国本剛章【ゲーム音楽作曲家列伝第2部 第4回】

今回は1980年代にハドソンのファミコン・PCエンジンのタイトルを手掛け、スターソルジャー(1986年、ハドソン)などの音楽を担当した国本剛章さんをご紹介します。

国本さんがハドソンでゲーム音楽作曲をしていたのは1985年から1988年頃の正味3年間くらいですが、近年になってゲーム音楽の作曲活動に復帰されています。ハドソン時代は当時の大ヒットタイトルを担当していて、ゲーム音楽の発展に少なからぬ貢献をされた方です。

国本剛章さんプロフィール・略歴

本名:国本剛章(くにもと たけあき)
通称:キノコ国本
生年月日:1962年1月11日
作曲家デビュー:1985年10月(チャレンジャー)
代表作品:チャレンジャー、スターソルジャー、ヘクター’87、ボンバーキング

国本剛章さんは北海道の出身で、幼少時よりクラシック音楽を聴いて育ち、6歳でクラシックピアノを、12歳でギターを始めていますが、北海道大学入学後にベースギターを始めてからはベースがメインの楽器となり、北大軽音部のメンバーなどとバンド活動をしていました。

北大在籍中にアルバイトをしていたヤマハ楽器札幌店でやっていたMSXのシーケンスソフトでのデモ演奏がきっかけとなって、ハドソン(株式会社ハドソン、Hudson Soft)のプログラマー笹川敏幸さんに誘われてチャレンジャー(1985年10月発売)の音楽を担当して以降、1988年頃までハドソンのファミコンやPCエンジンのタイトルの音楽を担当することになります。

ちなみに、ハドソンは北海道のアマチュア無線ショップからゲームソフトメーカーになった企業で、当時のハドソン本社(札幌)は北大の技術系学生の溜まり場になっていたといいますが、北大軽音部の同僚である前野知常さん(作曲家・鍵盤奏者)と井上大介さん(鍵盤奏者)も、1986年から1991年頃にハドソンでゲーム音楽を作っていました。

前野さんは『ニュートピア1&2』『バトルエース』などのPCエンジンタイトルを、井上さんは国本さんと共作で『迷宮組曲』『新人類』などを手掛けています。

国本さんらが手掛けたタイトルは作曲者名がクレジットされていないものも多いですが、後にご本人が開設したブログで情報公開されていて、担当作品が明らかになってきました。

ハドソンへの曲提供は1988年頃まで続いていましたが、その後、バンドメンバーとともに上京。20年間以上に渡ってサラリーマンをしながらバンド活動をされていたようです。

1990年代以降はゲーム音楽からは遠ざかり、バンド活動も趣味のものとなっていったようですが、インターネットの普及とともにハドソン時代の楽曲が高い評価を受けている事実を知り、2005年にはブログを開設して自らも情報発信を始めました。

2008年頃からは再びバンド活動も活性化させていて、複数のバンドでベース・鍵盤奏者として活動する他、作曲活動も再開しています。

2012年にソロアルバム『国本剛章WORKS ~ひつじの丘~ 』を発表。2013年からはゲーム音楽制作にも復帰し、2022年には2枚目のソロアルバム『Baby’s breath』を発表しました。

なお、ハドソン社は2012年にコナミデジタルエンタテイメントに吸収合併され、同社のブランドの1つとなっていましたが、2014年にはコナミブランドに統一され、ハドソンのブランドは消滅。桃太郎電鉄シリーズやボンバーマンシリーズなど、ハドソンの看板タイトルは全てコナミが引き継いでいます。

国本剛章さんの音楽

国本剛章さんと言えば、スターソルジャーとチャレンジャーの音楽、そして「ボンバーキングのテーマ」が有名ですよね。このあたりはファミコン世代ならほとんどの方が聴いたことがあるのではないでしょうか。

また、ヘクター’87の音楽は海外(海外ではNES版『Starship Hector』として発売)でカルト的な人気があり、その音楽を専門に扱うファンサイトもあるくらいです。

国本さんのゲーム音楽の作風は、主要作品がファミコン音源だったこともあって音楽ジャンル的にはあまり明確ではないのですが、クラシック→バンド活動という道を歩んできただけあって、ロック・ポップス系の手法も多用しつつ、ベースにはクラシック音楽があるのを感じます。

チャレンジャーでは「軍隊行進曲」(シューベルト)の、忍者ハットリ君では「アルルの女」(ビゼー)、「天国と地獄」(オッフェンバック)といったクラシックの楽曲を巧みにアレンジして採り入れていたり。

スターソルジャーの音楽なんかも、オーケストラアレンジでやればクラシックベースの映画音楽みたいになりそうです。

一方で「ボンバーキングのテーマ」のようなストレートなJMM(ジャパニーズ・メランコリック・メロディー)路線の曲もあったりするし、要望に応じて様々な作風の楽曲を作っていますよね。

ゲーム音楽の仕事としては、ファミコン等の3和音音源に特化したスタイルでやっていたため、それ以降の音数が増えて音色もリアルになってくる時代に入ると、他の専業作曲家が激増してきたこともあって急激に仕事が無くなってしまったといいます。

このあたり、職業作曲家として生き残ることの厳しさを感じますが、国元さんが手掛けたファミコン/PCエンジン時代の楽曲の数々は、ご本人がゲーム業界を離れて以降も高い評価を受け続けていて、以降のゲーム音楽発展に与えた影響は大きなものがあると思います。

国本剛章さん作曲作品

※メーカー表記の無いものは全てハドソンのタイトルです

1985年

チャレンジャー(FC)

1986年

忍者ハットリくん 忍者は修行でござるの巻(FC)

スターソルジャー(FC)

迷宮組曲 ミロンの大冒険(FC)

1987年

新人類(FC、一部)

ミッキーマウス 不思議の国の大冒険(FC、一部)

高橋名人のBUGってハニー(FC、一部)

ヘクター’87(FC)

ボンバーキング(FC、井上大介と共作)

桃太郎伝説(FC、関口和之・前野知常と共作)

カトちゃんケンちゃん(PCE)

ビクトリーラン(PCE)

1988年

遊遊人生(PCE)

1989年

ブレイクイン(PCE、ナグザット、ボツになっていた曲を後から使用)

2013年

激おこぷんぷん丸(PC/iOS/Android、小松菜屋、1曲)

2016年

8BIT MUSIC POWER(PC/FC互換機、コロンバスサークル、1曲)

キラキラスターナイトDX(PC/FC互換機、コロンバスサークル、1曲)

2018年

協撃 カルテットファイターズ(SW、ハッピーミール、4曲)

2022年

プリンセスガーデニング(MD/GB、ハビットソフト、3曲)

2023年

スターガニアン(SW、レジスタ、2曲)

ガンストリーム チャレンジVer.(GG、ハビットソフト)

HABiT!(GB、ハビットソフト)

※略号
FC=ファミリーコンピュータ
PCE=PCエンジン
MD=メガドライブ(GAME IMPACT)
GB=ゲームボーイ(GAME IMPACT)
GG=ゲームギア(GAME IMPACT)
SW=ニンテンドーSwitch
PC=パソコン

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