「ゲーム音楽を弾こう!」は今回で最終回となります。
前回までアレンジを作るということを重点的に解説してきましたが、今回は「演奏する」ということをテーマに、自分のソロギター演奏スタイルを解析してみます。
前半は全体的な話、後半は技術的な話になりますが、皆さんのギタープレイの参考になれば幸いです。
ソロギターもいろんなスタイルがある
ソロギターと一言で言っても、いろいろなスタイルがあると思います。
- クラシックギター
- ジャズギター
- フォークギター
- ボサノバ・ブラジリアン
- カントリー・ブルーグラス
- 押尾コータローさんのような新機軸
南澤大介さんのようなオールマイティーなスタイルの人もいます。
ここでは主に自分のやり方と、ソロギターに対する考え方を中心に解説していきます。というか、それしかできないんですけどね(笑)
自分のソロギタースタイル
自分の専門はフラメンコギターです。
それ以前にロックとジャズの経験があり、音楽理論も一通りやっているので、フラメンコギタリストとしては、かなり一般音楽寄りのスタンスだと思います。
ソロギターに関しては、かなり以前から自宅でやる趣味として、いろいろな曲を耳コピーして弾いていましたが、本格的に取り組み始めたのはここ数年のことです。
このブログでは、ゲーム音楽を題材にした音楽の勉強と、自分なりのソロギターの可能性を探っていく、という趣旨でやっています。
アレンジはやりながら考える
自分の場合、アレンジも演奏もあまり譜面を使わないし、譜面で緻密に作ってアレンジ完成!という感じではありません。
まず、一通り演奏可能な叩き台を作っておいて、それを何回も弾くうちに浮かんだアイデアを盛り込んでいく、という感じで進めることが多いです。
ゲーム音楽演奏に関しては、現状では1、2週間くらいで仕上がる範囲で練習とアレンジをして、録画してYouTubeにアップをしています。
1、2週間といっても、平日はほとんど出来ないので、実質は数日間でアレンジ・練習・リズムトラック制作・記事制作をして、なんとか1曲仕上げている感じです。
そういう事情もあって、スピーディに仕上がる方法というのを自分なりに考えています。
自分のソロギタースタイルの課題など
自分の場合、フラメンコギターの技術と理論知識の組み合わせをアレンジ制作のベースにしていますが、何点か悩むポイントがあります。
特殊奏法について
フラメンコギターはラスゲアードやアルサプーアなど特殊奏法やピカードによる速弾きのイメージが強いと思いますが、これが実は両刃の剣なんです。
特殊奏法を多用すると確かに手軽にフラメンコ色を出せますが、それら特殊奏法はフラメンコ独自のリズムや語法と強力に結びついていて、他の語法の音楽に入れても、とってつけた感というか、うるさくなるだけで、トータルの音楽バランスを考えたらやらないほうが良いんじゃ?と感じることが多々あります。
今後さらに研究してもっと上手く入れられるようになれば、特殊奏法使用を増やしたい気持ちはありますが。
ボサノバ的な弾き方も多用
では、フラメンコ奏法を入れない部分をどうやって埋めていくかというと、現状はボサノバ的な弾きかたで繋いでいく部分が多いと思います。
基本、親指ベース+amiの3指でコードとメロディーとアルペジオというスタイルですね。
派手さはないんですが、複雑なリズムも出せるし、メロディ・ベース・コードがバランスよくブレンド出来るのでそこに落ち着いています。
ベースラインについて
自分のアレンジの基本的方向性としてソロギターとして聴いたときのトータル音楽バランスを考えて、なるべくベースラインは維持したい、という考えがあります。
アンサンブルの場合は、専任のベーシストがいる状態でギターの低音のラインをあまり出してしまうと、ベースとぶつかって濁ることが多いのであまりやらないんですが、ソロギターの場合、コード感のキープと音域バランスを考えると、ベースラインの維持ってかなり大事かな、と考えています。
コード進行で複雑なことをやっても、ベースでルートが出てないとちゃんと伝わらなかったりしますので。
