田中公平【ゲーム音楽作曲家列伝番外編11】

今までゲーム音楽作曲家列伝では、ゲーム音楽がメインの作曲家を紹介してきましたが、「番外編」として、ゲーム音楽の活動がメインではない作曲家や外国人作曲家の紹介をしています。

番外編第11回は、アニソン・劇伴の大家である田中公平さんです。

田中さんは、ゲーム音楽もかなりの数を手掛けていて、代表作品であるサクラ大戦シリーズ(セガ)に至ってはライフワークと呼べるような深い関わり方をしています。

田中公平さん プロフィール・略歴

本名:田中公平(たなか こうへい)
生年月日:1954年2月14日
ゲーム音楽作家デビュー:1990年12月(FM-Towns版ウィザードリィ5)
代表作品:サクラ大戦シリーズ、レナス1&2、天外魔境シリーズ

田中公平さんは、東京芸術大学音楽学部作曲科卒業後、ビクター音楽産業に3年間勤務し、その後バークリー音楽院に2年間留学。帰国後に作曲家活動を開始しました。

前々回にご紹介した川井憲次さんとは対照的に王道的な音楽教育を受けて来た方ですが、田中さんと川井さんの親交はよく知られていて、『地球防衛企業ダイ・ガード』『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』など共演作品もあります。

田中さんは、1982年に『わが青春のアルカディア 無限軌道SSX』(松本零士原作)の挿入歌編曲を担当したのをきっかけに、アニメ作品を中心にテーマ曲や劇伴の作編曲の仕事を本格化させています。

田中さんが作曲で参加したアニメ作品は半端な数ではないのですが、そのうち、とくに知名度が高そうな作品を列挙してみましょう。

愛してナイト、ドテラマン、ダーティペア(OVA版)、エスパー魔美、アニメ三銃士、トップをねらえ!、ドラゴンボールZ(イメージソング)、笑ゥせぇるすまん、オバタリアン、ふしぎの海のナディア(イメージソング)、21エモン、剣勇伝説YAIBA、機動武闘伝Gガンダム、勇者王ガオガイガー、銀河鉄道999エターナル・ファンタジー(1998年映画)、機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート(1998年映画)、劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕(1999年映画)、ONE PIECE(浜口史郎と共作、関連作品も多数担当)、ああっ女神さまっ(主題歌)、ぬらりひょんの孫、ジョジョの奇妙な冒険(主題歌)、ゲゲゲの鬼太郎(2018年版、主題歌)、プラネットウィズ

――これだけでも日本のアニメ界における田中さんの存在感の大きさがお分かりいただけるかと思いますが、東京アニメアワード・アニメーション・オブ・ザ・イヤー音楽賞(2002年)、平成アニソン大賞作曲賞(2019年)を受賞するなど、その実績は高く評価されています。

また、田中さんは歌手としても活動されていて、歌手としてアルバム『ココロネsong 1st』(2008年)と『ココロネsong 2nd』(2009年)をリリースしました。歌手としての歌唱力は非常に高く、4オクターブの音域が出せるといいます。

田中公平さんとゲーム音楽の関わり

今ご紹介した通り、アニソン界の第一人者として活躍されている田中公平さんですが、アニメと平行してゲーム作品にもかなりの曲数を提供しています。

田中さんが最初にゲーム音楽に関わったのは、1990年発売のFM-Towns版『ウィザードリィⅤ』で、その後、天外魔境シリーズ(ハドソン)やレナス1,2(アスミック)、バウンティソードシリーズ(パイオニアLDC)などを担当しました。

そして、田中公平さんといえば、サクラ大戦シリーズ(セガ)が最も有名ですよね。

サクラ大戦シリーズについては、1996年の第1作から現在に至るまで、ほぼ単独で曲提供を続けられていて、田中さんのライフワークと呼べるようなものになっています。

田中公平さんの音楽

田中さんの制作スタイルは、高度な作曲技巧に裏打ちされた劇伴制作と、もう一つの柱として、非常にキャッチ―でおぼえやすい歌ものの作曲を得意としていて、アニメ・ゲーム作品向けの主題歌・挿入歌の他に、アーティスト(歌手)への楽曲提供も積極的に行っています。

ゲームファンにとっては、田中公平さんが作った歌もの楽曲といえば、サクラ大戦シリーズの主題歌「檄!帝国華撃団」のイメージが強いと思うのですが、あの曲は敢えて昔の日本の唱歌とか昭和のアニソン風に作っていて、それが曲のインパクト・魅力になっていますよね。

自分も、田中公平さんの音楽といえば「檄!帝国華撃団」をはじめとしたサクラ大戦シリーズの楽曲とか、ジョジョの主題歌のイメージだったのですが、今回の記事を書くに当たり、改めて1980年代から現在に至るまでの、田中さんが担当されたアニメ・ゲームの音楽を聴いてみました。

以下、自分が感じた田中公平さんの音楽の印象を率直に書いてみたいと思います。

今まで、田中さんの音楽のイメージとして、全体にストリングスやホーンセクションをバンバン使った派手で華やかな楽曲が多い印象を持っていたのですが、今回、色々なタイプの作品を聴き進めるにつれ、曲調が多彩すぎて解説の的が絞れないというか、それほど守備範囲の広い音楽家だと思いました。

