ゲーム音楽作曲家列伝では、原則的にゲーム音楽がメインの国内作曲家を紹介してきましたが、「番外編」として、ゲーム音楽の活動がメインではない作曲家や外国人作曲家の紹介をしています。
今回はTVドラマ『渡る世間は鬼ばかり』テーマ曲の作曲者として有名な作曲家/ピアニストである羽田健太郎さんの紹介です。
羽田さんは2007年に肝臓癌で亡くなられましたが(享年58歳)、ゲーム音楽では国内版のウィザードリィシリーズを手掛けたことが知られています。
羽田健太郎さんプロフィール・略歴
本名:羽田健太郎(はねだ けんたろう)
通称:ハネケン
生年月日:1949年1月12日(2007年6月2日死去)
ゲーム音楽作家デビュー:1987年12月(ファミコン版ウィザードリィ1)
羽田健太郎さんは、クラシック音楽をベースとしたピアニスト/作曲家です。
3歳からクラシックピアノを始めて、桐朋音楽大学を卒業するまではクラシック一本でしたが、大学卒業後にジャズを学んでスタジオミュージシャンやバックバンドピアニストとして活躍しました。
これは、クラシックピアノ一本でやっていくのは経済的に厳しかったという事情もあったようですが、スタジオミュージシャンとしてはめざましい活躍をしていて、当時(1970年代)レコーディングされたヒット曲は、そのピアノパートの大半を羽田さんが弾いていたと言われているくらいです。
一方で1977年頃より職業作曲家として、アニメ・TVドラマ・映画などの音楽(いわゆる劇伴)を手掛けるようになり、その分野でも高い評価を得るようになりました。
アニメでは『宝島』『超時空要塞マクロス』『スペースコブラ』『名探偵ホームズ』『宇宙戦艦ヤマト完結編』など。
TVドラマでは『西部警察』『渡る世間は鬼ばかり』など。
映画では『戦国自衛隊』『さよならジュピター』『復活の日』などなど、この時代(1970年代末から1980年代)に世に出た数々のヒット作品の劇伴を手掛けました。
1980年代から再びクラシック系の仕事を増やしていますが、この頃からTVのバラエティー番組などへの露出も増え、ピアニスト・作曲家・タレントとして多忙を極める生活だったようです。
しかし、1998年末に長年の飲酒過多が原因で体調を崩して入院して、9日間昏睡状態となる事件があり、これ以降度々体の不調に悩まされるようになります。
復帰後は、TV朝日『題名のない音楽会21』の司会者を2001年から2007年の6年間に渡って務めたりしてクラシック音楽の普及に尽力しましたが、1998年の入院以来、完全に体調が回復することは無く、2007年に肝臓癌で亡くなられました。58歳でした。
羽田健太郎さんの音楽
羽田健太郎さんが作った音楽といえば、世間的には『渡る世間は鬼ばかり』のテーマ曲の知名度が高く、自分もそのイメージだったのですが、羽田さんの残した作品をあれこれ聴いてみると、あの曲は羽田さんの持つ音楽性の中心からは少し外れている気がするんですよね。
大人になってから仕事として身につけた歌謡曲の手法が『渡る世間は鬼ばかり』テーマ曲に結実している、ということで、あの曲も羽田さんの一面を表しているとも言えますが、羽田さんの音楽性の中心はやはり正統派のクラシック音楽だと感じます。
しかし、商業的には歌謡曲系のほうが成功して、そちらでどんどん有名になってしまう、というクリエイターとしてのジレンマはあったのかもしれませんね。
そんな中で、羽田さんが手掛けたゲーム音楽(主にウィザードリィシリーズ)は、数は少ないながらも、彼の本当にやりたかった内容に近かったのでは?と感じます。
日本版ウィザードリィシリーズ
今回は羽田健太郎さんが手掛けたゲーム音楽について書かせていただきます。
羽田さんはファミコンやスーパーファミコンなどコンシューマ機向けの日本版ウィザードリィシリーズを手掛けていますが、これはドラゴンクエストシリーズがすぎやまこういちさんを起用して成功したのを見て、すぎやまさんと同じく作曲家として知名度があった羽田さんに依頼した、という経緯があったとのことです。
なお、ウイザードリィはロバート・ウッドヘッド、アンドリュー・グリーンバーグの両氏が開発し、1981年に米サーテック社が発売したAppleⅡ用ソフトで、『ウルティマ』(1981年、オリジン社)とともに、黎明期のコンピューターRPGに決定的な影響を与えた金字塔タイトルです。
羽田さんは、ファミコン版ウィザードリィ1(1987年12月)を皮切りに、6まで(4を除く)のナンバリングタイトルと、後にローカスから発売されたリメイク作品の音楽を担当しました。
依頼を受けた当初、羽田さんはゲームの知識は全く無く、「ウィザードリィ」というのは鳥の名前(笑)かと思ったくらいで「何故自分に依頼が?」とビックリしたといいます。
羽田さんが手掛けたウィザードリィシリーズの音楽は、クラシック音楽をベースとした格調高いものが中心です。
羽田さんはポップス系の作編曲も得意ですが、やはりこういう王道的なクラシック系劇伴はお手のもので、TVドラマや映画で慣らしたセンスで、ゲームの世界観や場面場面にバッチリ合った音楽を提供していますよね。
ちなみに、自分はスーパーファミコン版のウィザードリィ5のオープニング曲が好きだったのですが、あれは羽田さんの作ではなく『アブデラザールまたはムーア人の復讐』第2曲「ロンドー」(ヘンリー・パーセル作曲)という原曲があるのを最近になって知りました。
羽田健太郎さんのゲーム音楽作品
1987年
ウィザードリィ1(FC/GB/SFC、アスキー)
1989年
ウィザードリィ2(FC/GB/SFC、アスキー)
1990年
ウィザードリィ3(FC/GB/SFC、アスキー)
1992年
ウィザードリィ5(SFC、アスキー)
1995年
ウィザードリィ6(SFC、アスキー)
1998年
ウィザードリィ リルガミンサーガ(PS/SS/PC、ローカス)
2001年
ウィザードリィ ニューエイジ・オブ・リルガミン(PS/PC、ローカス)
ときめきメモリアル3 〜約束のあの場所で〜(PS2、コナミ、初回限定付属CDへ曲提供)
※略号
FC=ファミコン
GB=ゲームボーイ
SFC=スーパーファミコン
PS=プレイステーション
SS=セガ・サターン
PS2=プレイステーション2
PC=パソコン
コメント