プレイステーション3時代【ゲーム音楽史11】

今回は、2006年から2012年頃のゲーム音楽についてお話します。コンシューマー機ならプレステ3・Wii・Xbox360。モバイルならNintendoDS・PSPの世代で、さらにPCのゲーム音楽も特徴的な作品があったりと、かなりのボリュームゾーンだと思います。

2006年から2012年頃の据え置きゲーム機

まずは、据え置き型コンシューマー機についてみていきましょう。この年代からはスペック的にオーディオ再生で困るようなことは無くなっているので内蔵音源は廃止され、波形再生のみとなってきます。

波形再生であればメモリーとCPUの許す限り、なんでも再現可能なのでユーザー側は内蔵音源が廃止されたことを意識することもないでしょう。

XBox360

XBox360は、2005年12月発売。Xboxから4年弱ですが、早くもMicrosoftは次世代機Xbox360を発売します。

ハイビジョン、5.1サラウンドといち早く次世代技術を盛り込み、ストレージにはHDDも使えるようになりました。

セールス的にもかなり成功し、この年代はもはやソニー一強とは言い難い状況になってきます。

プレイステーション3

プレイステーション3は、2006年11月に発売されたプレイステーション2の後継機。

独自の「Cell」というアーキテクチャを採用し、同時代のPC用ハイエンドグラフィックボード同等の3D性能を実現していました。

スペック上はハイビジョン(いわゆるフルHD1920x1080解像度)に対応していますが、実際は負荷やVRAMの問題でHD(1280×720)が主流でした。

2007年ごろまではプレステ2のほうがシェアが高い状態が続き、2008年ごろから徐々に入れ替わります。

シェア的にはXBox360やWiiがかなりの勢いで追い上げたのでソニーにとってはプレステ1、2の時代より相当苦しい状況になっていました。

Wii

Wiiは2006年12月に任天堂から発売。ゲームキューブの後継でゲームキューブとの互換性も維持されていました。スペック的には詳細は非公開ですが、初代Xboxと同等と言われています。

セールス的には任天堂のファミリー向け付加価値マーケティングがはまって大ヒットし、一旦失ったコンシューマー市場のシェアをかなり奪還しています。

特徴的なのが「ヴァーチャルコンソール」で、過去の家庭用ゲームをダウンロードしてプレイできるサービスです。

Wii上で動くエミュレーターなのですが、レトロゲームファンの増加にかなり貢献しています。

プレステ3世代コンシューマー機ゲームの音楽

この時代の据え置き型コンシューマー機ゲームタイトルのうち、とくに音楽が良いと思うものを挙げていきます。

バテンカイトス2(任天堂)
桜庭統さんが音楽を担当。「The valedictory elegy」は白眉の1曲。

ファイナルファンタジーⅫ(スクウェア・エニックス)
ヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん作曲の交響詩「希望」を収録。葉加瀬さんの本気作曲を聴けます。

大神(クローバースタジオ)
大神の音楽は根強い人気があります。和楽器でジーンとくるメロディ。日本人の心の琴線というやつですね。自分は「Reset」が一番好きです。

ペルソナ3・4(アトラス)
目黒将司さんのヴォーカル曲の才能が爆発してますね。でもヴォーカル曲は知らない人が聴いたらゲーム音楽って認識しないと思う。

スーパーマリオギャラクシー1・2(任天堂)
今までのマリオシリーズの音楽とは少しカラーが違いますが、任天堂ぽいサウンドで名曲多数です。自分は「ウィンドガーデン」「フローターランド」「新銀河帝国」あたりが好きです。

アルトネリコ1・2(ガスト)
自分の中ではアルトネリコ=志方あきこさんなんですが、彼女の音楽はインパクトありますよね!

カドゥケウス2(アトラス)
並木学さん参加作品。「運命を断ち切れ!」は並木さんもこういう曲書くんだ!と少し意外感のある作風ですが、一聴の価値のある名曲です。

スカイクロラ・イノセンテイセス(任天堂)
中村和宏さん作曲。ラスボス曲は緊張感のある曲調と民謡ぽいヴァイオリンの組み合わせが絶妙です。

勇者のくせになまいきだor2(アクワイア)
はまたけしさん作曲。1と2は小学校にある楽器を使って演奏されています。名曲「マオウさんは愉快だな」は録音するためにピアニカをめちゃめちゃ練習したらしいです。

ソニックワールドアドベンチャー(セガ)
ゲームハードからは撤退したセガですが、ソニックシリーズは健在です。「Rooftop Run Day」は気分上がる系の曲で好きです。スプラトゥーンに入ってても違和感ないかも。

マリオ&ルイージRPG3!!!(任天堂)
下村陽子さん作品。正直、マリオ感はほとんど無いんですが、下村さんらしいドラマチックな曲が多いです。「In The Final」は素晴らしいJMM。

朧村正(ヴァニラウェア)
崎元仁さんが社長を務めるベイシスケイプのメンバーが音楽を担当。和楽器のロックアレンジが主体。どの曲もいいんですが、自分は工藤吉三さんの「落花繽紛」が一番です。

