発売年月:1986年11月から1987年12月
機種:マルチプラットフォーム(7機種)
メーカー:T&Eソフト(T&E SOFT)
タイトル名:ディーヴァ(DAIVA)
曲名:ディーヴァⅠ(DAIVA Ⅰ)
作曲:浅倉大介(Daisuke Asakura)
演奏難易度:☆☆★★★(普通)
今回はアクセスやTMレボリューションでの活動で有名な浅倉大介さんのデビュー作である『ディーヴァ(DAIVA)』のメインテーマ曲を演奏します。
ディーヴァはT&Eソフトが開発し、1986年末から1987年にかけて発売されたタイトルですが、7機種でそれぞれ違ったバージョンを出すというマルチプラットフォーム展開をして話題になりました。
ファミコン版も発売されているので、やった事がある方も多いのではないでしょうか。
なお、この曲の正式名称は「ディーヴァⅠ(DAIVA Ⅰ)」といいますが、ここでは「DAIVAメインテーマ」と呼ぶことにします。
ディーヴァ作品概要
ディーヴァ(DAIVA)は、ハイドライドシリーズなどを作ったT&Eソフトが開発したシミュレーション/アクションゲームで、7機種(PC8801・PC9801・X1・FM77AV・MSX・MSX2・ファミコン)で発売されましたが、単なる移植ではなく、各機種版でそれぞれ異なるシナリオやプレイヤーキャラが用意されていて、別の機種版との連携要素(別の機種のプレイヤーに援軍を送ったり、2人同時プレイが出来たりした)も採り入れるなど、当時としてはかなり野心的な試みがされた作品でした。
また、音楽も各機種版固有のテーマ曲が用意されていて、それがこの作品の売りの一つでもありました。
作曲は浅倉大介さん・冨田茂さん(T&Eソフト所属。レイドックシリーズやハイドライド3の音楽を担当)・丸山恵市さん(東芝EMI所属のスタジオミュージシャン)の3人が担当しています。
以下に、ディーヴァの各機種版とそれぞれのテーマ曲を列挙します。なお、ストーリーの順番と発売順は一致していないことに注意してください。
STORY1 ヴリトラの炎(PC-8801mkⅡSR版)
1987年2月発売
主人公:ルシャナ=パティー
テーマ曲:FLAME OF VLITRA(冨田茂)
STORY2 ドゥルガーの記憶(FM-77AV版)
1987年3月発売
主人公:ア=ミターバ
テーマ曲:MEMORY IN DURGA(冨田茂)
STORY3 ニルヴァーナの試練(X1版)
1987年2月発売
主人公:アモーガ=シッディ
テーマ曲:TRIAL OF NIRVANA(丸山恵市・冨田茂)
STORY4 アスラの血流(MSX版)
1987年4月発売
主人公:ラトナ=サンバ
テーマ曲:ASURA’S BLOODFUED(浅倉大介)
STORY5 ソーマの杯(MSX2版)
1987年3月発売
主人公:アクショー=ビア
テーマ曲:THE CUP OF SOMA(浅倉大介)
STORY6 ナーサティアの玉座(ファミコン版)
1986年12月発売
主人公:マータリ=シュバン
テーマ曲:IMPERIAL OF NIRSARTIA(丸山恵市)
STORY7 カリ・ユガの光輝(PC-9801VM/UV版)
1987年12月発売
主人公:クリシュナ=シャーク
テーマ曲:LIGHT OF KARI YUGA(浅倉大介)
発売順としては、STORY6(ファミコン版)が1986年12月に先行発売されたのに続いて、1987年2月から4月にかけてSTORY1からSTORY5の5作品が一気に発売されましたが、終章であるSTORY7(PC9801版)は、かなり時間があいて1987年12月に発売されました。
ディーヴァの世界観は、宇宙を舞台としたSFファンタジーでありながら、シナリオタイトルや人物名から分かる通り、インドの古典神話をモチーフとしています。
