ティム・フォリン(Timothy J. Follin)【ゲーム音楽作曲家列伝番外編02】

前回からゲーム音楽作曲家列伝「番外編」としてゲーム音楽がメインではない作曲家や外国人作曲家を紹介しています。

外国人作曲家については、手掛けた作品が日本未発売のものが多く、内容的にマニアックになりすぎるかも知れないので、主要な作曲家に絞って番外編で紹介することにしました。

今回はこのブログでは初の外国人作曲家紹介で、ソルスティスやシルバーサーファーなどで有名なティム・フォリン(Tim Follin)さん。

凄まじいまでの音源プログラム技術と高度な音楽性をもった才人です。

ティム・フォリンさん プロフィール・略歴

本名:Timothy J. Follin
生年月日:1970年12月19日
出身地:イギリス セントヘレンズ
作曲家デビュー:1985年12月(Subterranean Stryker)
代表作品:ソルスティス、シルバーサーファー

ティム・フォリンさんは主に1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍したイギリスのゲーム音楽作曲家で、現在は総合メディアクリエイターとして活動しています。

彼が音楽を手掛けたゲーム作品は日本未発売のものが多い上に、いわゆるクソゲー(失礼)が多く、商業的成功に恵まれなかったため、日本ではあまり知られていません。

ですが、彼の特異な音源プログラム能力と作曲能力は高く評価され、彼が手掛けた作品は音楽によって有名になる、という逆転現象が起きています。

ティムさんは音楽学校に1年通った以外は独学で音楽やプログラムを身につけていて、音楽学校卒業後、15歳の時に兄のマイク・フォリンさんがいた地元のゲーム会社(Insight Studio)に就職しました。

Insight Studio社ではZX-Spectrum(コモドール社が1982年に発売したホームコンピューター)向けゲームソフト開発を担当。1985年に兄がプログラムした『Subterranean Stryker』に音楽をつけたのがデビュー作となりました。

ティムさんはZX-Spectrumの音源プログラムで天才的な手腕を発揮し、Beep音とノイズしか出ない初代ZX-Spectrumで擬似的に6和音の調性音楽を演奏させるという離れ業をやっています。

1987年にSoftware Creationsに移籍してZX-Spectrum版のバブルボブル(タイトー)を担当。これがヒットしたのがきっかけとなって、ZX-Spectrumだけでなく、NES(海外版ファミコン)やコモドール64、Amiga、SNES(海外版スーパーファミコン)などの様々な機種のゲームタイトルの音楽を担当するようになりました。

ちなみに、Software Creationsには、もう一人の兄でありゲーム音楽コンポーザーのジェフ・フォリン(Geoff Follin)さんも在籍し、兄弟での共作も多かったようです。

Software Creations時代の代表作品として、ソルスティス(日本でもファミコン版が発売された)、シルバーサーファー(日本未発売)があります。

Software Creations退社後はMalibu Interactive社を経てフリーランスとなりました。

2001年にはエコー・ザ・ドルフィン(セガ)に曲提供しましたが、2005年に公式サイトでゲーム業界からの引退を表明。

その後、2012年に『Contradiction:Spot the Liar !』の企画を発表(発売は2014年)し、ゲームクリエイター・作曲家として現場復帰を果たしています。

ティム・フォリンさんの音楽

ティム・フォリンさんは兄のジェフ・フォリンさんとの共作がかなりの割合を占めるので、ここではフォリン兄弟共作の音楽も含めてお話します。

フォリン兄弟が作ったゲーム音楽は、時代背景と音源の制約を考えると、全曲が凄まじいまでの完成度だと思います。

どんなにマイナーな作品だろうと、ゲーム内容がクソゲーだろうと、一切の妥協を廃して作り込む姿勢でやっているのがうかがえるし、結果として、音楽だけが突出した作品を量産する事となりました。

