洞窟物語「大農園」【ギター演奏・コード進行111】

洞窟物語「大農園」動画
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発売年月:2004年12月
機種:PC(Windows)
メーカー:開発室Pixel
タイトル名:洞窟物語(Cave Story)
曲名:大農園(Plantation)
作曲:天谷大輔(Daisuke Amaya)
演奏難易度:☆★★★★(難しい)

今回の演奏は、2004年12月にPCのフリーゲームとしてリリースされ大ヒット、後に公式・非公式の様々なプラットフォームに移植された『洞窟物語(Cave Story)』のタイトル曲としても使われている大農園ステージBGMをソロギターアレンジでお届けします。

洞窟物語 作品概要

洞窟物語(以下、本作)は、開発室Pixel(天谷大輔さんがほぼ独力で運営)が開発し、2004年12月にWindowsPC向けフリーゲームとして公開されました。

作品の舞台は「島」(詳細は語られない)にある洞窟から始まり、外見は人間と同じだけど実はロボットという主人公と、島の原住民であるミミガー、そしてそれぞれの思惑を持って行動している人間達を中心としてストーリーが展開していくサイドビュー探索型アクションゲームです。

ファミコン/スーファミ世代のゲームのようなドット絵とレトロゲーム機っぽい音楽がこの作品の特徴ですが、シナリオもとても熱い展開で、大人がやっても考えさせられる内容でしたよね。

本作は後に、Wii・ニンテンドー3DS・ニンテンドーSwitch・Steamなどの商業プラットフォームに移植された他、有志のファンの手によってMac・Linux・PSP・ニンテンドーDSにも非公式に移植されているのですが、それらと同時に英語の翻訳版も有志によって作られていて、日本国内のみならず海外でも多くのファンを獲得しました。

自分は2008年頃、このゲームの存在を知ってプレイしたのですが、隠し要素や伏線の多いシナリオにめちゃめちゃハマりました。あと、やっているうちにミミガー達に感情移入してしまって切なくなったのをおぼえています。

本作はファミコン/スーファミ世代にはたまらない内容だと思いますが、もっと若い世代にとっては本作がレトロゲームに興味を持つきっかけになるパターンも多かったようで、昨今のレトロゲームブームの火付け役となった側面もあるのではないでしょうか。

今でもオリジナル版は無料でダウンロードして遊べますので、やったことがない人は是非一度プレイする事をお勧めします。

洞窟物語の音楽と天谷大輔さんについて

本作の音楽ですが、前述の通りレトロゲーム機風(PSG音源や波形メモリ音源)の独自音源が使われていて、アレンジも往年のレトロゲーム音楽風の味付けがされています。

トビー・フォックス氏の『アンダーテール』(2015年)と似たアプローチですが、本作のほうが10年以上早いし、同じフリーゲーム勢として影響を与えていそうですよね。

本作の音楽はゲーム開発者である天谷大輔さんが作曲しています。

なにしろシナリオもグラフィックも実行プログラムもほぼ1人で作っているし、とても時間がかかって大変だっただろうことは想像できますが、その分、細部にまでこだわる事が出来たのではないでしょうか。

天谷さんの音楽的な経歴については、小学生の時に1年間エレクトーンを習い、中学生のときにブラスバンドをやっていたくらいで専門的な音楽教育は受けていないようなのですが、子供の頃からゲームが大好きでゲーム音楽を耳コピーしたり、自分でゲーム音楽風の曲を作曲していたそうです。

天谷さんは音楽・作曲のプロというわけではありませんが、オーディオ・音楽制作関連のソフトウェアを自作したりもしていて、音楽分野への並々ならぬ力の入れ方は感じます。

本作の作曲・アレンジ面では、自前で開発した音源との相性を考え抜いてやっているように思いますが、ご本人のインタビューでは、子供の時にプレイした「魔界塔士Sa・Ga」「スーパーマリオランド」などゲームボーイのタイトルからの影響に言及しています。