モンスターハンター3(カプコン)
メインテーマ曲「生命ある者へ」が良いですね。「英雄の証」と並ぶモンハン代表曲です。

ニーアレプリカント・ゲシュタルト(キャビア)
岡部啓一さん作品。特徴的な浮遊感のある女性ヴォーカル(Emi Evansさん)が入った曲が多く、聴けば一発で「あれか!」とわかります。

ゼノブレイド(任天堂)
光田康典さん、下村陽子さんも曲提供していますがACE+の曲が素晴らしいです。

トトリのアトリエ(ガスト)
アトリエシリーズ12作目。自分は中河健さんのフォルクローレ曲「遥かなる頂上」がじわっときます。

ダークソウルズ(フロムソフトウェア)
初代ダークソウルズは桜庭統さんが音楽を担当。いつもの桜庭さんと違った一面を知ることができます。自分は「Gwyn, Lord of Cinder」が好きです。

無双OROCHI2(コーエーテクモ)
忍者龍剣伝(1988年)に収録されていた「鮮烈のリュウ」のアレンジバージョンが猛烈にカッコイイです!

2000年代後半のモバイルゲーム機

次に、この年代の携帯ゲーム機をみていきましょう。

2004年の年末商戦に任天堂のNintendoDS(以下DS)と、ソニーのプレイステーションポータブル(以下PSP)が登場し、以降、携帯ゲーム機市場はこの2機種が主流となりますが、この年代から携帯ゲーム機のシェアが据え置きゲーム機を上回ってきました。

そして、ゲームメーカーも携帯ゲーム機用タイトルの開発に力を入れるようになりDSやPSPのオリジナルタイトルも多数出てきます。

この世代の携帯ゲーム機はスペック的には、初代プレステからプレステ2世代の据え置きコンシューマー機と同等で、今まで大きな制約のあったサウンド機能も制約が大幅に少なくなりました。

携帯ゲーム機に関しては他と微妙に年代がずれますが、DSとPSPが発売されてから3DSとPSvitaが発売されるまでの、2005年から2011年頃のものについて述べます。

NintendoDS

ニンテンドーDSは、ゲームボーイアドバンスの後継として2004年11月に発売。主にライトユーザー中心に支持され、PSPとシェアを二分していました。

2画面搭載という特徴的なデザインで(ゲーム&ウォッチから引き継いでいる?)、ゲームボーイアドバンスとの互換性も一定維持していました。

サウンドは(多分)16chPCM音源と32730Hz程度の2chステレオ波形再生。サウンド再生機能は初代プレステより少し劣る程度と思いますが、前世代のゲームボーイアドバンスからすると各段の進化です。

波形再生は結構メモリとCPUを使うので、DSのゲーム音楽は内蔵音源(MIDI再生方式)のみで作られているものも多く、聴いた感じスーパーファミコン・メガドライブ世代のゲーム音楽に近いものがあって、そのへんが逆に個性になってると思います。

プレイステーション・ポータブル(PSP)

2004年12月に満を持してソニーが投入した携帯ゲーム機。当時のモバイル機としては相当に高性能でヘビーユーザー層を中心に支持されました。

DSに比べてCPUもメモリーも勝っていた上、光磁気ディスクメディアも使えました。
大体プレステ2と同等の性能で、音楽再生能力もそれくらいです。

PSPの登場により、携帯機向けゲーム音楽の環境が一気に進化、据え置きゲーム機やPCともそれほど遜色なくなってきます。

PSP・DS世代モバイルゲーム機の音楽お薦めタイトル

この時代のコンシューマー機ゲームタイトルのうち、とくに音楽が良いと思うものをあげて行きます。

DS版悪魔城ドラキュラ3部作(コナミ)
蒼月の十字架、ギャラリーオブラビリンス、奪われた刻印の3作。山根ミチルさん作品が中心。ギャラリーオブラビリンスでは古代祐三さんも曲提供。ほぼ全てMIDIで作られていて全体に1980年代・1990年代ぽいサウンドですが、楽曲のクオリティは極めて高い。

悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印「紺碧の彷徨」【ギター演奏・コード進行19】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第19弾は『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』より「紺碧の彷徨」です。スパニッシュな香りのする美麗な曲を、フラメンコのブレリアのリズムにのせて演奏。
悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架「終曲~透深月夜~」【ギター演奏・コード進行32】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第32弾は、悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架よりエンディング曲「終曲~透深月夜~」。フラメンコのブレリアのリズムにのせた演奏です。
悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス「夜は流れる」【ギター演奏・コード進行48】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第48弾は、悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンスより「夜は流れる」。優しく美しいエンディング曲です。
悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス「運命の肖像画」【ギター演奏・コード進行49】
ゲーム音楽ソロギター演奏動画・コード進行解説の第49弾は、悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンスより「運命の肖像画」。前回の「夜は流れる」と対になる曲です。

世界樹の迷宮1・2・3(アトラス)
古代祐三さんの近年の代表作。これもFM音源時代からスーファミ時代を彷彿とさせるサウンド。一般的な評価も高く、古代祐三健在を強烈にアピールしています。