とくに、ZX-Spectrumとファミコン(拡張音源無し)での音作りは神業と言えます。

音楽性としては1960年代から1980年代のブリティッシュロックやプログレッシブロックをベースにしつつ、テクノの要素も混ざる感じで、音作りとアレンジの巧みさによるドライブ感が特徴です。

日本でも発売されたソルスティスのオープニング曲はファミコン音源とは思えない音質を実現している上に、長さが3分もあり、バグパイプ的な民族音楽要素も入れていたりして、アレンジ面でも並々ならぬこだわりが感じられます。

自分はフォリン兄弟の音楽をリアルタイムでは経験しておらず、最近になってインターネットの情報から知ったのですが、あれをリアルタイムで聴いていたら衝撃凄かったでしょうね……。

ティム・フォリンさん作曲作品

1985年

Subterranean Stryker(PC、Insight Software、日本未発売)

1986年

The Sentinel(PC、Firebird、日本未発売)

1988年

Psycho Pigs UXB(PC、NMK/U.S. Gold、Geoff Follinと共作、『ぶたさん』のリメイク)

Bionic Commando(PC、カプコン/Software Creations、『トップシークレット』のリメイク)

1989年

QIX(PC、タイトー/Alien Technology、1981年のアーケードゲームのリメイク)

大魔界村 Amiga版(PC、U.S.Gold/カプコン、リメイク版)

大魔界村 コモドール64版(PC、U.S.Gold/カプコン、リメイク版)

1990年

ソルスティス 三次元迷宮の狂獣(FC、Software Creations)

シルバーサーファー Silver Surfer(NES、Software Creations、Geoff Follinと共作、日本未発売)

Pictionary(NES、Software Creations、日本未発売)

Target:Renegade NES版(NES、Software Creations、日本未発売)

1991年

Kiwi Kraze(NES、タイトー、Geoff Follinと共作、ニュージーランドストーリーのリメイク)

インディジョーンズ 最後の聖戦 NES版(NES、タイトー/Software Creations、日本未発売)

ガントレット3:The Final Quest(PC、アタリ、ジェフ・フォリンと共作、日本未発売)

Treasure Master(NES、Software Creations、日本未発売)

1992年

Spider-Man and the X-Men in Arcade’s Revenge(SNES、Software Creations、Geoff Follinと共作、日本未発売)

スーパーオフロード(SFC、Tradewest/ Software Creations、Geoff Follinと共作)

1993年

PLOK!(SFC、Software Creations、Geoff Follinと共作)

ソルスティス2(SFC、Software Creations、Geoff Follinと共作)

ロックンロールレーシング(SFC、Blizzard、Geoff Follinと共作)

1994年

Ken Griffey,Jr. Presents Major League Baseball(SNES、Software Creations、一部、日本未発売)

Ultraverse Prime(MCD、Malibu Interactive、Geoff Follinと共作、日本未発売)

1995年

バットマン フォーエヴァー(SFC、Probe Entertainment、Geoff Follinと共作)

2000年

パズルボブル ゲームボーイカラー版(GBC、タイトー、ANDY BROCKと共作)

パズルボブルミレニアム(GBC、タイトー、ANDY BROCKと共作)

2001年

エコー・ザ・ドルフィン ドリームキャスト版(DC、セガ、Attila Hegerと共作)

2003年

Starsky&Hutch(Xbox/PS2/GBA/PC、Mind’s Eye Productions、Dave Sallivanと共作、日本未発売)

2006年

レミングス リメイク版(PS2/PSP、DMA Design)

2015年

Contradiction:Spot the Liar!(iOS/PC、自主製作)

※略号
FC=ファミリーコンピュータ
NES=海外版ファミリーコンピュータ
MCD=メガCD
SFC=スーパーファミコン
SNES=海外版スーパーファミコン
DC=ドリームキャスト
GBC=ゲームボーイカラー
GBA=ゲームボーイアドバンス
PS2=プレイステーション2
PSP=プレイステーションポータブル
PC=パソコン

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