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同時発音数の制約とゲーム音楽らしいアレンジ【ゲーム音楽論02】

前回はゲーム音楽論第一弾として、ゲーム音楽の形成に影響を与えた音楽というのを考えてみましたが、今回からもう少し具体的なことをみていきたいと思います。

ゲーム音楽史の時代区分でいうと、初代プレステ時代からゲーム音楽の構造が変わっていますが、今のメインテーマになっている『ゲーム音楽らしさ』が形成されたのは主にそれ以前のスーパーファミコン時代までの間と思います。

これは率直にいうと、同時発音数と音色の制約に対応するための工夫から産まれています。

初期のゲーム音楽の同時発音数

初期のナムコアーケードゲームは一音高速切り替えによる疑似三和音。
ファミコンやMSXなどはPSG三和音+ノイズ。
PC-8801mk2SRはFM3和音+SSG3和音の6和音。
スーパーファミコンはPCM8和音、という具合でちょっと複雑な表現をするには同時発音数が全く足りませんでした。

一般的なMTRなどの音楽制作では、コード楽器があれば1トラックで和音表現ができるので8トラックくらいでなんとかなっていたのですが、この時代のゲームの音源の場合、トライアドコードを鳴らすだけで3トラック消費してしまうので、コードや音の重なりがある楽器の表現は難しかったわけです。

こんな環境でしたので、コード感と奥行きを出すのに独自の作曲・アレンジ手法が発達してきます。

これが『ゲーム音楽らしさ』の第一の要素です。

ゲーム音楽のアレンジの特徴

では、アレンジ・構造的な面をみていきます。

コードアルペジオ

まずコードアルペジオの多用です。
単音でコード感を表現するために時間差でコード音を鳴らすわけです。
バッキングパートのみならず、主旋律にも多用されました。

コンピューターでのシーケンス演奏ということを逆手にとって、人間の手では演奏が難しいような高速で複雑なアルペジオやシーケンスパターンも多用され、結果的にこれが煌びやかでテクニカルな印象を加えることになります。

ベースライン

次にベースラインですが、ファミコン時代までの三和音時代はルート弾きでリズムもシンプルなものがほとんどでした。

1980年代はルート(コードの根音、CメジャーならC=ド)と5度(CメジャーならG=ソ)を交互に弾くいわゆる5度弾きも多用されてました。

ベースラインがシンプルだったのは、他のパートの構成が

  • リズム楽器→無しかノイズのみ(スネア的な使い方)
  • コード楽器→無し

という状態だったのでベースパートがルート音を小節や拍の頭で出してやらないと、コード感も小節感も弱くなってしまうんですよね。

ベースがベードラやハイハットなんかの役割も兼ねていたわけです。

少し時代が進んで6和音から8和音以上になってくると、ベースラインはかなり自由度が増してきてバリエーションも出てきますが、スーファミ時代あたりまでは8ビット時代からのゲーム音楽制作の流れで、ベースラインはシンプルなものが多かったです。

副旋律

次はクラシックがベースになったものをみていきます。
クラシックベースのものだとポピュラーベースのものに比べてリズムより旋律重視になります。

三和音時代では主旋律と副旋律、3和音フルに使える場合はこれにバスパートが加わります。
こういうかたちのアレンジでは副旋律が重要な役割を担っています。

副旋律は主旋律を支え、コード感も出しつつ、曲に立体感を与えていくという役割を一音でやるので副旋律の付け方で曲の出来がまるで違ってきます。
三和音時代の名曲といわれるものは、たいてい副旋律が良くできています。

手法的には一般的なコードに基づいた副旋律の付け方のほか、対位法的な手法で作ってあるものも多いです。

ただ、初期のゲーム音楽はしっかりとした音楽理論に基づいて作っている作家はまだ少なかったので、対位法云々は結果論という面もあります。
そういう意味では、すぎやまこういちさんなどは別格でした。

――以上が自分が考える初期のゲーム音楽のアレンジ・構造的特徴ですが、次回はさらにもう一歩踏み込んでみようと思います。

ゲーム音楽論 前回

ゲーム音楽の定義・ゲーム音楽に影響を与えた音楽【ゲーム音楽論01】
新連載『ゲーム音楽論』第1回です。今回は、そもそもゲーム音楽とは?ゲーム音楽のルーツは?という事からお話ししていきます。

ゲーム音楽論 次回

初期ゲーム音楽の開発環境【ゲーム音楽論03】
ゲーム音楽論 第3回は前回の続きで、メモリー容量・人的リソースなど初期のゲーム開発環境の厳しい制約と、作曲・アレンジへの影響を掘り下げています。

コメント

  1. PPP より:

    ファミコン時代のベースラインがシンプルだったのはこうでもしないと、メモリに入りきらないという苦肉の策でした。
    この時代はアーケードですら、メモリが少なくて苦労することがあり、あの有名なアウトランも当初はLAST WAVEが入らず、他の曲を最適化してどうにか収めたとのことです。

  2. BGM より:

    PPPさん、コメントありがとうございます。お詳しいですね!
    80年代当時はメモリ不足の問題もかなり大きかったでしょうね。
    キロバイト単位でしたし。
    アウトランは当時としては1ループ長かったしアレンジも音色も凝ってたから容量的にキツかったのは想像できます。
    少し前のファンタジーゾーンは当時としてはベースラインが凝っていましたね
    あのスラップの使い方は衝撃的でした。
    あと、3和音環境での凝ったベースラインは
    アレンジ詰めるのがすごく大変で下手にやると楽曲バランス崩壊するので
    開発期間や人員の問題もあって(昔は一人で短期間で音色・効果音・サウンドデバッグまで全部やってたり)
    ベースラインは無難にルートを鳴らしていた。
    というのもありそうです。
    そのへんもう少し考察して加筆するかもです。