川井憲次【ゲーム音楽作曲家列伝番外編09】

ゲーム音楽作曲家列伝では、ゲーム音楽がメインの日本人作曲家の紹介をしてきましたが、「番外編」として、ゲーム音楽がメインではない作曲家や外国人作曲家の紹介もしていきます。

番外編の第9回は、大ベテラン劇伴作曲家の川井憲次さんです。アニメでは機動警察パトレイバー・攻殻機動隊などの押井守監督作品、映画ではリングシリーズなどの中田秀夫監督作品が有名ですよね。

川井さんはアニメ・映画・TV番組などで圧倒的な作品数を手掛けていますが、それらと平行してゲーム音楽の仕事もされてきました。

アニメ・ゲームを並列的に手掛ける作曲家の扱い

今回ご紹介する川井憲次さんの他、田中公平さん、上松範康さん、そしてMONACA勢の岡部啓一さん・神前暁さん・田中秀和さんなど、アニメとゲームを並列的に手掛ける作曲家は多いのですが、「ゲーム音楽作曲家列伝で紹介するとしたら、本編に入れるか番外編で扱うか?」というのが悩ましいところです。

今、名前を挙げた作曲家だと、川井さん・田中公平さん・上松さん・神前さん・田中秀和さんについては、世間一般に「ゲーム音楽作曲家」ではなく「アニソン作曲家」として認知されている印象が強いので番外編で扱うことにしました。

MONACA創設者の岡部さんについては、ナムコ出身ということもありますが、「ニーア」シリーズの音楽で高い評価を受けていたりして、ゲーム音楽の比重が高いように思うので本編で扱う事としました。

川井憲次さんプロフィール・略歴

本名:川井憲次(かわい けんじ)
通称:かーいさん
生年月日:1957年4月23日
ゲーム音楽作曲家デビュー:1989年12月(新・里見八犬伝 光と闇の戦い)※諸説ありますが、詳しくは本文を参照してください
代表作品:サンサーラナーガ1,2

川井憲次さんは、他の多くの職業作曲家と異なり、クラシック系の英才教育を受けたわけではなく、高校生の時にエレキギターを始めたのが本格的に音楽に関わった最初の体験だったといいます。

大学では音楽クラブに所属したものの中退。その後、音楽の専門学校に通いますが、これも半年で退学しています。

音楽学校を退学した後は、独学で音楽を学びながらギタリスト活動とバンド活動を続けますが、次第に自宅録音による作品制作のほうに興味が移り、仕事も劇伴など作曲の仕事が増えていきました。

1986年に『精霊のささやき』(植岡喜晴監督、1987年公開)、『紅い眼鏡』(押井守監督、1987年公開)という2本の映画を手掛けたのをきっかけに、TVや映画のメジャー作品に起用されるようになりました。

その後の川井さんの活躍は、ここでは語り尽くせないほどの物量となりますが、自分が知っているようなメジャーな作品だけでも、以下のようなものがあります。

アニメ作品
めぞん一刻、らんま1/2、機動警察パトレイバーシリーズ、攻殻機動隊シリーズ(劇場版)、スカイ・クロラ、東のエデン(アニメ版)、精霊の守人(アニメ版)、あぁっ女神さまっ(劇場版)、デビルマン(OVA版)、機動戦士ガンダム00、地球防衛企業ダイガード、ひぐらしのなく頃にシリーズ、刀剣乱舞シリーズ

TV番組
NHKスペシャル(2008年より10本担当)、科捜研の女シリーズ、ウルトラマンネクサス、ウルトラマンゼロ、ウルトラマンジード、仮面ライダービルド、非公認戦隊アキバレンジャー、2012年NHK紅白歌合戦OPテーマ、花燃ゆ(NHK大河ドラマ)、梅ちゃん先生(NHK連続TV小説)、まんぷく(NHK連続TV小説)、古舘トーキングヒストリーシリーズ

映画
リング、リング2、カオス、アヴァロン、仄暗い水の底から、輪廻、デスノート前編、おろち、さまよう刃、劇場版ウルトラマンシリーズ、劇場版仮面ライダーシリーズ、GANTZ、ワイルド7、クロユリ団地、ブラッディマロリー(フランス映画)、美しき野獣(韓国映画)南極日誌(韓国映画)、墨攻(中香合作映画)、イップ・マンシリーズ(香港映画)

CM
カラムーチョ、すっぱムーチョ、トヨタ「MARK X」、月桂冠「つき」

――これでも極一部なのですが、作品数から考えて1日に何曲も作るスタイルでないとこなせない数だし、クラシック系の音楽教育を受けずに、職業作曲家としてここまでの実績を残すというのは驚異的な事だと思います。

