ゲーム音楽作曲家列伝ではゲーム音楽がメインの作曲家を紹介してきましたが、番外編としてゲーム音楽の活動がメインではない作曲家や外国人作曲家の紹介をしています。
今回は、アイドル系アーティストやアニメ作品への曲提供で大成功している作曲家、ヒャダインこと前山田健一さんをご紹介します。
前山田さんは、ゲーム音楽のアレンジ動画をニコニコ動画に投稿したことがキッカケになってJポップ作曲家としてブレイクしたという特殊な経歴を持っています。
前山田健一さん(ヒャダイン) プロフィール・略歴
本名:前山田健一(まえやまだ けんいち)
通称:ヒャダイン
生年月日:1980年7月4日
ゲーム音楽作家デビュー:2009年12月(らき☆すた ネットアイドル・マイスター)
ゲーム音楽代表作品:アイドルマスターシリーズ
ヒャダインこと前山田健一さんは、2010年頃から急激に人気化し、一時はメディアで引っ張り凧だった作曲家・音楽プロデューサー・タレントです。
前山田さんは、主にアイドル系のアーティストやアニメ作品に曲提供をして、2010年代前半を中心に尋常ではない売れ方をしました。
彼が曲提供したアーティストは数えきれませんが、誰でも知っているレベルの超メジャーな案件だけ挙げていっても、AKB48、関ジャニ∞、氣志團、倖田來未×misono、郷ひろみ、ゴスペラーズ、SMAP、DISH//、東方神起、中川翔子、PUFFY、水樹奈々、モーニング娘。、ももいろクローバーZ、山下智久、ゆず、LiSA、Ryuchell、などなど、そうそうたる顔ぶれですよね。
もう一つの柱であるアニソンも参加作品数が膨大なのですが、こちらもメジャー作品のみ挙げてみましょう。
頭文字D Fourth Stage、クレヨンしんちゃん(編曲)、侵略!イカ娘、涼宮ハルヒシリーズ、DD北斗の拳、電波女と青春男、日常シリーズ、HUNTER×HUNTER(編曲)、魔法つかいプリキュア!、みつどもえシリーズ
その他、劇場版『海月姫』(2014年、能年玲奈・菅田将暉出演の実写映画)の劇伴など映画音楽の仕事や、NHKの子供向け番組「ワラッチャオ! 」「いないいないばあっ! 」などに楽曲提供したりもしています。
そんな前山田さんの音楽歴ですが、3歳からピアノを習い始め、中学生の時にシンセサイザーを使った打ち込みによる音楽制作を始めました。作詞・作曲は独学で身につけたといいます。
京都大学在学中にはアカペラサークルに所属して歌にも本格的に取り組みました。ちなみに、前山田さんは歌手としても活動していてライブや音源制作を行っています。
作曲家としては、2007年頃から事務所に所属してプロ活動を開始しましたが、最初は全く売れなかったそうです。
ニコニコ動画でのゲーム音楽アレンジ動画
前山田さんは、作曲家としてプロ活動を開始したのとほぼ同時期(2007年頃)に、ニコニコ動画で「ヒャダイン」(ドラクエの氷系魔法の名前ですよね)名義でゲーム音楽のアレンジ動画を投稿を開始していますが、本業の事務所での活動よりも個人でやっていたニコニコ動画のゲーム音楽アレンジ動画のほうで大好評を博し、2010年には本名を公開して活動を拡大。結果として、これが前山田さんのサクセスストーリーの起爆剤となりました。
前山田さんは、もともとゲーム音楽マニアで、とくに伊藤賢治さん(ロマンシングサガシリーズなどを担当)に作曲家として多大な影響を受けたという事です。
なお、彼のゲーム音楽アレンジの投稿作品は50本以上になりますが、ファイナルファンタジーシリーズ、ドラゴンクエストシリーズ、ロマンシングサガシリーズ、ロックマンシリーズからの選曲が中心です。
現在も、本名での作曲家活動と平行してヒャダイン名義でのニコニコ動画投稿やタレント活動を継続されています。
前山田健一さん(ヒャダイン)の作るゲーム音楽
作曲家としての前山田さんは、アーティストやアニメ作品への曲提供がメインで、その音楽性はAKB48に象徴されるようなアイドルポップ・アイドル系アニソンが中心なのですが、ここでは彼のルーツでもあるゲーム音楽作品にスポットを当ててみたいと思います。
彼が手掛けたゲーム音楽(記事末尾参照)のうち、アイドルマスターシリーズなどは本業のアイドルポップ路線とほぼ同様なのですが、TOY’S PARADE(2016年)、鉄道パークZ(2018年)といったスマホゲームにインスト曲を提供しています。
また、提供曲数は2曲ですが『桃太郎電鉄 昭和、平成、令和も定番!』(2020年)では、桃電シリーズの歴代作品を担当するサザンオールスターズのベーシスト関口和之さんと共作していて、とても面白い組み合わせだと思いました。
今回は、鉄道パークZと桃電の前山田さん担当曲を聴いてみたのですが、どちらも打ち込みメインで制作された感じのインスト曲で、完全に作品に溶け込んでいるので「ヒャダイン作曲」という前情報がなければ、正直、分からないかも(笑)
鉄道パークZのほうは本業のアイドルポップ路線をインスト化したような感じですが、桃電のほうは、応援歌ぽかったり、ディズニーぽかったり、桃電の持つパロディー・コミカルテイストが入っていて、しっかりゲームの世界観は踏まえているなぁ、と思いました。
今回改めて前山田さんのゲーム音楽を聴いてみた印象としては、作曲家としての前山田さん(ヒャダイン)は歌もののアイドルポップがメインであり、ゲーム音楽は彼のルーツの一つではあるものの、現時点では仕事としてのゲーム音楽にはあまり本腰を入れていないように思います。
でも、彼の経歴を考えると、今後ルーツに立ち戻ってゲーム音楽に本格参戦する可能性もあるのでは?という事も期待してしまいますよね。
前山田健一さん(ヒャダイン)のゲーム音楽作曲作品
前山田さんはゲームに関しては主題歌提供や、アニメ作品に提供した曲がゲーム化されて使われる、という形が多いです。
2009年
らき☆すた ネットアイドル・マイスター(PSP、角川書店、2曲)
2010年
怒首領蜂大復活(iPhone/iPod touch移植版)(iOS、ケイブ、一部)
2011年
涼宮ハルヒちゃんの麻雀(PSP、角川書店、1曲)
2012年
拡散性ミリオンアーサー(iOS/Android、スクウェア・エニックス、一部)
2013年
アイドルマスター ミリオンライブ!(携帯電話、バンダイナムコ、3曲)
2015年
あんさんぶるスターズ!(Android/iOS、カカリアスタジオ、2曲)
Android Taico(Android、Googleのイベントで公開されたゲーム)
2016年
TOY’S PARADE(iOS/Android、ザッパラス)
2018年
鉄道パークZ(Android/iOS、東映エージェンシー)
オンゲキ(AC、セガ、1曲)
2020年
桃太郎電鉄 昭和、平成、令和も定番!(SW、コナミ、関口和之と共作、2曲)
※略号
AC=アーケードゲーム
PSP=プレイステーションポータブル
SW=ニンテンドーSWITCH
PC=パソコン
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