インストの劇伴では、作品の世界観に合わせてオーケストラアレンジとロックアレンジの比率を上手く調整して作っている感じのものが多く、歌ものは、日本人好みのメロディーのアニソン・ポップロック路線が多いように思ったのですが、ビッグバンドジャズ、ファンク、プログレ、ヒーリングミューシック的なアレンジのものもあったり、作品によっては邦楽を含む民族音楽色を感じさせる部分もあったりと、引き出しの幅が半端ではありません。

唯一、テクノ・EDM系のカラーは薄いと思うのですが、他はほぼオールジャンルですよね。

そんな感じでアレンジは非常に多彩なのですが、田中さんの音楽の芯となっているのは、やはり骨太なメロディーとリズム感覚かな?と思います。

劇伴やゲーム音楽のインスト曲にしろ、アニメ主題歌などの歌ものにしろ、妙に落ち着くというか、耳に残るというか、日本人ならではのリズム感覚とメロディーセンスを大事されているように感じました。

田中公平さんのゲーム音楽作曲作品

1990年

FM-TOWNS版ウィザードリィⅤ Heart of the Maelstrom(PC、Sir-Tech/ASCII)

1992年

超攻合神サーディオン(SFC、アスミック)

レナス 古代機械の記憶(SFC、アスミック)

ジャストブリード(FC、エニックス)

1993年

天外魔境 風雲カブキ伝(PCE、ハドソン)

1995年

空想科学世界ガリバーボーイ(PCE、ハドソン、アニメ版の音楽も担当)

バウンティソード(SFC、パイオニアLDC)

天外魔境ZERO(SFC、ハドソン、笹川敏幸と共作)

1996年

レナスⅡ 封印の使徒(SFC、アスミック)

サクラ大戦(SS、セガ)

1997年

花組対戦コラムス(SS/AC、セガ)

アランドラ(PS、マトリックス)

バウンティソード・ファースト(PS、パイオニアLDC)

グランストリーム伝紀(PS、クインテット、ムービーBGM)

1998年

サクラ大戦2 君、死にたもうことなかれ(SS、セガ)

超魔神英雄伝ワタル ANOTHER STEP(PS、バンプレスト)

バウンティソード ダブルエッジ(PS、パイオニアLDC)

火星物語(PS、アスキー、主題歌)

ドラゴンフォースⅡ 神去りし大地に(SS、セガ、主題歌)

1999年

アランドラ2 魔進化の謎(PS、マトリックス)

ゲートキーパーズ(PS、角川書店)

2000年

大神一郎奮闘記〜サクラ大戦歌謡ショウ「紅蜥蜴」より(DC、セガ)

サクラ大戦GB 檄・花組入隊!(GBC、メディアファクトリー)

高機動幻想ガンパレード・マーチ(PS、アルファシステム、一部)

2001年

サクラ大戦3 巴里は燃えているか(DC、セガ)

サクラ大戦GB2 サンダーボルト作戦(GBC、メディアファクトリー)

サクラ大戦オンライン(DC、セガ)

2002年

サクラ大戦4 恋せよ乙女(DC、セガ)

2003年

サクラ大戦 熱き血潮に(PS2、セガ)

2004年

サクラ大戦物語 ミステリアス巴里(PS2、セガ)

サクラ大戦Ⅴ EPISODE0 荒野のサムライ娘(PS2、セガ)

2005年

サクラ大戦Ⅴ さらば愛しき人よ(PS2、セガ)

2006年

サクラ大戦1&2(PSP、セガ)

2008年

ドラマチックダンジョン サクラ大戦〜君あるがため(DS、セガ)

2009年

バイオニックコマンドー マスターD復活計画(PS3/Xbox360、カプコン、主題歌)

2010年

エンド・オブ・エタニティ(PS3/Xbox360、セガ、桜庭統と共作)

2011年

天外魔境 JIPANG7(ブラウザ、アルケミア)

2012年

GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動(PSV/PS4、ソニー)

2014年

パズドラ バトルトーナメント~ラズール王国とマドロミドラゴン(AC、スクウェア・エニックス、伊藤賢治と共作)

2017年

GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択(PS4、ソニー)

2018年

プリンセスコネクト!Re:Dive(iOS/Android/PC、Cygames、オープニング曲)

2019年

ONE PIECE WORLD SEEKER(PS4/XboxOne/PC、ガンバリオン/バンダイナムコ)

新サクラ大戦(PS4、セガ)

2020年

サクラ革命~華咲く乙女達~(iOS/Android、セガ、東大路憲太と共作)

※略号
FC=ファミコン
GB=ゲームボーイ
SFC=スーパーファミコン
PS=プレイステーション
SS=セガ・サターン
PS2=プレイステーション2
PS3=プレイステーション3
PS4=プレイステーション4
PSP=プレイステーションポータブル
PSV=プレイステーションVita
3DS=ニンテンドー3DS
SW=ニンテンドーSWITCH
PC=パソコン

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