第一次黄金期・前編(1986年)【ゲーム音楽史04】

ゲーム音楽史では前回までで、FM音源の登場とナムコ一強時代の終わりまでの事をお話しました。

今回からは、ゲーム音楽の「第一次黄金期」を数回に分けて書いていこうと思います。

第一次黄金期とは?

この第一次黄金期というのは自分が勝手に考えたものですが、1985年秋頃から1989年頃までを指しています。

この期間、アーケード・PC・コンシューマーの全てのゲーム音楽が一斉に発展して、作品数・音楽のクオリティーが飛躍しました。

ゲーム音楽におけるカンブリア紀のような感じですね。

ここからは作品数・曲数も膨大になってくるので、特に重要な、または印象深いことに絞って書いていこうと思います。

今回は、前編として1986年のことをまとめますが、なるべく時系列順に書いていきます。

ファミコン・ディスクシステム

1986年2月に任天堂からファミコン用のディスクシステムが発売されます。

ファミコンのディスクシステムは、PCで主流だったフロッピーディスクではなく、クイックディスクと呼ばれるものでした。

簡単に言うと円盤状のカセットテープみたいなものですが、読み込み速度はカセットテープより段違いに速く、ゲームの読み込みは10秒かかりませんでした。

また、ディスクシステムの基板には独自の波形メモリ音源が搭載されていたことは、ゼルダの伝説メインテーマの記事で述べたとおりです。

わざわざディスクシステムに拡張音源を搭載したことからもわかるように、任天堂もゲーム音楽に本腰を入れてきました。

ゼルダの伝説

ゼルダの伝説は、ディスクシステムと同時に発売された第1弾タイトルです。

これのオープニングデモの音楽を聴いたときは衝撃でした。最初、FM音源かと思ったくらいです。

自分としては、この作品で任天堂のゲーム音楽の印象は全く違うものになりました。

進撃のセガ

次はアーケードゲームです。

1985年11月にスペースハリアーを出してその音楽が高い評価を受けたセガですが、セガの進撃は止まりません。

3月 ファンタジーゾーン
スペハリに続くセガのシューティングですが、音楽には驚きました。全般にラテン・ブラジル調の音楽ですが、主旋律はシンセっぽかったり、スラップベースの音色で細かいオブリが入ったりとか、独特の音作りでした。

4月 カルテット
カルテットの音楽はポップなシンセロックという感じですが、自分は当時、ハードロックも聴きはじめていて、これのメインテーマは、ヴァン・ヘイレンの「Jump」ぽいなぁ、とか思ってました。とくにギターソロの後のキーボードソロのところ。

9月 アウトラン
ゲームスタート時に3曲の中からBGMを選曲しますが、それが当時としては非常に凝ったものでした。曲としてはラテン・フュージョンで、ファンタジーゾーンより独自要素が減ってフュージョン色が強くなっています。

こんな具合で、ゲーム音楽の名作と言われるタイトルを連発します。1986年のアーケード界は「セガの年」でした。

ナムコとコナミのFM音源化

4月にスカイキッドDXでナムコが、7月に沙羅曼蛇でコナミが(これはもしかしたら違うかもしれません)FM音源採用タイトルを投入してきました。

――ここへきてようやくですが、アーケードゲームの二大巨頭がFM音源を採用してきたわけです。役者がそろったという感じですよね。

ゲーム音楽的に言うと、この時点でセガ・ナムコ・コナミ・タイトーの実力はほぼ互角と思います。その中で1986年はセガが特に頑張った、という印象かと。

ちなみにコナミは、このあたりからファミコン・MSXに注力しはじめています。

1986年のアーケードゲーム音楽お薦めタイトル

今挙げた他に、1986年のアーケードゲームで自分が音楽が良いと思うお薦めタイトルを書いてみます。

ダーウィン4078(データイースト)
音色の作り込みやアレンジが粗い気がしますが、メインテーマは良曲です。

イシターの復活
(ナムコ)
メインBGMはジョン・ウィリアムズっぽいような。ローパーのテーマは名曲ですが何かに似てる……これがずっと思い出せなくて気になってます。

源平討魔伝
(ナムコ)
ナムコの和風タイトル。音楽は和楽器+メタルという感じで、ディストーションギター風の音色が効いていて、当時ハードロック・ヘヴィメタル系の音楽に傾倒しはじめていたBGMは一発で気に入りました。「地獄の沙汰も金次第」「色即是空」そして、弁慶のヤラレ台詞「これで勝ったと思うなよー」などの名言を生んだ作品でもありました。

バブルボブル
(タイトー)
よく通る音色でゲーセン中に響き渡るので、強制的におぼえてしまいます。

奇々怪々
(タイトー)
OGR=小倉久佳さんの作曲。奇々怪々は和音階の民謡・童謡ぽい曲+和風アレンジですが、小倉さんの音楽のコミカルな面が出ていて、自分的には謎の中毒性音楽なんですよね。