洞窟物語メインテーマ「大農園」について

今回演奏する「大農園」は、本作のタイトル曲=メインテーマですが、ゲーム終盤の重要ポイントである大農園ステージのBGMとしても使われていて、作品全体のメインテーマと考えられるものです。

曲としては、ノリの良いシャッフルビートをバックに、ちょっと切ないAメロ→キャッチーで親しみやすいBメロという構成ですが、PSG風の音色が凄くマッチしていますよね。

内声半音進行のイントロもこの音色で鳴らされるとめちゃめちゃインパクトあるし、始めてプレイする人が最初に聴くことになる「掴み」のタイトル曲として秀逸だと思います。

あとは、長いソロパートもあるのですが、ソロパートについては次のギターアレンジ解説をお読み下さい。

掛け合いとソロの再現にこだわり【ソロギター演奏】

ここからは今回のギターアレンジについて解説いたします。

まず、ギターで弾くのは思ったよりかなり難しかったです。シャッフルビートと指弾きというのがまず相性が良くないのですが、コードチェンジもキツい部分が多かったりして。

この曲をギターアレンジするに当たって、こだわりポイントが2つありました。

まず1つ目は、Aメロ・Bメロの掛け合い風になっているところの再現です。

原曲だとAメロ・Bメロは同じメロディーを違う音色で演奏することで掛け合い風の効果を出していますが、ギター1本でなんとか掛け合い風の雰囲気だけでも再現しようと、オクターブ下げた親指奏法を混ぜて演奏しています。

このせいで演奏難易度が跳ね上がりましたが、該当部分を全部同じに弾いてしまうとあまり面白く無いんですよね。

こだわりポイント2つ目は、間奏のソロの部分です。

ここはフレーズも細かいし、おぼえるだけでも大変そうなので割愛しようかとも思いましたが、ソロ後半の転調部分がカッコ良いし、ここで妥協をすると後々後悔して結局作り直しになりそうなので頑張ってフルコピーしました。

なお、オリジナルではイントロ・Aメロ・Bメロを2回繰り返した後にソロパートが入るのですが、個人的にはソロパートまでが長すぎる感じがしていて、とくにこういう演奏動画だと2回目のAメロBメロあたりで「もうこの後はずっと繰り返しかな?」と思われてソロまで聴いてもらえなそうな気もするので、「AB AB ソロ」という展開を「AB ソロ AB」と、ソロパートを前倒しで演奏する展開に変更しています。

大農園 コード進行

イントロ
|A♭|B♭7(onA♭)|D♭(onA♭)|A♭|
|A♭|B♭7(onA♭)|
|D♭(onA♭)|B B♭ A♭|

Aメロ
|E♭m7|E♭m7|B|D♭|
|E♭m7|E♭m7|B|D♭ B♭7|
|E♭m7|E♭m7|B|D♭|
|E♭m7|E♭m7|B|D♭ B♭7|

Bメロ
|G♭|D♭(onF)|G♭7(onE)|B|
|D|D|D♭7|D♭7|
|G♭|D♭(onF)|G♭7(onE)|B|
|D|D|D♭|D♭|

イントロ繰り返し2回(演奏では省略)

Aメロ繰り返し(演奏では省略)

Bメロ繰り返し(演奏では省略)

イントロ

ソロ
|A♭|B♭7(onA♭)|D♭(onA♭)|A♭|
|A♭|B♭7(onA♭)|
|D♭(onA♭)|B B♭ A♭|
|BM7|BM7|BM7|BM7|
|AM7|AM7|AM7|AM7|
|BM7|BM7|BM7|BM7|
|AM7|AM7|
|Edim|G7(♭5) G♭mM7 G7(♭5)(onF)|※1
|D♭mM7|A♭7|

Aメロ繰り返し

Bメロ繰り返し

アウトロ(イントロと同じ)
|A♭|B♭7(onA♭)|D♭(onA♭)|A♭|
|A♭|B♭7(onA♭)|
|D♭(onA♭)|B B♭ A♭|
|A♭|B♭7(onA♭)|D♭(onA♭)|A♭|
|A♭|B♭7(onA♭)|
|D♭(onA♭)|B B♭ A♭|
|A♭|