リズムトラックの使用について
リズムトラックを使うか?は、初期のころ悩んだ問題です。
リズムトラック込みのアレンジだと厳密にはソロギターではないわけだし、ソロギターと銘打った以上は完全ソロにこだわるべきでは?というようなことで悩みました。
初期の頃の経験
ブログ開始当初、第1弾動画のダライアス「Captain Neo」をスマホのみの完全ソロギターで録画してみたんですが、思ってたイメージとかけ離れていました。
「うわっ、ナニコレ、ショボい」ってなりました。
ちなみに第2弾のドラクエ3「おおぞらをとぶ」もスマホのみで録画でしたが、そちらはそのままでもそこそこ聴けたので、そのままアップしました。
そういうわけでダライアス「Captain Neo」のほうは、いろんなバージョンを撮ってみたんですが、リズムトラックを入れることでかなり補完できてイメージに近づけることが出来た、ということがあったので、曲によってリズムトラックを使用していこうという方針にしました。
フラメンコのパルマ(手拍子)のような感覚
もともとフラメンコギターの演奏でもリズムがタイトな演奏だとパルマ(手拍子)が常に入ってたりするので、リズムトラックに合わせて演奏するのは、それと同じような感覚です。
このあたりも演奏スタイルってことで「ソロギターじゃないだろ」とかの突っ込みは勘弁してください(笑)
リズムトラック使用の自分ルール
そんな経緯があり、動画演奏では必要に応じてリズムトラックは使うんですが、以下の取り決めをしてます。
- 使用音は音程の無い打楽器のみ
- 過度にリズムトラックアレンジに頼らない
リズムトラックアレンジをどんどん豪華にしてしまうと、ソロギターの意味合いが薄れてしまって「だったらエレキでメロだけ弾いたほうが良くね?」ということになってくるので、そこはギター1本での演奏でもちゃんと成立するように、っていうところは守りたいです。
ライブでやるにしても、カホン1台入れれば再現可能なものを想定しています。
あと、ただでさえ時間が足りないのでリズムトラック作成にそんなに時間かけたくない、という問題もあります。
もちろん、完全ソロのほうが良さそうな曲は完全ソロギターでやっていて、今のところ半々くらいのバランスですね。
自分のスタイルまとめ
今後の研究で変わってくるとは思いますが、現在の自分のソロギター演奏スタイルをまとめるとこんな感じですね。
- 右手は親指でベース維持+ima3指でメロディとコードを弾くのが基本
- たまにフラメンコっぽく親指だけでメロディを弾く
- ラスゲアード含めたストロークによるリズム奏法で間をとったりする
- フラメンコ奏法は効果的であれば積極的に使う
- たまにトレモロなんかのクラシック系奏法もやる
- 理論面からはジャズ理論も応用する
- 1曲につき数日で仕上がるように取り組む
- リズムトラックは曲によって使う。ただし打楽器のみで過度なアレンジをしない
自分のベースはフラメンコ奏法
ここからは、主に奏法的・演奏テクニック的な事についてお話します。
結局のところ、最終的に出来上がってくるアレンジは個人個人の演奏テクニックに大きく依存することになるんですが、自分の場合はフラメンコ奏法がベースとなっているため、今回はそれに言及しておこうと思います。
個別曲のアレンジ解説でもギター奏法の用語は頻繁に出てくるので、フラメンコ奏法を中心に、自分がソロギターでよく使う奏法の解説をしておきたいと思います。
なお、フラメンコギター奏法については、本名でやっているフラメンコギターブログの「Webで学ぶフラメンコギター」で本格的に解説していますので、興味あるかたは読んでみて下さい。
文中に出てくるp、a、m、iという表記ですが、以下の通りです。
p=右手親指
a=右手薬指
m=右手中指
i=右手人差指
アルペジオ奏法
アルペジオは分散和音です。コードを1音ずつバラバラに弾きます。
基本はアルライレのタッチで、親指でベースをとりながらimaの3指を組み合わせて弾きます。