ゲームシステムとしては、戦略シミュレーションゲームに横スクロール型シューティングゲーム(惑星戦)を組み合わせたものでしたが、ファミコン版ではシミュレーション要素はかなり削られていて、逆にPC9801版ではアクション要素がカットされるなど、機種によってはかなりゲーム性が異なりました。
なお、ファミコン版・PC9801版以外の5機種版は、シナリオ・音楽・グラフィックスが違う以外はほとんど同じシステムが採用されています。
ちなみに、自分はPC8801版とファミコン版をプレイしました。
DAIVAメインテーマ曲について
今回演奏する「DAIVAメインテーマ」ですが、全機種版共通のテーマ曲であり、ゲーム中ではエンディングで使用されています。
機種によって音源が違うため、アレンジも異なるのですが、今回の演奏ではサントラCD版とPC8801版を参考にしました。
音楽性としては、ニューエイジ・プログレ系だと思いますが、映画音楽的なものも感じますよね。
この曲は、2分程度と短い中でプログレ的に多彩な展開をします。
とくに、ブリッジの5度進行やエンディングの全音下降による転調の仕掛けは往年のプログレっぽい展開ですが、そういう派手な仕掛けを挟みつつ、違和感無く前後を繋いでいるところに作曲の巧みさを感じます。
作曲者の浅倉大介さんはディーヴァへの参加後、TMネットワークのサポートメンバーとなったのをきっかけにJポップのフィールドで大活躍することになるのですが、詳しくはこちらのページをご覧ください。
浅倉さんはディーヴァの仕事をきっかけに、T&Eソフト・東芝EMIと関わりをもつようになり、ディーヴァのサントラCD『DAIVA/浅倉大介 イメージサウンドトラック』(1987年、東芝EMI)やT&Eソフト5周年記念のゲーム音楽テープ(ハイドライド3やスーパーレイドックに付属)の制作も手掛けています。
浅倉さんが初期に作ったゲーム音楽は、その後の浅倉さんの音楽性とはかなり異なっていますが、色々な意味で興味深いものがありますよね。
ギターでの再現が難儀な曲【ソロギター演奏】
今回は、前述の通りサントラCD版とPC8801版(エンディング曲)を参考にギターアレンジを作りました。
基本的にはサントラ版のほうをメインに採譜したのですが、サントラ版はシンセを大量に重ねた分厚いサウンドで、良く聴くと本当に色んな音が入っているし、ソロギターアレンジは相当しんどそうです。
PC8801版のほうはサントラ版より軽快なテンポで演奏されていてかなり雰囲気が違うのですが、サントラ版に比べると音数が少なくて採譜しやすいので、採譜やアレンジが難しい部分はPC8801版を参考にしました。
ギターアレンジに当たって、原曲キー(Cメジャー/Cマイナーキー)だとギターの音域に合っていなくてメロディーやコードの制約が多かったので、F♯メジャー/F♯マイナーキーに移調して演奏することにしました。
アレンジの方向性としては、いかにギター演奏として破綻させることなく、必要な音を出していくか?という事に注力しています。
演奏面では、テクニック的に演奏困難なほど難しい所は無いのですが、全体的にポジション移動が厳し目で、ポジション移動前後の音が出しにくく、かなり反復練習してから録画に臨みました。
DAIVAメインテーマ コード進行
※オリジナルのCメジャー/CマイナーキーをF♯メジャー/F♯マイナーキーに移調
イントロ
|F♯|E(onF♯)|F♯|E(onF♯)|
|F♯|E(onF♯)|F♯|E(onF♯)|
|F♯|E(onF♯)|F♯|E(onF♯)|
|F♯|E(onF♯)|D|
ブリッジ
|C♯7 F♯7 B7 E7|A7 D7 G7 C7|
Aメロ
|F♯m7|F♯m7|F♯m7|F♯m7|
|F♯m7|F♯m7|F♯m7|F♯m7|
|A|A|B7|B7|
|F♯m7|F♯m7|F♯m7|F♯m7|
Bメロ
|DM7|DM7|E|E|
|DM7|DM7|E|C♯7 F|
Cメロ
|F♯|F♯|F♯|F♯|
|B|B|A|A|
|G♯m7|G♯m7|A♯m7|A♯m7|
|D♯7(♭13)|D♯7(♭13)|
ブリッジ