ドラゴンクエストモンスターズ Joker(スクウェア・エニックス)
ドラクエモンスターズのシリーズ作品で、収集系ゲームです。音楽はすぎやまこういちさん。ピンポイントでハマって結構プレイしたので、音楽も良くおぼえています。

モンスターハンターポータブル1・2・3(カプコン)
モンハンはPSP版をかなりやりました。ただ、自分はかなり周回遅れでやっていたし、下手くそだったのでソロプレイオンリーで、最後のほうの硬いボスが倒せずに挫折してます。3作ともそんな感じです。まあ「そのうち狩ってやるわー」と思って放置して数年、という感じですが(笑)モンハンシリーズは全体に落ち着いた感じの名曲が多いと思います。自分はモンハンP2の「ポッケ村のテーマ」が一番好きです。

レイトン教授と不思議な町(レベルファイブ)
レイトン教授シリーズの音楽はヨーロッパぽくて洒落てます。これのメインテーマもバイオリンとアコーディオンでシャンソン+ジプシー音楽という感じでタマらんです。

セブンスドラゴン(イメージエポック)
これも古代祐三さん作品です。「密林航行」が印象的。

ダライアスバースト(タイトー)
土屋昇平さん、渡部恭久さんらが中心に作曲。和音階・東洋系楽器・人声コーラスが多用されています。

ポケットモンスター ブラック・ホワイト(任天堂)
個人的にはポケモンシリーズの音楽ではこの作品と、オメガルビー/アルファサファイアの2作品がベストだと思っています。ブラック・ホワイトではエンディング「それぞれの未来へ」が好きです。

クラシックダンジョン(システムプリズマ)
大山曜さんが半分くらいの曲を書いています。大山さん作の「風をきって」は名曲と思いますが、一時こういう曲調が量産されましたよね。

ノーラと刻の工房(アトラス)
なるけみちこさん作品。熱狂的ファンも多いなるけみちこさんですが、自分的にはワイルドアームスシリーズとかより、コレが好きなんですよね。とくに「刻の工房」。和み系だけど切ない感じもあって、なんともいえない雰囲気の曲です。

2006年から2012年のPCゲーム音楽

次は2006年から2012年のPCゲームについてです。この年代のPCのゲーム音楽はDTMの普及でアマチュアでも高度な音楽制作が可能になったのが大きいと思いますが、特にフリー・同人系が勢いあってクオリティも高いです。

Hellsinker.
ひらにょん氏が作った同人ゲーム。音楽はテクノ・トランス・EDM系ですが驚愕の完成度です。「The Way of All Flesh」が、めちゃカッコイイです。

東方風神録・東方星蓮船
ZUNさんの展開する東方Projectも元気です。自分は風神録の「神々が恋した幻想郷」、星蓮船の「春の湊に」が好きです。相変わらずの独自の世界です。

素晴らしき日々
ピンポイントで「夜の向日葵」を推したいです。2000年代に入ってから久石さんぽいピアノ曲が量産される中で、この曲はちょっと傾向が違って光るものがあります。

SORA
「Icarus」は小室哲也さんが作りそうなサウンド。小室さんはアイドルのプロデュースで売れたので誤解もされやすいと思いますが、日本のテクノ・トランス音楽作家では間違いなく第一人者と思います。

魔法使いの夜
深沢秀行さんが半分以上の曲を担当、メインテーマだけでも聴けば本作品の音楽の素晴らしさがわかると思います。

2006年から2012年のアーケードゲームの音楽

最後に2006年から2012年頃のアーケードゲームについてみてみます。アーケードゲームもシューティングゲーム中心に個性的な音楽が結構ありますね。

カラス(マイルストーン)
ストーリーも音楽も問題作。自分はこういうのもイケるほうですが、生理的にダメな人もいるんだろうなー、と感じます。ハードコアテクノ・トランス。

怒首領蜂 大復活(ケイブ)
「どどんぱち」と読みます。極彩色弾幕系。5人くらいの作曲者が参加していますがその中で自分が好きなのは、並木学さんと工藤吉三さん。全体にテクノ・ハウス・トランス系で、極彩色弾幕も相まってプレイ中変な脳波が出てきそうで、これってデジタルドラッグなんでは?と思ってしまいます。

まもるクンは呪われてしまった!(グレフ・ガルチ)
ニコ動で流行ったことで認知度が跳ね上がった作品。「Karakuri Spirits.」に代表されるような、ゲーム音楽の「オモチャっぽい」サブカル的な面を凝縮したような音楽です。趣向的にFFとかドラクエとは対極にありますが、また違った意味で魅力的です。

BLAZBLUEシリーズ(アークシステムワークス)
シリーズ全作品を石渡太輔さんが音楽担当。ギルティギアシリーズではメタル系一辺倒だったのが音楽の幅が広がった感じです。石渡さん持ち前のメロディセンスは健在で、印象的なメロを多数残しています。自分は「Bang Shishigami Theme」「Glummy Fang」「Busin」「SIX-HEROES」あたりが好き。昔やってたエレキ弾きたくなります。

――次回はいよいよこの連載最終回となりますが、2013年から現在のゲーム音楽について書きます。

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