あと、これはフラメンコ独特の弾き方ですが、強い音を出したいときはアポヤンドでアルペジオすることもあります。
アルペジオはリズムにのせて符割りをきっちり弾くものと、修飾音的にとにかく速く詰め込んで弾くものがあって、音の出し方や最適なフォームが少し違います。
アルペジオで伴奏をつけながらトップノートでメロディーを出すのは王道的な手法です。
トレモロ奏法
pで伴奏をつけながら、amiで弦を連打してロングトーンのメロディーを表現する奏法で「アルハンブラの思い出」が代表的ですね。
クラシックとフラメンコで弾きかたが少し違います。
- クラシック式はpamiで4連符
- フラメンコ式はpiamiで5連符
自分はテンポによって使い分けます。
サスティンの短いアコースティックギターでロングトーン主体の曲を弾くとき、かなり有効なテクニックです。
トレモロも修飾音符に使うことがあって、その場合はamiをアポヤンドで弾くとフラメンコっぽくなります。
音階奏法
基本はmiの相互弾弦でスケールを弾きます。
タッチはアルライレとアポヤンドを欲しい音質に応じて使い分けます。
フラメンコギターで「ピカード」と呼ばれる鋭い音の速弾きがありますが、ブリッジ寄りでアポヤンドのタッチで弾きます。
ピカードは習得が難しいテクニックの一つですが、フォームとタッチの安定、あとは爪の削り方が大きなポイントです。
普通にメロディーを弾くのにも音階奏法は使いますが、修飾的に速い音階を付加したりすると強いスパイスになります。
親指奏法
クラシックギターとフラメンコギターで一番違うのは親指の使い方です。
フラメンコギターでは1弦まで親指1本で弾くことも多いし、親指奏法はかなり重要です。
また、「アルサプア」と呼ばれる親指のストローク奏法も特徴的です。
親指のダウン&アップストロークに、単音アポヤンド・ゴルペ奏法・ハンマリング・プリングを絡めてメカニカルなフレージングをします。
ラスゲアード奏法
フラメンコギターといえばこれのイメージでしょうか。弦をまとめてかき鳴らす特殊なカッティング奏法です。
フラメンコギターは踊りや歌への伴奏の場合、やっていることの8割以上はラスゲアードです。
大きく分けて2種類あります。
- 指をバラバラに使って鳴らす軽めのラスゲアード
ゴルペ奏法との組み合わせや、人差し指のアップストロークをうまくこなすのがポイント。 - アバニコ奏法に代表される腕全体を使うラスゲアード
主にima3本固めてのダウンストロークと親指のアップストロークが主役。
実際の演奏では、この2種類を混ぜて使います。
ソロギターアレンジでは、コードフォームの問題や音量バランスなどもあり、入れられるタイミングは限られてきます。
ゴルペ奏法
右手の爪や指の腹でボディを叩く奏法です。
ラスゲアードやアルサプア・親指単音弾きなどと組み合わせされます。用途で数種類あります。
ボサノバ的な爪弾き
ソロギターでメロディーとベースをバランスよく弾くのに適しているので、自分はこの弾き方で通常メロディー部分を演奏することが多いです。
親指でベースをとりながらimaの3指でメロディーとコードを入れていきます。
アルペジオやリズムプレイも絡めやすく、大変使い勝手のいい奏法と思います。
自分のスタイルだとフラメンコ奏法とちょうどよく補完しあう感じなので重視な奏法になっています。
その他の奏法
この他にも様々なギター奏法があります。
自分もタッピングやスラップ・スラム奏法を一時練習していて、ソロギターにも入れたいなぁ、とは思ってたりもします。
でも、そのあたりの叩き系は他に凄く上手い人がたくさんいるし、まずは自分の専門であるフラメンコ奏法を上手く入れるアレンジを研究しないとなー、というところです。
あとがき
今まで7か月に渡ってお付き合いいただき、ありがとうございました。
ソロギターをやりたい人はもちろん、ギター以外の楽器をやってたり、DTMでゲーム音楽アレンジみたいなものを作ってみたい、という人の役に立てば嬉しいです!
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