|C♯7 F♯7 B7 E7|A7 D7 G7 C7|
Aメロ繰り返し
アウトロ
|G♯m F♯m Em Dm|Cm A♯m G♯m F♯m|
|Em|Em|F♯|
コード進行分析
イントロ
■F♯メジャー
|Ⅰ|♭Ⅶ|Ⅰ|♭Ⅶ|
|Ⅰ|♭Ⅶ|Ⅰ|♭Ⅶ|
|Ⅰ|♭Ⅶ|Ⅰ|♭Ⅶ|
|Ⅰ|♭Ⅶ|♭Ⅵ|
ブリッジ(5度サイクル)
|Ⅴ7 Ⅰ7 Ⅳ7 ♭Ⅶ7|
|♭Ⅲ7 ♭Ⅵ7 ♭Ⅱ7 ♭Ⅴ7|
Aメロ
■F♯マイナー
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
■C♯マイナー
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|
■F♯マイナー
|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|Ⅰm7|
Bメロ
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|
|♭ⅥM7|♭ⅥM7|♭Ⅶ7|Ⅴ7|
■F♯メジャー
|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|Ⅰ|
■Bメジャー
|Ⅰ|Ⅰ|♭ⅦM7|♭ⅦM7|
■F♯メジャー
|Ⅱm7|Ⅱm7|Ⅲm7|Ⅲm7|
|Ⅵ7|Ⅵ7|
ブリッジ(5度サイクル)
|Ⅴ7 Ⅰ7 Ⅳ7 ♭Ⅶ7|
|♭Ⅲ7 ♭Ⅵ7 ♭Ⅱ7 ♭Ⅴ7|
Aメロ繰り返し
アウトロ
|Ⅱm Ⅰm ♭Ⅶm ♭Ⅵm|
|♭Ⅴm Ⅲm Ⅱm Ⅰm|
|♭Ⅶm7※1|♭Ⅶm7|Ⅰ|
※1 ♭Ⅱ6の転回形?
転調込みの多彩な展開が秀逸【コード進行のポイント】
この曲は基本的にはメジャー/マイナー混合型のコード進行で、単体セクションで考えるとシンプルな5度進行と2度進行(順次進行)の組み合わせなのですが、セクションごとに転調していて、その繋ぎ目が巧妙に作られています。
移調後のF♯メジャー/F♯マイナーキーで解説いたします。
イントロのF♯→E(onF♯)は「Bメジャー/マイナーキーのⅤ→Ⅳ」と捉えることもできますが、メロディーも込みで考えると「F♯メジャー/マイナーキーのⅠ→♭Ⅶ」の感じが強いです。
イントロの最後に繋ぎコードのD(♭Ⅵ)が入って、そのままC♯からの5度進行ブリッジに突入。
Aメロは以下の2つの解釈が成立します。
- C♯マイナーキー(あるいはF♯ドリアンモード)のみ
- F♯マイナーキー→C♯マイナーキー(下属調転調)→F♯マイナーキー
ここは好みの問題で、どちらでも分かりやすい方で良いと思います。
Bメロ部分はイントロと同じキー(F♯メジャー/マイナー)、同じメロディーですが、コード付けが変化していて、DM7→E7(♭ⅥM7→♭Ⅶ7)で演奏しています。
Cメロは5小節目からのB→Aの所も解釈に悩むのですが、メロディーから判断すると、F♯メジャーキーのⅣ→♭Ⅲではなく、BメジャーキーのⅠ→♭Ⅶ、もしくはC♯マイナーキーの♭Ⅶ→♭Ⅵなんでは?と思います。
ここでは下属調のBメジャーキーへの転調とし、次のG♯m7からF♯メジャーキーに戻っている、という解釈にしました。
最後のエンディング部分ですが、G♯m(Ⅱm)から全音(ホールトーン)で下降して、最後にEm→F♯で終止させています。
ここのEmコードは、F♯メジャー/マイナーキーからみると♭Ⅶm7となり、F♯スパニッシュ(F♯フィリジアン)を示唆するような響きですよね。
♭Ⅶm7→Ⅰは、フラメンコだと良く出てくるケーデンスで、♭Ⅱ→Ⅰへの置き換えも可能なのですが、スパニッシュ調を考慮しない一般的な解釈だと、ここのEmコードはBマイナーキー(下属調)への一時的転調とする場合が多いかもしれません。
こんな感じで、複数の調性解釈が成り立つ解釈が成り立つ曲なので分析も難しかったです。
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