ツヴァイ!!「エスピナ暗黒神殿」【ギター演奏・コード進行85】

ツヴァイ!! エスピナ暗黒神殿 動画
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発売年月:2001年12月
機種:
PC(Windows)
メーカー:日本ファルコム(Falcom)
タイトル名:ツヴァイ!!(Zwei!!)
曲名:エスピナ暗黒神殿(Dark Temple of Espina)
作曲:ファルコムJDK(Falcom Sound Team jdk)
演奏難易度:☆☆★★★(普通)

ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第85弾は、ツヴァイ!!より「エスピナ暗黒神殿」。ケルト民謡的なカラーの、ファルコム作品屈指の美曲です。

ツヴァイ!!|作品概要

ツヴァイ!!は2001年に日本ファルコムが発売したPC向けのアクションRPGです。

作品としての知名度はそれほど高くないと思われますが、後にPS2やPSPに移植されているので、プレイしたことがある人もそれなりに居るのではないでしょうか?

2001年当時のファルコムは、英雄伝説シリーズ、イースシリーズなどの主力シリーズタイトルを中心にリリースしていましたが、ツヴァイ!!は久々の完全新作タイトルです。

内容的には、ぽっぷるメイル(1991年、PC)からの流れを汲むコミカル路線アクションRPGで、2008年には続編のツヴァイ2(Windows)が発売されています。

ちなみにファルコムはこれを最後に、長らくメインに据えてきたPC向けのプラットフォームから撤退しています。

ツヴァイシリーズはオンラインゲーム化のアナウンスもあり、2012年に韓国でツヴァイ!!オンラインのオープンベータテスト版が公開されましたが、その後進展が無いようです。大人の事情でしょうか……。

ツヴァイ!!の音楽

ツヴァイ!!の音楽はファルコム作品の中でも、英雄伝説シリーズ、イースシリーズ、ぐるみんシリーズなどと並んで素晴らしいもので、今回演奏する「エスピナ暗黒神殿」以外にも、良い曲が多数収録されています。

「永劫の夢、大空の記憶」(タイトル曲)
「浮遊大陸アルジェス」(フィールド曲)
「幻の大地 セルペンティナ」
「ヒポリタの丘」
「最後の闘い」(ラスボス曲)

このあたりは、かなりの名曲と思います。

1980年代末頃から日本ファルコムのタイトルはファルコムJDK(Falcom Sound Team jdk)名義で制作されて、作曲家個人の名前が出ることは少ないのですが、ツヴァイ!!に関しては、園田隼人、白川篤史、石橋渡、服部麻衣子の各氏が担当した模様で、白川篤史さんの担当曲に関しては、後に本人が明らかにしています。

ちなみに「エスピナ暗黒神殿」は白川さんの作ではないようです。

日本ファルコムやファルコムJDKについてはこちらの記事をご覧ください。

ファルコムJDKの紹介記事内でも書いていますが、ファルコムのゲーム音楽にはファルコム節といえるような王道パターンがあって、加藤社長が提示したという「メロディー重視」「キャッチーなサビ」「明確な起承転結」というコンセプトに沿って作られているものが多いです。

「ツヴァイ!!」の音楽に関しては、他のファルコム作品と少し毛色が異なり、今回演奏の「エスピナ暗黒神殿」をはじめとして幻想的な曲が中心です。

楽曲アレンジも、ファルコムの他シリーズでよく聴かれるロック調のイケイケなアレンジは影をひそめていて、アコースティック系の楽器を中心とした渋めのアレンジとなっています。

エスピナ暗黒神殿

今回演奏する「エスピナ暗黒神殿」ですが、ツヴァイ!!の中でも人気が高い曲で、2008年にPSP版発売に合わせて作られたサントラにもスペシャルアレンジバージョンが収録されています。

エスピナ暗黒神殿は中盤から後半で訪れるダンジョンですが、この曲はアイルランド(ケルト)民謡的なカラーが強く、神秘的な雰囲気と静寂感がよく表現されていると思います。

完全ソロギターでシンプルアレンジ【ソロギター演奏】

原曲はピアノと管楽器(クラリネット?オーボエ?)とストリングスによるアレンジですが、使用音域が広い上に、G♯(A♭)マイナーキーという解放弦が使いにくいキーなので、ソロギター化するには移調が必須だと思いました。

移調先にチョイスしたのは、ギターで最も音域を広くとりやすいEマイナーキーです。

このキーならオクターブ変更も少なくて済むし、メロディーとベースの音域干渉も減らせます。

ですが、やはりメロディーの跳躍が大きいし、最適なベース音を得ようと思うと左手のポジション移動がかなり大きくなります。

左手が忙しい分、右手のテクニックはシンプルにまとめて少しでも演奏に余裕が出るようにしました。

エスピナ暗黒神殿 コード進行

オリジナルのG♯(A♭)マイナーキーをEマイナーキーに移調しています。

イントロ
|Em9|Em9|Em9|Em9|
|Em9|Em9|Em9|Em9|

Aメロ
|Em|Em|Bm7|Bm7|
|Em|Em|Bm7|Bm7|
|D7|D6|G|G|
|F♯m7|F♯m7(onC♯)|
|B7sus4|B(onC♯)|
|Em|Em|Bm7|Bm7|
|Em|Em|Bm7|Bm7|
|D7|D6|G|G|
|G♯m7|G♯m7(onD♯)|
|C♯7sus4|C♯(onD♯)|

