4版 ボーダーブレイク(PS4、セガ・インタラクティブ、主題歌)

甲鉄城のカバネリ~乱(PC/Android/iOS、DMMGAMES)

2019年

キルラキル ザ・ゲーム~異布(SW/PS4、アークシステムワークス、既存曲提供)

機動戦隊アイアンサーガ(Android、Gameduchy、OP/ED)

リーグ・オブ・レジェンド(PC、ライアットゲームズ、アニメーショントレーラー)

青の祓魔師 DAMNED CHORD(iOS/Android、アニプレックス、開発中止)

2021年

荒野行動(iOS/Android/PC/PS4/SW、NetEase Games、テーマソング)

2022年

勝利の女神 NIKKE(iOS/Android、SHIFT UP、主題歌)

2023年

BLUE PROTOCOL(PC、バンダイナムコ、メインテーマ)

※略号
PS4=プレイステーション4
3DS=ニンテンドー3DS
SW=ニンテンドーSWITCH
PC=パソコン

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