ゲーム音楽作曲家列伝第39回は、植松伸夫さん・伊藤賢治さんの後継としてサガシリーズやファイナルファンタジーシリーズなど、スクウェア主力作品を手掛けた後「MONOMUSIK」を設立して活動している技巧派の作曲家、浜渦正志さんをご紹介します。
浜渦正志さんプロフィール・略歴
本名:浜渦正志(はまうず まさし)
生年月日:1971年9月20日
作曲家デビュー:1996年2月(フロントミッション・シリーズ・ガンハザード、スクウェア)
代表作品:サガフロンティア2、アンリミテッドサガ、ファイナルファンタジー13
浜渦正志さんのお父様は声楽家の浜渦章盛さんで、正志さんは両親の留学中にドイツのミュンヘンで生まれました。東京藝術大学声楽科卒業。
学生時代にゲーム雑誌『ファミマガ』で開催されたラグランジュポイント(1991年、コナミ)のBGMコンテストに応募して入賞したのが浜渦さんとゲーム音楽の関わりの始まりでした。
ですので、浜渦さんのデビューは1991年のラグランジュポイントでは?とも考えられますが、製品版には浜渦さんの曲は収録されていないので、本稿ではこれは除外しました。
それから5年後、1996年にスクウェアに入社してプロのゲーム音楽作曲家としてのキャリアをスタートさせています。
スクウェア時代は、主にFFシリーズやサガシリーズの音楽を担当し、植松伸夫さん・伊藤賢治さんの後継者的な立ち位置だったと思います。
中でも2009年に全編を担当したファイナルファンタジー13の音楽は高い評価を受けました。
2010年にスクウェアを退社、「MONOMUSIK」を設立してフリーランスに。
それ以降はゲーム作品だけでなく、アニメ・CM・Webサイトなどの音楽制作も手掛けるようになりました。
浜渦正志さんの音楽
浜渦さんの音楽はオーケストラアレンジが多く、技巧的なイメージです。
サガフロンティア2では、たった一つのモチーフを展開させて全曲作り上げるという作曲技巧の極みのような荒業をやっていますし、作曲技巧的なことをいえば間違いなくゲーム音楽界でトップレベルだと思います。
ですが、プログレや現代音楽のようなアバンギャルドな感じがあるわけではなく、ぱっと聴いただけだと調和がとれた音楽に聴こえる中で、さりげなく複雑な処理をしているなぁ、という印象です。
そして、メロディーも特徴があり、なんというかクサメロ的な「ど真ん中」を巧みに避けた外し方をしてくるというか。大人な作り方なんですよね。
クサメロ要素をストレートに出す伊藤賢治さんや「プログレ的な複雑なことやってます感」もある植松伸夫さんと比べると、もっと洗練を求めてオブラートで包んだような音楽性と思います。
ただ、彼の音楽は聴く人を選ぶんではないかと。
例えば、すぎやまこういちさんも技巧派ですが、あちらはクサメロ要素が最初からほぼゼロなので、リスナーもそういう頭で聴きますが、浜渦さんの音楽は「クサメロ展開に転びそうな雰囲気もするけど、そうはならない」という感じで「クサメロ期待で聴いていたら肩透かしを食って不完全燃焼」的なリスナーも多いような。
凄く聴き込むとか、採譜して演奏してみるとかしないと、浜渦さんの音楽の真価はわからないのかもしれません。玄人向けの音楽だと思います。
浜渦正志さん作曲作品
1991年
ラグランジュポイント(FC、コナミ、コンテスト入賞、製品には未収録)
1996年
FRONT MISSION SERIES GUN HAZARD(SFC、スクウェア、植松伸夫・光田康典・仲野順也と共作)
トバルNo.1(PS、スクウェア、4曲)
1997年
チョコボの不思議なダンジョン(PS、スクウェア)
1999年
サガフロンティア2(PS、スクウェア)
2001年
ファイナルファンタジー10(PS2、スクウェア、植松伸夫・仲野順也と共作)
2002年
アンリミテッドサガ(PS2、スクウェア)
2005年
武蔵伝2ブレイドマスター(PS2、スクウェア・エニックス)
2006年
ファイナルファンタジー7 ダージュ・オブ・ケルベロス(PS2、スクウェア・エニックス)
2008年
シグマハーモニクス(DS、スクウェア・エニックス)
ウーロン茶物語(サントリー公式サイトのフラッシュゲーム)
2009年
ファイナルファンタジー13(PS3/Xbox 360、スクウェア・エニックス)
ミュージックガンガン(AC、タイトー、1曲)
2011年
ファイナルファンタジー13-2(PS3/Xbox 360、スクウェア・エニックス)
勇者30 SECOND(PSP、マーベラス、一部)
ミュージックガンガン!2 Shooting Star(AC、タイトー)
2012年
データカードダス アイカツ!(AC、バンダイナムコ、1曲)
2013年
ファイナルファンタジー13 ライトニング・リターンズ(PS3/Xbox 360、スクウェア・エニックス、鈴木光人・水田直志と共作)
グルーヴコースター(AC、タイトー、1曲)
2014年
ぐんたま(携帯電話、コーエーテクモ)
2015年
レジェンド・オブ・レガシー(3DS、フリュー)
CHUNITHM(AC、セガ、1曲)
2016年
ワールド・オブ・ファイナルファンタジー(PS4/PSV、スクウェア・エニックス)
2017年
アライアンス・アライブ(3DS、フリュー)
2019年
アライアンス・アライブ HDリマスター(PS4、フリュー)
2020年
ファイナルファンタジー7リメイク(PS4、スクウェア・エニックス、鈴木光人・植松伸夫と共作)
※略号
AC=アーケードゲーム
FC=ファミコン
SFC=スーパーファミコン
PS=プレイステーション
PS2=プレイステーション2
PS3=プレイステーション3
PS4=プレイステーション4
PSP=プレイステーションポータブル
PSV=プレイステーションVita
DS=ニンテンドーDS
3DS=ニンテンドー3DS
PC=パソコン
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