※1 この段のコード付けは仮のものです(下の「コード進行のポイント」参照)

コード進行分析

イントロ
■A♭メジャー
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|♭Ⅲ Ⅱ Ⅰ|

Aメロ
■G♭メジャー
|Ⅵm7|Ⅵm7|Ⅳ|Ⅴ|
|Ⅵm7|Ⅵm7|Ⅳ|Ⅴ Ⅲ7|
|Ⅵm7|Ⅵm7|Ⅳ|Ⅴ|
|Ⅵm7|Ⅵm7|Ⅳ|Ⅴ Ⅲ7|

Bメロ
|Ⅰ|Ⅴ|Ⅰ7|Ⅳ|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|Ⅴ7|Ⅴ7|
|Ⅰ|Ⅴ|Ⅰ7|Ⅳ|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|Ⅴ|Ⅴ|

イントロ繰り返し2回(演奏では省略)

Aメロ繰り返し(演奏では省略)

Bメロ繰り返し(演奏では省略)

イントロ

ソロ
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|♭Ⅲ Ⅱ Ⅰ|
■G♭メジャー
|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|
■Eメジャー
|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|
■G♭メジャー
|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|ⅣM7|
■Eメジャー
|ⅣM7|ⅣM7|
■Eマイナー
|Ⅰdim|♭Ⅲ7|※1
■D♭マイナー
|ⅠmM7|Ⅴ7|※1

Aメロ繰り返し

Bメロ繰り返し

アウトロ(イントロと同じ)
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|♭Ⅲ Ⅱ Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|Ⅰ|
|Ⅰ|Ⅱ7|Ⅳ|♭Ⅲ Ⅱ Ⅰ|
|Ⅰ|

※1 この段のコード付けは仮のものです(下の「コード進行のポイント」参照)

ソロパートの解釈が難しい【コード進行のポイント】

この曲はシンプルに聴こえますが、とくにソロパートなどキーの解釈が難しいところもあり、コード付けと分析に時間がかかりました。

とりあえず、頭から順に解説していきましょう。

まず、イントロはA♭音のペダルの上でコード内声が半音下降してコードチェンジする仕掛けで、ミニマル系の音楽でよく出てくる手法でしょうか。最後のB→B♭→A♭はA♭ブルーノートスケール(ブルースメジャースケール)のハーモナイズです。

その後、転調してAメロに入ります。AメロのキーはG♭メジャーキー(イントロから長二度転調)としましたが、平行調のE♭マイナーキーとしても良いでしょう。

BメロはハッキリとG♭メジャーキーですが、ベース音が半音下降していく仕掛けです。中身は3コードをオンコード化したものですが、最後、D(♭Ⅵ)→D♭(Ⅴ)に抜けているのがカッコ良いですよね。

次は難関だったソロパートの分析です。

ソロパートの導入はイントロと同じパターン上(A♭メジャーキー)でA♭ブルーノートスケール/A♭ドリアンスケールを中心にブルーズロック風のフレージングをしていますが、途中からコード進行がBM7→AM7というメジャー7thコード並行移動(ベースが動き回っているのでコードの判別も難しかった)に切り替わって、ぶっ飛んだ感じになっていきます。

この部分のスケールは基本的にリディアンスケールの並行移動ですが、部分的に次のコードの先取りをしているフレーズもあったりして分析に手間取りました。

そして、ソロパートのラスト4小節がこの曲一番の謎です。

一応、出ている音を全て耳コピーしてコードを当てはめてみましたが、このEdim→G7(♭5)→G♭mM7→G7(♭5)(onF)→D♭mM7→A♭7
というコード付けについては、正直あまり自信がありません。

他のパターンも色々考えられるし、例によってベースになるコードとフレーズをズラして作っている感じもするし、ここは宿題として最適解を思い付いたら改めて修正しようかと思います。

ソロパートのキー設定に関しては、①長二度転調(この曲で多用されている調号が2つ変化する転調)②短三度転調③同主調転調の組み合わせで解釈できるような形にしました。

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