Bメロ
|EM7|EM7|EM7|EM7|
|G♯m7|G♯m7|G♯m7|G♯m7|
|C♯m7|C♯m7|
|G♯m7(onD♯)|G♯m7(onD♯)|
|EM7|EM7|F♯7|D♯7|
|EM7|EM7|EM7|EM7|
|G♯m7|G♯m7|G♯m7|G♯m7|
|AM7|AM7|G♯m7|G♯m7|
|GM7|GM7|F♯7|F♯7|

Cメロ
|G♯m7|G♯m7|D♯m7|D♯m7|
|G♯m7|G♯m7|D♯m7|D♯m7|
|F♯m7|F♯m7|C♯m9|C♯m9|
|F♯m7|F♯m7|C♯m9|C♯m9|

アウトロ(アレンジ、イントロと同じ)
|Em9|Em9|Em9|Em9|
|Em9|Em9|Em9|Em9|
|Em11|

コード進行分析

イントロ
■Eマイナー
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|

Aメロ
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅴm|Ⅴm|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅴm|Ⅴm|
|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|♭Ⅲ|♭Ⅲ|
■Bマイナー(属調)
|Ⅴm7|Ⅴm7|Ⅰ7sus4|Ⅱ7|

■Eマイナー
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅴm|Ⅴm|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅴm|Ⅴm|
|♭Ⅶ7|♭Ⅶ|♭Ⅲ|♭Ⅲ|
■C♯マイナー(短3度下)
|Ⅴm7|Ⅴm7|Ⅰ7sus4|Ⅱ7|

Bメロ
■G♯マイナー(属調)
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭ⅥM7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|Ⅳm7|Ⅳm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭Ⅶ7|Ⅴ7|
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭ⅥM7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|♭ⅡM7|♭ⅡM7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|ⅦM7|ⅦM7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|

Cメロ
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅴm7|Ⅴm7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅴm7|Ⅴm7|
■F♯マイナー(1音下)
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅴm7|Ⅴm7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅴm7|Ⅴm7|

アウトロ(アレンジ、イントロと同じ)
■Eマイナー(1音下)
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|Ⅰm7|

シンメトリックな転調を多用【コード進行のポイント】

この曲はどちらかというと理論からではなく、感覚から作ったのかな?と感じました。

コード進行的にかなり強引な動きに思える部分がありますが、メロディーと合わせると不思議と自然な感じになるので、理論で導き出したものではなく、実際に楽器で音を出しながらメロディーとコードを感覚でマッチングさせながら作ったのかな?と。

そしてメロディーやアルペジオの音の選び方が良いと思いますが、7度音やテンションばかり弾いていくところと、ルートや5度で出すところがハッキリ分かれていてメロディーにメリハリが出ています。

理論解説として久々に手応えがありそうなので、以下にセクション別に細かく解説します。

全て移調後の演奏キーで書きます。

Aメロ

Aメロはメインとなるメロディーを2回繰り返していて、それぞれ後半部分が転調している、という解釈をしましたが、これはメロディーラインから判断しています。

Aメロ後半の転調は複数解釈が成り立ちますが、1回り目と2回り目でメロディーが全音違いのシンメトリーになっているので、ここのディグリー(Ⅴm7→Ⅰ7)を揃えるという意図で、1回り目はBマイナーキーへ転調、2回り目はC♯マイナーキーへ転調、という解釈にしました。

Aメロ最後のⅠ(onⅡ)はポップスの常套句であるⅣ(onⅤ)と同様と思います。

Ⅳ(onⅤ)はⅤ11という解釈が一般的なので、Ⅰ(onⅡ)もⅡ11(4和音で書くとⅡ7)の解釈をしています。

Bメロ

BメロはさらにG♯マイナーキーへ転調して、Bメロの1回り目はダイアトニックぽく素直に行ってますが、2回り目でメロディーが微妙に変わって、AM7とGM7が登場します。

ここはナポリコードの解釈をしました。

ナポリコードは♭ⅡM7ですが、Ⅰに対してドミナントモーションの代理的に使用される事もあります。

この場合、AM7は普通にG♯m7に対するナポリコード、次のGM7はセカンダリードミナントならぬセカンダリーナポリコード的な解釈で、次のF♯7に対する♭ⅡM7という感じかな?と思います。

ちなみにⅦM7(G♯マイナーキーにおけるGM7)は単発でもサブドミナントマイナー系の代理コードとして使えますが、ナポリコードもコード機能はサブドミナントマイナーだし、解釈はどちらでも大差ありません。

Cメロ

CメロはⅠm→Ⅴmというリフが提示されますが、ここもシンメトリックに全音下のキーで同じ音型が繰り返されるので、素直に全音転調としました。

そうすると、G♯マイナー→F♯マイナー→Eマイナーと、綺麗に全音間隔でキーが下降して元のEマイナーキーに戻る動きになります。

全体的にシンメトリックなメロディーの全音転調が多い曲で、普通はそういう作り方をすると人工的になってゴツゴツしてしまうものですが、不思議とスムーズで癒しを感じさせる曲に仕上がっていますよね。

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