川井憲次さんが作るゲーム音楽

TV・映画を中心に活躍される川井憲次さんですが、そのキャリアの初期の頃からゲーム作品の音楽も作っていますので、今回は川井さんが作るゲーム音楽について書こうと思います。

川井さんのゲーム音楽デビュー作品について

川井さんのゲーム音楽作曲家デビューですが、今一つハッキリしません。

ネットの情報によると、『めぞん一刻』(マイクロキャビン)を手掛けているという情報があり、最初に出たMSX2版を手掛けているなら、川井さんのゲーム音楽作曲家デビューは1986年7月ということになります。

しかし、これは川井さんが担当したTVアニメ版『めぞん一刻』の音楽がゲームにも流用されただけ、という可能性が高いし、これをゲーム音楽デビュー作品とするには、ちょっと情報が足りません。

また、Wikipediaには『CAPTAIN POWER AND THE SOLDIERS OF THE FUTURE』の記載がありますが、これはアメリカのTVドラマ(1987年放送、音楽はゲイリー・グットマン)をゲーム化したもので、アメリカで1988年にDOS(Windowsの前身)向けに発売された洋ゲーです。

これについて調べたところ、アニメビデオ版キャプテンパワーの音楽を川井さんが担当し、それがゲームにも流用された、という事のようです(海外サイトにそれらしい情報がありました)。

「ゲーム作品のために新規に作曲した」という基準で考えると、現状で確実なのは、1989年12月発売の『新・里見八犬伝 光と闇の戦い』だと思われます。

サンサーラナーガシリーズの音楽

川井さんが手掛けたゲーム音楽で最も有名なのは、サンサーラナーガ1(1990年、ファミコン)とサンサーラナーガ2(1994年、スーパーファミコン)の音楽だと思います。

サンサーラナーガ1,2は音楽を含めて独特の世界観があり、コアなファンが多い作品ですよね。

ちなみに、サンサーラナーガシリーズは押井守氏がディレクターを務めた関係で担当することになったようです。

「押井守と川井憲次というアニメ映画最強タッグがゲーム作品を作るとこうなる」といったところなのですが、シナリオも演出も音楽も素晴らしいものでした。

今回の記事を執筆するにあたり、改めてサンサーラナーガ1,2の音楽を聴いてみたのですが、しっかり「ゲーム音楽している」感じで、やはり劇伴でならしているだけあって、TPOに応じたものを作るものだと感心しました。

内容的には、全体にクラシック色は薄めで、ポピュラー系の曲作り(シンセ+打ち込みで制作)かな?と思います。

ベースラインやコード進行がハッキリしている曲が多いですが、曲調はどちらかというとゆったりした癒し系が多いような。メロディーが良いので、ずっと聴いていられますよね。

サンサーラナーガ1,2の音楽はそんな感じなのですが、例えば『三国志Online』や『信長の野望Online』ではオーケストラっぽいアレンジの勇壮な曲が多いし、ゲーム音楽作曲家としても相当に幅広い引き出しがあるのを感じます。

川井憲次さんのゲーム音楽作曲作品

1986年

めぞん一刻(PC、マイクロキャビン、アニメ版から流用?)

1987年

CAPTAIN POWER AND THE SOLDIERS OF THE FUTURE(PC、Box Office、アニメ版から流用?)

1989年

新・里見八犬伝 光と闇の戦い(FC、マイクロニクス)

1990年

ブラッディ・ウァリアーズ シャンゴーの逆襲(FC、東映動画)

サンサーラナーガ(FC、ビクター、笠井治・原田昌亮・なかやましんじと共作)

1992年

PCE版ソーサリアン(PCE、ファルコム、追加曲)

1994年

サンサーラナーガ2(SFC、ビクター)

チームイノセント(PCFX、ハドソン)

1998年

DEEP FEAR(SS、システムサコム)

2003年

信長の野望 Online(PS2/PC、コーエーテクモ)

2007年

FolksSoul 失われた伝承(PS3、ゲームリパブリック、一部)

2008年

三國志 Online(PS2/PC、コーエーテクモ)

2014年

アルノサージュ~生まれいずる星へ祈る詩~(PS3、ガスト、ボーカルアルバムへ2曲提供)

2017年

マグナとふしぎの少女(PS3/PSV、ガスト、2曲提供)

2019年

永遠の七日(iOS/Android、DeNA)

2021年

シドニアの騎士 掌位ノ絆(Android、WFS)

エゴエフェクト:フラクタス(iOS/Android、NetEase Games)

※略号
AC=アーケードゲーム
FC=ファミリーコンピュータ
PCE=PCエンジン
SFC=スーパーファミコン
SS=セガサターン
PS=プレイステーション
PS2=プレイステーション2
PS3=プレイステーション3
PC=パソコン

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