ドラゴンクエストとすぎやまこういちさん

1986年5月、ファミコンで歴史的なタイトル、ドラゴンクエストが発売されます。

それまでファミコンでRPGは無理だと思われていましたが、数々の工夫により、驚くほどの完成度でした。鳥山明さんの絵も話題性抜群でした。

音楽のすぎやまこういちさんについては以下の記事で紹介していますが、今や知らない人はいない大作曲家です。

それまでも作曲家としてかなりのキャリアがありましたが、ドラクエの成功によって、すぎやまさんの才能が世界中に知れ渡ることになります。

ドラクエの自分の印象は、最初、画面の印象などからPC88の『夢幻の心臓2』のパクりじゃん?と思ってたんですが(というか、夢幻の心臓シリーズもウルティマのパクりかな)、ドラクエの素晴らしさはシナリオ、モンスターなどのキャラデザイン、そして音楽ですよね。

それまで「ファミコンでRPGなんて無理でしょ?」と思ってましたが、実際やってみるとその完成度は驚くべきものでした。

あれ、全部で64KBですよ?ちなみに、このブログのサムネイル画像1枚分の容量より小さいかも知れません。

すぎやまさんの音楽はゲーム音楽にありがちな中二っぽさは皆無で格調高いですよね。まあ、自分は中二ぽいのも大好きなんですが。

1986年のファミコンのゲーム音楽

1986年は上で紹介したゼルダの伝説、ドラゴンクエストの他にも、音楽が素晴らしいファミコンオリジナルのタイトルが多数発売されるようになってきました。その中で、とくに印象に残っているものを挙げてみます。

スターソルジャー(ハドソン)
これの音楽、転調が多かったりでかなり凝ってますよね。

がんばれゴエモン からくり道中(コナミ)
1980年代後半は和風要素をゲームに取り込むのがトレンドになっていて、世界観や音楽に和風要素が入ったものが急増しました。そうしたもののなかで、ゴエモンはゲームとしての完成度が飛び抜けていました。

悪魔城ドラキュラ(コナミ)
音楽は山下絹代さんと寺島里恵さんが担当。初代の1面BGM「Vampire Killer」はシリーズ通しての代表曲になっていて、何回もリメイクアレンジされています。悪魔城シリーズは音楽も全体にゴシックホラーの雰囲気ですが、軽快さもあって中毒性あります。

メトロイド(任天堂)
ファミコンゲームだと一番ハマったものの一つです。音楽は田中宏和さんで、幻想的なオープニング曲が素晴らしかったです。ゲーム中はあまりメロディーっぽい音楽はありませんが、知らない星で一人で危険な任務に挑む緊張感や、舞台の不気味さがよく出ていたと思います。

パルテナの鏡(任天堂)
任天堂の隠れた名作。音楽もこの時期の任天堂作品ベスト3に入ると思われ、とくにオープニング曲が素晴らしいです。これも音楽はメトロイドと同じく田中宏和さん。

PCのゲーム音楽の発展

1986年も半ばに入ると、PCのゲーム音楽もどんどん良いものが出てきます。

ファイナルゾーン(日本テレネット、5月)
正直シューティングゲームとしては微妙な出来でしたが、音楽は気に入っていました。ステージの合間にデモシーンが挟まって、それ用の曲が用意されていたり、当時のゲームとしては、そういう演出面が凝った作品でした。

レリクス(ボーステック、6月)
これのオープニングはクリスタルキング作曲の「Women」ですね。音色もシンセロックっぽくて良かったです。この曲をMMLで打ち込んで、メタル&プログレなカオスなアレンジにしたのは良い思い出です。

ザナドゥ・シナリオ2(日本ファルコム、10月)
古代祐三さんのデビュー作です。タイトル曲と9面の音楽だけロックっぽくて雰囲気違うので当時疑問に思ってたんですが、あの2曲が古代さん作品だったというわけです。

ロマンシア(日本ファルコム、10月)
上のザナドゥシナリオ2と同時期に発売されましたが、これのタイトル曲も恐らく古代さんが最初にファルコムに持ち込みしたものの1曲と思います。ゲームのほうは異常な難易度でしたよね。

以後、古代さんはPCゲーム音楽界の中心的人物となっていきます。

DAIVA(T&Eソフト、11月)
機種ごとに主人公やシナリオが異なり、異なる機種間で連携できる要素があったりしましたが、音楽には後にアクセスやTMレボリューションで活躍する浅倉大介氏を起用して機種別に異なるテーマ曲が用意されているほどの力の入りようでした。

シルフィード(ゲームアーツ、12月)
テグザーを出したゲームアーツが発売した擬似3Dシューティングゲーム。テグザーの音楽も良くおぼえてますが、シルフィードの音楽はそれを遥かに上回る素晴らしいもので、とくにエンベロープ(揺らぎ)の効いた主旋律とシャープなベースの音色が衝撃的でした。

夢幻戦士ヴァリス(日本テレネット、12月)
日本テレネットは後のウルフチームの母体になった会社で、ファイナルゾーンに続いてこの作品も良曲が多かったです。

――次回はゲーム音楽第一次黄金期の中編として1987年のことをお話しします。

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