ゲーム音楽作曲家列伝は番外編が一巡したため、第2部として再びゲーム音楽の黎明期に遡って作曲家を紹介していますが、第3回は、前回の兼岡行男さんに続き、初期の任天堂で活躍された中塚章人さんをご紹介します。
初期の任天堂では、兼岡行男さん、田中宏和さん、近藤浩治さん、中塚章人さんが四天王的なサウンドスタッフでしたが、兼岡さん、田中さん、近藤さんのお三方は既に紹介済ですのでそれぞれの紹介記事をご覧ください。
中塚章人さん プロフィール・略歴
本名:中塚章人(なかつか あきと)
生年月日:1976年11月10日
作曲家デビュー:1984年10月(デビルワールド)
代表作品:アイスクライマー、リンクの冒険
中塚章人さんは1984年から現在に至るまで任天堂に所属(開発第二部→企画開発本部)しているサウンドクリエイターです。
近藤浩治さんとは同期入社で、デビュー作のデビルワールドは近藤さんと共作しています。
1984年から1987年頃に近藤浩治さん、田中宏和さんと分担して主にファミコン作品の作曲を担当しましたが、それ以降はサウンドディレクションやサポートに回ることが多く、あまり名前が表に出ることはありませんでした。
ですが、2001年に発売された「ゲームボーイアドバンスが楽器になる」というコンセプトの音楽ソフト『ゲームボーイミュージック』(GBA)と、その続編である『大合奏!バンドブラザーズ』(2004年、GBA)のサウンドを担当するなど、音楽・サウンドに対する思い入れは並々ならぬものを感じます。
個人的には、子供時代に遊んだアイスクライマーやエキサイトバイク、そして代表作であるリンクの冒険が印象深いです。
アイスクライマー
中塚章人さんの代表作はアイスクライマーとリンクの冒険だと思うのですが、このうちアイスクライマー(1985年1月)は初めてジャズアレンジを導入したゲーム音楽の候補の一つです。
このあたり、マッピー(1983年5月、ナムコ)やエレベーターアクション(1983年7月、タイトー)をジャズアレンジと捉えるなら、「初」ではないのですが、ウォーキングベース+4ビート、ビバップ的なフレーズなど、モダンジャズのフォーマットを基準とするなら、アイスクライマーに収録されているタイトル曲及びボーナスステージ・ステージクリアのテーマが最初なのではないでしょうか。
当時もノリが良くて凄く好きな音楽でしたが、今聴いてもカッコイイですよね。
リンクの冒険
もう一つの代表作であるリンクの冒険は、アイスクライマーやデビルワールドとは作風が全く異なるのですが、きっちりゼルダの伝説シリーズの世界観に合わせていて、クラシック+民族音楽(フォルクローレとかヨーロッパ系民謡とか)な雰囲気で、曲のクオリティーも素晴らしかったですよね。
自分はタイトル曲と神殿のテーマが好きです。
――これら代表作の楽曲を聴くかぎり、かなりの作曲センスと思うのですが、その後1988年頃から任天堂も若手の所属作曲家が増えてきて、中塚さんは管理やサポートに回ったようです。
自分個人的には中塚さんが作ったゲーム音楽をもっと沢山聴きたかったですが、近藤さんなども1990年代からは管理・サポート役に回っているし、締め切りの厳しいゲーム音楽を一線で作り続けるのはとても難しいことなのでしょうね。
中塚章人さん作曲作品
1984年
デビルワールド(FC、近藤浩治と共作)
クルクルランド(FC)
エキサイトバイク(FC)
1985年
アイスクライマー(AC/FC)
1987年
リンクの冒険(FCD)
ゴルフ JAPANコース/USコース(FCD)
マイクタイソン・パンチアウト!!(FC、山本健誌、兼岡行男と共作)
1991年
マリオオープンゴルフ(FC)
1995年
BS-X -それは名前を盗まれた街の物語-(SFCサテラビュー、BS-Xカートリッジ同梱、尾崎裕ーと共同)
BSゼルダの伝説(SFCサテラビュー、尾崎裕一共作)
1997年
平成 新・鬼ヶ島(SFC、尾崎裕一と共同)
すってはっくん(SFCサテラビュー)
2001年
ゲームボーイミュージック(GBA)
2004年
ゼルダの伝説 4つの剣+(GC、近藤浩治、永田権太らと共作、ナビトラッカーズのみ参加)
大合奏!バンドブラザーズ(DS、濱野美奈子、田島賢と共作)
2005年
脳を鍛える大人のDSトレーニング(DS、濱野美奈子と共作)
※略号
FC=ファミリーコンピュータ
FCD=ファミコンディスクシステム
SFC=スーパーファミコン
DS=ニンテンドーDS
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